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フォートナム氏とメイソン氏

久々に自宅で過ごす日曜。
子供達の「遊んで」攻撃をかいくぐり、岩波文庫のキングドン・ウォード著・金子民雄訳「ツァンポー峡谷の謎」を読む。岩波文庫にしては500頁を越す分厚い本。

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内容はプラントハンター(植物採集人)キングドン・ウォードによる1920年代のチベット・インド・ビルマ辺境、ナムチャバルワ周辺を含む東ヒマラヤ一帯の探検記録である。
当時はチベット高原の大河ヤルツァンポが、ヒマラヤ奥地から注ぐ3本の大河、サルウィン、メコン、長江のいずれに繋がっているかが地理上の空白であり、探検の課題であった。

 私が今まで読んできたチベット探検記といえば、職業軍人または職業探検家、宗教家、登山家によるものであり、プラントハンターによる記録はこれが初めてである。
 なるほど、植物の記録箇所になると、キングドンウォードの筆も生き生きとしているのが感じられる。

 さて、この本。
 訳者はアジア探検史研究の第一人者、金子民雄氏によるものだが、訳が硬い・・・
 硬いだけでなく、すごく気になるところがある。
 冒頭、旅の出発準備の場面。 
 
 缶詰の魚や、軍隊用食料、ベーコンといった物はごく少量だけ準備した。こういった備品はフォートナム氏とメイソン氏が提供して下さり、各々目方六千ポンドの六個のヴェネスタ荷物に詰められた。

 あにょ~、かねこ大先生・・・
 「フォートナム氏とメイソン氏」って、もしや英国王室御用達の総合高級食品ブランドFORTNUM & MASONのことではないじゃろか・・・

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 原典に当たる根性は私は持ち合わせておりませんが、前後の文脈から察するに、ここで個人名が出てくるのは唐突なんだよね。
 また、キングドン・ウォードが巨大総合商社ともいえるフォートナムアンドメイソンの支援を受けていたとなると、ウォードによる探検への見方もまた当然変わってくるものである。
 なんて、まじめに考えるよりも、金子大先生も紅茶の銘柄にはあんまり詳しくないんだろうなあ・・・と微笑ましく読むことにする。

 しかし、探検記・登山の翻訳ってなかなか恵まれないよなあ。
 以前観た某衛星放送歴史番組ではシシャパンマ峰がシーシーバンマ峰になってるし。
 ある登山家の伝記では、ユマールがジュマーになってるし(訳者もJumarを単純に読んだんだろうな)。
 ちょっと文献や識者に確認すればいい問題なのですが、そうされないところに、日本における探検・登山という文化が軽んじられているか表れてるような気がします。

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コメント

聖母峰先生の仰る通りのようです。キングドンウォードらは、当店で食料の調達をしている記述がありました。

They had bought provisions at Fortnum and Mason

典拠:
http://www.geocities.com/tooleywatkins/fkwbiog2.html

ここでは購入となっているので、援助も受けた事はあるかもしれませんが、キングドンウォードご用達と言う感じでしょうか。確かに上のように出て来ると見落とす可能性はありますね。

どの専門分野も同じですが、翻訳はその分野に通じていないと、どうしても誤りが絶えないようです。

投稿: pfaelzerwein | 2006.08.22 04:19

pfaelzerwein様
 貴重なアドバイスありがとうございます。
 <<ここでは購入となっているので
当時の大英帝国の威勢がしのばれますね。
 英国の探検家が世界中で活躍した理由のひとつが垣間見えるようです。
 <<どうしても誤りが絶えないようです。
語学下手なわりに関心があり、翻訳業界の冊子を目にして、その労力の大変さは重々承知しております。ただ、どうも登山・探検関連になると、たまにどうにも我慢ならない誤訳が目立つような気がします(笑) 

投稿: 聖母峰 | 2006.08.23 05:43

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