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ピオレ・ド・オール・アジア 「評価」することは「優劣」をつけることなのか?

先日東京で行われたマルコ・プレゼリ氏の講演をきっかけに、優れた登攀に送られる「ピオレ・ド・オール」の存在に疑問を呈する方がいらっしゃるようである。
その方々のブログを拝見する限り、主な趣旨は「登山に優劣を付けられるのか」というものである。
それも一つの見識ではある。

ここで、2007年ピオレ・ド・オール・アジア決定の様子を、大韓山岳連盟掲示板から引用したい。
書き込みは韓国の月刊山岳誌「人と山」によるものである。
以下引用開始
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青竹山嶽会 韓国初 ピオレ・ド・オール・アジア受賞
〓 月刊 <人と山> 創刊18周年記念式及び ピオレ・ド・オール・アジア授賞式盛況裏に開催
◆ 登山の純粋性に高い価値付与

 去る 11月 2日(金) 午後 6時、ソウルのプリマホテルグランドボリュームにおいて、アジア山岳人たちの高い関心の中に ‘第2回ピオレ・ド・オール・アジア’ 授与式が盛大に開かれた.
ピオレ・ド・オール・アジアはフランス山岳誌であるモンターニュ(Montagnes)と高山登山協会(GHM)が毎年全世界でもっともすぐれた登山を行った登山家に「黄金ピッケル」を授与する式である。
 ピオレ・ド・オール・アジアの審査基準は、前衛的な登山方式であるアルパインスタイル(alpine style, 少数, 軽量, 速攻登山) 登山と、岩壁を登る巨壁登山を対象にしている。
 本行事がアジアの中で韓国で開かれたことは、山岳専門雑誌である月刊 「人と山」が昨年 ピオレ・ド・オール・アジア主催者であるフランスモンターニュと高山登山協会(GHM)を訪問して 第1回ピオレ・ド・オール・アジア制定に合意したものである。昨年第 1回受賞者はマナスル(8163m) 北東壁を新ルートで登ったカザフスタンチームに贈られた。

 この日行事は 550人余りの山岳関係者と登山家たちが盛況を成した中、午後 6時月刊 「人と山」 創刊 18周年行事とともに開かれた。ホンソックハ社長は挨拶の言葉を通じて「山と人を受け継ぐ媒体として、今後ともアルピニズムとヒューマニズムに代表される純粋山岳精神を引き継いで行く」と宣言した。
 引き続き開かれたこの日行事のハイライトである ‘第2回ピオレ・ド・オール・アジアは、去る10月アジア山岳連盟の推薦で挙げられた候補から 1次審査をパスした最終候補 4チームの登山映像上映で始まった。
 最終候補はパキスタンヒンドゥークシ山脈ガルムス(6244m)西稜をアルパインスタイルで登った韓国の青竹山嶽会(隊長シムグォンシック)、ローツェ(8516m) 南壁を登攀した日本山岳会東海支部チーム(隊長田辺治), K2(8611m)北稜を 11年ぶりに無酸素で登攀したカザフスタンのデニス・ウルブコとセルゲイ・サモイロプ、ローツェシャール(8400m) 南壁に新ルートを開拓した韓国ローツェシャール遠征隊(隊長オム・ホンギル)である。
 登山ビデオ上映が終わって最終候補者と審査委員が集うと、場内は今年ピオレ・ド・オール・アジア受賞者が誰になるのかに関心が集められ始めた。
 中村保 審査委員長の審査基準説明、8人の審査委員が 2次投票まで至る大変な審査過程の説明が終わると、授賞式場をいっぱい埋めた 500人余りの山岳人たちの耳と目はまた受賞者発表にあった中村委員長に集められた。

「ウイナー イズ ガルムスチーム オブ コリア !! 」
沈黙を破った中村審査委員長の発表があると、韓国チーム初ピオレ・ド・オール・アジア受賞に鼓舞された山岳人たちの歓声と拍手が最高潮に至った。シムグォンシック隊長は受賞所感で「岩壁登山の中で墜落した気持ちのようだ」と受賞の喜びを隠すことができなかった。 これとして韓国チームはフランスの ピオレ・ド・オール主催者との合意によって、来年 1月フランス・グルノーブルで開かれる ピオレ・ド・オール本賞に韓国登山隊としては最初に出場するようになった。
 今回授賞式を見守った多くの山岳人たちは、屈強な候補者たちの中、青竹山嶽会が受賞したことはピオレ・ド・オール賞の基調である自然を保護し困難な新ルートで登る、高い価値の登山が良い評価を受けたようだと口をそろえて言った。 また本行事を通じて韓国山岳界も、登頂を主とする結果主義よりも登山過程を思う新しい登山思潮のターニングポイントになることを確信すると言った。
このように第2回ピオレ・ド・オール・アジアは大規模な人員と酸素, シェルパの助けを通じる難しさよりは少数軽量の純粋な登山精神に贈られたのだった。
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以上引用おわり

さて、私はこのような登山を評価する賞の存在を肯定的に受け止めている。
ピオレ・ド・オールの存在を疑問視する方々は、前述のように「登山に優劣を付けられるのか」という価値観の問題を提示している。
しかし冷静に登山史を振り返って考えていただきたい。
登山とは先人よりも
「より困難で」
「より良いスタイルで」
という、価値観の”差別化”が存在したからこそ、発展してきたのではないだろうか?
賞を授与されるということは「優劣」を付けることではない。
より優れた登山にスポットライトを照らす意味合いもあるはずである。
問うてみよう。
もし第二回ピオレ・ド・オール・アジアが無かったら、多くのクライマーに韓国隊のガラムス西稜という登山を知る機会があっただろうか?

先日の韓国滞在の際、月刊「人と山」最新号を確認したところ、ピオレ・ド・オール・アジアにノミネートされていた登山隊はすべてカラーページで紹介されていた。
然るに日本の山岳メディアの沈黙度は不可思議なものである。
過去、多くのクライマーと呼ばれる人々が「より良いスタイルで」などと登山内容を「比べて」いたはずだ。
そういった方々がピオレ・ド・オールという賞の存在に対して「登山を比べるなど・・・」というロジックを用いるのは、矛盾しているのではなかろうか。
さらに、なぜピオレ・ド・オールだけが批評の対象になるのだろうか。
高水準のクライミングを評価する賞ならば、北米にもマッグススタンプアワードという、素晴らしい登攀をセレクトしてきた賞が存在する。ぜひ、こちらも批評してもらいたいものである。

さらに、こういった賞のコマーシャリズムが悪影響を及ぼすという批評がある。
はたしてそうだろうか。
そのコマーシャリズム(スポンサーといいかえてもいい)とうまくつきあうことは、古来、大航海時代の昔から冒険と探検の世界ではつきまとってきた問題である。
その批評を仰っている某登攀ガイド氏も、普段はアークテリクス社がスポンサーであることをブログに載せていたように思うのだが。

20071105012007ピオレ・ド・オール・アジア受賞の模様

あえて当ブログでは主張する。
優れた登攀を評価するアワード「賞」の存在は、登山界の隆盛にとって必要である。

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