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山岳ガイドは道案内か?

「山岳ガイドさん、六十里街道とか、歴史についてどれだけ語れるんだい?」
と、そのお客様は言った。

今回の博物園の行事、「地元の名人と行く・石見堂岳のブナ林」。
地元の現役マタギ・今野さんの案内で、夏道の無い石見堂岳山麓のブナ林を散策しようとするもの。
東北山岳ガイド協会から、昨年甑岳ガイドを共にした尾崎さんと私が同行することになった。

山形県自然博物園はリピーターに根強い人気があり、今回の参加者20名も、常連さんが多い。
それだけ、博物園の運営方針に一言言いたくてウズウズしている方が多い。
来年からは、行政の財政ひっ迫の影響を受け、一泊ものの催しが無くなるという。
常連の参加者の方々はそれがお気に召さないようだった。
夕食、すなわち酒の入った二次会でも、それが熱い議論となる。
博物園の長であり企画担当の横山さんは火だるま・集中砲火を浴びせられる状態。
また山岳ガイドという存在は、地元の里山歩きをしている方々には珍しい存在だったようだ。
いわく、
 山岳ガイドって、専業ですか?
 ガイドだけで生活ってできるんですか?
 遭難が起こったら、救助隊に出たりするんですか?
 一日いくらで、どこでも案内できるんですか?
 ガイドといったって、日本の山は道標がしっかりしているから、自分達でも行けるもんね。
などなど。

前述のような、博物園の行事形態の変化に反対の方からは、私達は「よそ者」に映ったようだ。
ガイド協会名称の「東北」という響きから、県外から来ている人間だと思われていたらしい。
私達がこの行事に呼ばれたのは、行程中の安全面をフォローする役割を果たすためである。
それにも懐疑的な方が多いようだ。
要は、「ガイド=道案内・観光案内」「安全管理?山菜採りでも入ってる、歩いて登る山だよ?」
お客様の中で、元の職場の威光で話題を進める、私にとっては最も苦手なタイプのお客様がいらっしゃったが、その方の言葉が冒頭の
「どれだけ歴史とか語れるんだい?」
というお言葉。
その後は、御自身が県の観光ボランティアガイドを務めていることなどに話題が移る。
皆さんのお話を伺い、改めて一般登山者の皆様の危機意識の薄さに、危機感というよりもガイドの重責を感じる。
今回のお客様の博物園行事形態へのご不満、ガイド協会の立場である私が立ち入るべきではないと考え、こんな感じで酒を飲んでいた。

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『強なれば之を避けよ』by孫子(最近、中国古典に凝ってます)

とはいえ、もちろん夕食&二次会は楽しく過ごさせてもらった。
参加者の皆さんと話をし、いかに自分達ガイド協会、山岳ガイドの存在のPRが足りないか痛感させられた。
また、山岳ガイドの存在に対するイメージ、一般の方と我々自身の考え方のズレも痛感した。

ただの道案内だの、ろくに地元の歴史も知らないだの、いくら陰口を叩かれようが私にはかまわない。
私のガイドの師匠達など、登山が保守的な時代に生きた先達は、もっと辛辣な言葉を受けているに違いない。
山形は北海道あたりにも劣らない、四季の変化に富んだ自然、古来から自然の恩恵を受けた人間の文化が存在するフィールドであり、アウトドア産業が発展していく可能性を秘めた場所だと考えている。
次の世代の若い衆が、アウトドアの仕事に関わりやすい環境を整えること。
それが今の自分達の成すべきことではないかと最近思うようになった。
山岳ガイドが単なる道案内と考えてる人、それも結構。
私達が地道に実績を重ねて、いつかはイメージを変えることが出来る日を夢見ている。

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