ガイド三番勝負・月山の巻 ~山岳ガイドは、芭蕉の偶像を信じない。~
2日めは、月山庄内側から湯殿山側に下山するルート。
あの松尾芭蕉が踏破した古典ルートだ。
天候は幸いにも雨は止み、快適な曇り空。
花も鳥海に比較して多く、お客様も大満足。
頂上を越え、広島の一名のお客様が膝を痛め、真鍋氏が付き添いで最短下山路の志津側に下ろすことになった。
私が福岡・広島総勢39名を引率することになる。
アクシデントは志津ルートと湯殿山ルートの分岐で起こった。
分岐を曲がり、湯殿山側に入って小休止をいれるが、後の広島班がいつまでたってもやって来ない。
考えられる理由は一つ。
添乗員氏を先頭とする広島班が、志津ルートに直進してしまったに違いない。
福岡のお客様を待機させ、私は走って戻る。
幸い-本当に幸いなのだが-道を誤ったことに気が付き戻ってきた広島班と、分岐近くで合流できた。
添乗員氏も「初歩的なミスです」と平謝りだったが、パーティー全体を引率する責は私にある。
添乗員氏と広島班のお客様に、私も平謝りする他無かった。
「まさか、こんなところで」
という分岐で、現実に起こったミス。
私にとって反省しなければならない、課題となった。
今日のハイライトは、渓流状で苔むして滑りやすく急な下りの「水月光」。
お客様みんな、昨日の鳥海の疲労に加えて滑りやすく緊張するため、かなり足にきている状態で下山となった。
ところで、毎回このルートを登って思うのだが。
バスが8合目まで上がる現代、江戸時代とは比べモノにならない優れた装備でかためた登山者でさえ、結構足に来るルートを、芭蕉は雪の多い6月に、往復さえしているのだ。
松尾芭蕉といえば、
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コメント
インドアスポーツしかまともにやったことのない私。
学生時代はいろいろ競技スポーツをかじりましたが、
仕事についてからは体力筋力気力落ちる一方です。
アウトドアは30代をすぎてからはじめました。
脅威に思うのはぱっと見よれよれのおっさんの健脚さ!
体力とはどこに潜むのだろうと不思議で
人間の力のすばらしさを改めて知った次第です。
特に歩く力とは初めてテント泊のため登山をして歩いたときに「人間って歩けるんだ~!」とあほなことを思いました。
侘びさびの心も歩くと悟りが得られるのでしょうか?
登山を人生に一部置き換え、普段がんばろうとする気持ちを励ますように思い起こします。
歴史と文学の新たな関連を改めて思い知らされます。
ドライブでよくいく山。道の元は人間だよな。と思うと
昔の人の足は現代人とは比べ物にならないほど強かったのではなかろうか。といつも思います。
いくら退行してしまうとはいえ、私もそう考えるともっとがんばらなくては!と思いつつデスクでPCに向かいうなる日々。。
投稿: POP | 2006.07.29 17:46
8/4から羽黒山、月山、湯殿山コースに行きます。いま軽アイゼンと山靴(軽or重)をどうしようかと思案中。両足が悪いので先達さんの「ご案内しましょう」は遠慮いたしました。頂上で1泊。
芭蕉さんはきっとマッチョタイプです。千利休さんも結構がっちり体型でした。残された胴鎧は大きい。
投稿: かもめ | 2006.07.29 21:39
re:pop様
月山の庄内側・八合目駐車場までは羽黒山山麓の集落から車で1時間ほどかかるのですが、途中の車窓から「1合目」とか「3合目」などの地名看板を目にする度、昔の人の健脚ぶりを認識させられます。
若かりし頃、冬富士合宿で富士吉田駅から歩いて山頂往復とかやったけど、富士山下部の廃れた山小屋に到着するたび、交通機関も発達してない昔の人を山頂に駆り立てた情熱ってなんだろう、と考えさせられますね
投稿: 聖母峰 | 2006.07.31 13:04
re:かもめ様
7月下旬で庄内側(八合目)~頂上~湯殿山口の間には、ごく一部に雪渓は残っていましたが、雪に慣れてない九州からのお客様引率して、軽アイゼンも使わず歩いた程度です。
金姥(志津ルートと湯殿山ルートの分岐)から施薬小屋・湯殿山までは登山者が少なく、静かな山歩きが楽しめると思います。
山靴に関しては人によりけりで安易なコメントはできませんが、山頂直下および湯殿山口の水月光と呼ばれる場所に急坂がありますので、しっかりした靴をお勧め致します。
羽黒山は杉並木の階段を上られるのでしょうか。
観光ガイド本ではうっそうとした杉並木の石段ばかり強調されてますが、途中にある「二の坂茶屋」で、力餅食べながら庄内平野をのんびり眺めるのもお勧めです。
月山頂上で1泊とはうらやましい(日帰りで登ることが多いので)・・・登山中の天候が良好であることをお祈り致しております。
投稿: 聖母峰 | 2006.07.31 13:16