あめりか日記その6 REIサンフランシスコ店訪問
サンフランシスコは雨だった。
下僕&ポーターとして、スーツケースを上げ下ろしする日々。
この出張の日程表を渡された時からたくらんでいたこと、それがアメリカ最大のアウトドア用品店REIのサンフランシスコ店訪問だった。
一日だけのサンフランシスコ滞在で、午後に3時間だけ自由時間がある。
本来ならば私は視察団員のお世話をする役割を担う。
案の定、総務の偉い人から、「自由時間は買い物に行く視察団員が迷子にならないよう、皆で団体行動しましょう」と指示がでる。
ああ・・・ここまで来てREI訪問も夢と消えるのか・・・
年下社員のK沼君から「大滝さん、自由時間だからだいじょぶですよっ」と助け舟もあり、視察団事務局のTさんに単独行動を打診。
あっさり許可される。急いで一人タクシーを捕まえ、REIサンフランシスコ店に向かう。
地元ガイドさんの話のとおり、REIサンフランシスコ店は中心街から少し離れた問屋街に位置している。
タクシーの運ちゃんも捜すのに苦労していた。
お店のドアノブは、なんとおしゃれなグリベルのウッドシャフトピッケル。
入店前からワクワクしてくる。
外見は倉庫のようなお店だが、内部は吹き抜けの二階構造。
なるほど、品揃えに富んだ大型アウトドアショップである。
私が勘違いしていたのだが、REIはアウトドアショップであり登山用品専門店ではない。
多くのスペースを割いて自転車が置いてあり、充実した書籍コーナーの一部にはトライアスロン、ウルトラマラソン、アドベンチャーレースに関する書籍も置いてある。
印象に残った店の特徴を箇条書きにすると、
各コーナーにはREIオリジナルのチラシが置いてある。内容はギアリスト・スペック一覧表。
テントコーナーは、日本の不動産屋の物件表示のように各製品についての使用表が掲示されている。
クライミングギアは少ない。ギアも鍵の付いたショーケースに収められ手にとって見ることはできない。
プロテクションはナッツ、トライカムなどナチュプロの展示が多く、さすがアメリカと思わされる。
ハーネス、クライミングシューズは展示品が多く、試着可。
アックス類はBDの縦走用ピッケルが数種置いてあるだけ。
店の2階はアパレル類。
クッカーはエバニューのチタンクッカーが店頭に並び、日本人としての愛国心をくすぐられる。
なんといっても充実した書籍コーナーは宝の山。
ふだん、アマゾンコムでしか閲覧できない各種トポをくいいるように眺める。
訪問記念にREIオリジナルボトルとトートバッグを購入。
なおREIサンフランシスコ支店を訪れる方は交通手段に注意すべし。
店から帰る際、店員にタクシーを呼んでもらうべく電話してもらったがタクシー会社がつかまらず、通りで自分でタクシー拾ってちょうだいね、ときりかえされる。店の前は交通量は少ないので、少し歩いた大通りで必死になってタクシーを拾ってホテルに帰る。
テントコーナー 取り扱いテントのスペックがパネル一枚一枚に記載されている。
さて、会社視察団の下っ端小間使いとは世を忍ぶ仮の姿、アメリカのアウトドア用品店視察が私の秘めたる目的だったわけだが。
日本に進出しながら、短期間で撤収したREI。
私の住む山形県は、登山用品店に関しては特異な地域だ。
直線距離60km圏内に登山用品専門店が3軒存在するところである。
これらの店が共倒れにならず営業が成立しているのは、東京のような都会の店と違い、モノの品揃えよりも店主のパーソナリティに依るところが大きい。
こんな山形で生まれ育った私にとって、REIのような大型アウトドア店進出の報を聞いたとき、都会にあるとはいえ日本の客層でその大きさに対してペイするのか、やっていけるのか、どちらかといえば懐疑的であった。
登山用品店はモノではなく情報の交流の場、スーパーのような大型小売店は成り立たないという思いが強いからである。
だからこそ、REIのような大型店舗が繁盛しているアメリカ、その現場を見てみたかったのだ。
もちろん、いっぺん訪問したくらいで全てがわかるとは私も思わないが、REIサンフランシスコ店、スキー、自転車、テント、ザック、靴、アパレル、 全 て の コ ー ナ ー が平均的に賑わっているというのが強く印象に残った。
やはり大型店舗の営業が可能なだけ客層が厚い、という結論になるのだろうか。
登山のみならず各種野外活動について、アメリカのフィールドは私にとって強い憧れの一つだ。
今後もいろいろ調べてみたい。
REI訪問を終え、急いでホテルに戻る。
単独行動をとらせてもらったので、視察団事務局の総務のTさんに帰着報告にいくと、
「ちゃんと目的の店、いけました?」
と笑顔で訊かれる。
ワガママな社長・重役が多くてカリカリきているはずのTさん。
その笑顔に、自分の山登り活動は他の人の支えがあって成り立っているんだなあ、と改めて思う。
| 固定リンク
「日常」カテゴリの記事
- お仕事日記2021年2月 & ウルドゥー語の夜 第13夜(2021.02.23)
- PCR検査体験記 & コロナ隔離生活日記 4日目 & ウルドゥー語の夜 第10夜(2021.01.26)
- PCR検査体験記 & コロナ隔離生活日記 3日目(2021.01.25)
- コロナ隔離日記 2日目(2021.01.24)
- コロナ隔離日記 1日目(2021.01.23)
コメント
楽しく読ませていただきました。
ところでREIの日本進出ですが、お店があった町田は私の実家がある場所でもあります。町田は東京都内と言えども都会と言うにはちょっと憚られる場所でして、REIの店舗も郊外のベッドタウンによくある、国道沿いの大型店といった趣でした。
品揃えはやはり登山用品だけでなく、アウトドア用品全般という感じでした。日本の他の店では見る事の出来ない品も色々置いてあって、見ているだけで楽しかったのを覚えています。また室内の人工壁がひとつの目玉になっていましたが、当時は実際に登っているのはほとんどが外国の方たちでした。近くに座間や厚木の米軍基地があるので、その関係の方たちだったのではないかと勝手に推測しております。
ご存じかとは思いますが、REIの店舗はその後モンベルの直営店になり、現在まで営業が続いているようです。REI早期撤退の原因には、ご指摘の通り日本の市場規模の問題もあるのかも知れませんが、REIの幹部が日本の顧客の嗜好を的確に把握していなかった(品揃えや店舗運営に失敗した)せいもあるのではないかと思います。
私も以前、一念発起してサンフランシスコ~ヨセミテに行きまして、やはり登山関連書籍の日本とはひと味違う充実ぶりに感動した覚えがあります。引き続き、現地からの記事を楽しみに読ませていただきたいと思います。長文失礼致しました。
投稿: S | 2006.03.15 10:00
コメントありがとうございます。
私の憶測で論を進めてましたが、なるほど、日本の顧客志向の読み誤りもあったということでしょうか。とすれば、それほど日米のアウトドア・ユーザーには差異があるのかなあ~と新たな興味が沸いてくるところです。今はモンベル直営で店舗のみ健在といったところでしょうか。
コールマンの店でみた大型グリルなんかを見て、日本の住宅事情考えりゃ、まず売れないよなあ・・・と、無責任なウインドーショッピングとやらも楽しんできました。
投稿: 聖母峰 | 2006.03.15 12:27
日米のアウトドア・ユーザーの差異。興味深いですね。
容易に思いつくところでは、やはりフィールドとなる国土の地理的条件の違いは大きいのかなと思います。日本の急峻な山岳地形が育んだ沢登りとか、きっと好例なのではないかと思います。
あとやはり、アメリカは何事もスケールがでかいのは間違いない気がします。オートキャンプするにしてもキャンピングカーとかトレーラーハウスとか。。カウボーイの国の文化なのでしょうかね。。
登山用品で言えば、プラティパスのポリタンにつけるハイドレーションチューブとか、合理主義・個人主義のアメリカらしい発想だなと思います。日本の伝統的な組織登山(?)で登山をやってきた人からはなかなか出てこないアイデアではなかろうかと思います。
投稿: S | 2006.03.15 17:44