« 14座を登った人は。 | トップページ | 性差別 »

消息

先月ネパールのカングルー峰で発生した大量遭難。
ネパールのメディアでネパール人行方不明者の名前を調べると、思わず目がとまりました。
マンバハドール・グルン。

チョモランマ登山、2ヶ月生活を共にするシェルパの中で、出会ったときに一番嫌いだったのが、マンバハドール・グルン。
日本人隊員のマネジメントにぶつぶつ日本語で文句たれる態度が生意気にみえたのだ。
生意気な態度をとるだけあって、長谷川恒男のダウラギリ隊に同行するなど、経歴も立派だった。
その一方。
カトマンズにあるコスモトレックに行くと、シェルパたちは庭でわいわいトランプ賭博に興じている。
少し離れて、マンバハドールは何か本を読んでいる。
シェルパ族ではなくグルン族のマンバハドール、部族の違いもあって離れているのかな・・・と思い、そっと背後から近づいてみると、一人、英和辞典で英語・日本語を勉強している。そんな奴である。

私は登頂できず、最終キャンプからABCに一気に下山した。
シェルパたちにフォローされ、身も心もボロボロなままに。
ノース・コルの雪壁を下降して氷河に降り立った時点で、シェルパたちには早くABCに戻りたいという態度見え見えだった。私は怒鳴った。
「もういい!おまえら先に行け!俺は一人で行く!」
だが背後で、あの生意気な口をたたいていたマンバハドールが静かに言った。
「カナサーブ(私の呼び名)、私はあなたの後からついていきます。」
その静かな態度に、謝罪の言葉を口にしたのを、覚えている。
厳しい状況の中にも、懐の広さを持たなければならない、と彼の態度から教わった。
今の自分を省みるに、ぜんぜんその反省は活かされていないが。

コスモトレックの大津さんに、メールで問い合わせてみる。
もちろんマンバハドールは私のことを覚えていないだろうが、私はとても気になる。
やがて送られてきた丁寧な大津さんの返信メール。
「マンちゃんは無事ですよ。同姓同名の人です」と返ってきた。
ほっ。

あらためて、今回亡くなられた仏・ネ両国の関係者の冥福を祈りたい。

|

« 14座を登った人は。 | トップページ | 性差別 »

expedition」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 消息:

« 14座を登った人は。 | トップページ | 性差別 »