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登れなかった尾根

山の情報を仕入れるため、マメに書店を覗く。
時折、地方出版社ならではのガイド本が出ているのだ。
今回見つけたのは岩手日報社の岩手山ガイド本。
先の火山活動で現地状況が不安定なため、最新のガイド本が欲しいところ。
その本のとなり。
山積みになっている、岳人編集部発行の『日本の登山家が愛したルート50』を手にした。

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偉い先生方のクライミングルート集。
どこぞのオッサンのお勧めだろうが、クライミングにさほど興味はない。
ただ、私が注目する山岳ガイド・黒田誠さんの思想に触れたくて頁をめくる。
黒田さんお勧めルートは・・・

 戸 隠 ・ 本 院 岳 ダ イ レ ク ト 尾 根

渋い・・・
渋すぎる・・・
霧雨の日本庭園で、茶をたしなむようなものだ。
黒田さんは、ブログで御自身の文章を「がんこな」と表現しているが、
これが本来のルート紹介ではないだろうか。
ビレイピンの本数まで書いてある「ガイド本」を手にしたクライマーに、
クライミングは創造的うんぬんなどと語られると、なんだかな、と思う。
ビッグウォールクライマーを自認する黒田さん、甲斐駒あたりのロングルートを紹介するかと予想していたが、ダイレクト尾根とは・・・

彼女もいない19歳の春。
私達は春山合宿として、いけどもいけどもキノコ雪の本院岳ダイレクト尾根を進んでいた。
当時、エベレスト無酸素に冬のナンガとまだ全盛期だった山学同志会がやはり春山合宿で登っていた戸隠。
名だたる会と同じ山で合宿することに、まだまだ未熟な私は畏怖と期待の念が交差していた。

初めて見る険悪な山容に、こんな山が、ルートがあるのか、と新鮮な気持ちだった。
集塊岩の険悪な壁で行き詰まる。
1年後輩のA君(現・専業プロ山岳ガイド)がやる気をみなぎらせて壁にとりつこうとするが、
私の山の師匠であるY先輩の「おまえにゃ登れねえ!」の一喝が飛ぶ。
私達の春山合宿は、その壁を越えられず、そこが最高到達点だった。

自身を高め、限界に挑む登山から離れた今。
再び戸隠に向かう気力も体力も能力も全くない。
この本を手にするのにふさわしい人間は、私のような山の落ちこぼれではなく、今もなお少数ながら気を吐いている若きクライマーさんなのだろう。

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