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たかが知れてる登山者の環境問題意識

日本野外教育学会の学会誌『野外教育研究』第10巻第2号が届く。
今号は特に注目されるべき原著論文がある。
長野県犀峡高の太田和利氏による「登山者の山岳環境配慮行動の規定因について -南アルプス・仙丈小屋における登山者意識調査から-」なる論文である。
この論文の内容は、登山者の「環境保全意識はあるものの行動に結びつかない」実態をアンケート調査と統計解析により明らかにしたものである。

 特に注目されるのは、登山者の環境に配慮する行動に影響を及ぼすのは「責任感」「負担感」であり「危機感」は小さいという点であろう。

以下引用開始
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 実際、山岳環境に対して危機感を持つことは難しい。(中略)野生動物による高山植物の食害も指摘されなければわからない。また、登山道の荒廃についても、経年変化が示されなければ認識されにくい。それだけに、具体的に危機感を感じにくいのである。
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以上引用おわり

筆者・太田和利氏は「登山者の環境意識は高いものの持っている知識はあいまいであり、必ずしも山岳環境保全に関する知識・情報として妥当なものではない場合があると判断できた」と結論づけ、ひいては環境教育の果たす役割は大きいと締めくくっている。

 何より本論文の意義は、従来は山岳会あたりの酒飲み爺がテメエの体験という乏しい根拠を元に語っている場合が多い登山者の環境問題(意識)について、定量的なデータを解析、査読など然るべき手続きを経た学術論文としてとりまとめている点にある。
 太田氏は南アルプス(正確には北沢峠と仙丈小屋)でアンケート調査を実施しているが、これが北アルプスと飯豊連峰、さらにはトイレ問題意識の高い北海道の山岳地で展開されれば、また興味深い結果になると思われる。 さらに太田氏の論文で目を引くのは、文末に記載される「引用文献リスト」に丁寧な解説文が加えられている点である。
 その解説文によれば、「山で平地並みのサービスは必要無い」と回答したうちの63パーセントが「山小屋の水洗トイレはよい」と回答していたそうな。
 人を笑う前に、自分の知識不足を今一度省みなければと思わされる論文である。
 こうした研究が日山協や労山等の組織ではなく一個人の手で進められている点も特筆すべきであろう。
 願わくば、学会誌という限られた枠ではなく山岳メディアにも広く取り上げられることを期待したい。

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コメント

 北沢峠も仙丈も、観光気分の団体登山が多いので、回答はそんなものでしょう。いまや涸れつつある貴重な水場を占領して歯磨きをする人たちに何を言ってもムダ。十年前に比較すると、駒鳥池もただの窪み、南アルプス全体が乾燥して乾いたスポンジみたいです。
 一時帰宅、良かったですね。また別の疲れが出ますか? 野菜不足は具がいっぱいのお味噌汁でとってください。何でも刻んで入れる。でも塩分は控えめに。

投稿: かもめ | 2007.06.19 12:50

<<北沢峠も仙丈も、観光気分の団体登山が多いので
え・・・
南アルプスといえば場所によっては北海道の山よりも静寂と野生に満ちた雰囲気の場所というイメージでいたのですが・・・

<<でも塩分は控えめに。
東北地方の人間には試練なんですね、これが(笑)

投稿: 聖母峰 | 2007.06.19 20:26

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