17日、スイスのアイガーで邦人パーティーが遭難、60代の男性が亡くなられた。
故人の冥福を祈る。
さて、この事故について私が最初に知ったのは海外メディア(Forbesのウェブサイト)だったが、続く日本国内マスコミの報道の姿勢には首をかしげざるを得ない。
ここで発信別に整理する。
【共同通信】
(筆者途中省略)・・一行は子供を含む6人でスイスを訪れ、うち大人3人がアイガーの南側で山歩きをしていて事故に遭った。同大使館は家族の要望として死傷者の身元公表を拒んでいる。
アイガーはアルプスを代表する山の一つで、ユングフラウ、メンヒと連なる。特に北壁は険しく、アルプスで最も困難なルートの一つとされる。日本からはアイガーなどの山歩きを売り物にした観光ツアーもあり、人気がある。
【TBSニュース】
外務省に入った連絡によりますと、スイス中部にある標高3970メートルのアイガーで、登山りをしていた日本人男性3人が深さ40メートルの岩の割れ目に落ちたということです。この事故で福岡県久留米市の嘱託職員の62歳の男性1人が死亡、久留米市職員の2人がけがをしました。日本大使館は、家族の希望で氏名など詳細については公表できないとしています。アイガーはアルプスを代表する山の1つで、日本からは山歩きを売り物にしたツア-があり、人気だということです。(19日14:03)
【読売新聞】
スイス・アルプスの氷河で久留米市嘱託職員が滑落死
(筆者途中省略)・・・・死傷した3人は、子どもを含む6人のグループでスイスを訪れていた。大使館は、家族の希望で、氏名などを公表していない。◇関係者によると、転落死した男性は福岡県久留米市職員OBで嘱託職員、負傷した2人は同市職員。家族らと旅行中で、3人は登山、家族らは観光と、分かれて行動していたという。
【徳島新聞】
3人は久留米市職員 アイガーの遭難
スイス中南部アルプスのアイガーで日本人男性3人が登山中に転落し1人が死亡した事故で、福岡県久留米市は19日、3人がいずれも同市職員であることを明らかにした。
時系列に並べてみたが、新聞地方紙はほとんど共同通信の記事を配信している。
注目されたいのは、次の表現。
【共同通信】 同大使館は家族の要望として死傷者の身元公表を拒んでいる。
【TBSニュース】日本大使館は、家族の希望で氏名など詳細については公表できないとしています。
【読売新聞】 大使館は、家族の希望で、氏名などを公表していない。
共同通信は「拒んでいる」と強い表現を用いている。
拒んでいる、ということは、記者が公表を「要求した」ことは想像に難くない。
ここに、共同通信の記者に尋ねたい。
そこまでして遭難者の氏名をさらす必要があるのか?
それは何のため、誰のためなのか?
さすがはイラクの香田証生氏殺害事件の際に先走って遺体発見と報じた共同通信といえよう。
遭難事故において遭難者の氏名を遺族の希望により公表しない、というのはこれが初めてではない。
数年前、マッターホルン登山中の邦人が滑落死した際も、氏名の報道は遺族の希望で控えられた。(この時の日本の通信社は「ガイドレス登山は無謀」というピントはずれな報道をしたが、これは次の項で論ずる。)
そして続く徳島新聞。
この情報が徳島新聞独自のソースかは不明であるが、ここから読み取れるのは、遭難者の勤務先である福岡県久留米市が、遭難者の身元を明らかにした、ということである。
想像されるのは、次の状況。
1.山岳遭難という騒動を起こした「社会的な責任」から市が自ら身元発表に踏み切った。
2.遭難者の身元を調べるマスコミによる問い合わせが殺到(かどうかは知らないが)、結果として久留米市に圧力をかけた形となった。
ここで筆者がマスゴミに対して主張したいのは、
あなたたちはワイドショーのレポーター程度の報道しかできないのか?
遭難事故で報道されるべき本質的な問題は、他にあるのではないですか?ということである。
登山に真摯に向かう者であれば氏名などは二の次、本質的な問題である「遭難の原因」が知りたいはずである。
今回のアイガー遭難報道から推察されるのは、真に明らかにされるべき問題がさしおかれ、氏名の判明という点に重きが置かれているという点である。
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