先月韓国で開催された『ビッグウォール・フェスティバル2008』。
昨年渡韓した際、韓国の山岳雑誌で「人工壁でエイドクライミングのコンペ」の写真を見た時に「えっ」と驚いたのですが、これだけエイドクライミングが市民権を持っているのも韓国ならではという気がします。
日本では「アメリカンエイド」と呼ばれるエイドクライミングですが、こうしたコンペがアジアで開催されている事自体、特筆すべきことではないでしょうか。
2008ビッグウォールフェスティバル by 月刊山11月号
以下記事引用開始
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[登山競技] 2008 ビックウォールフェスティバル
極限登山を追い求める者たちの宴
第7回マウンテンハードウェア・イクストリームライド・ビックウォールフェスティバルが10月18、19日の二日間、京畿道 楊州市 維楊里のイクストリームライド(訳注・以後ERと略)登山学校教育場で開かれた。登山学校が主催、コロンビアスポーツウェア・コリア後援の大会は、全国的にビッグウォール登山を楽しむ男女63人が選手として参加、男女統合の難易度競技と女性部ユマーリング競技に進行された。
決選進出者中で唯一完登したミン・ジュニョンさんが、重さ100kgのホールバッグを引き上げようと死力を尽くしている。
秋の紅葉で染まった会場は、秋特有の派手な色感が参加選手と観客のウェアと一団となって山腹を連想させる素敵な場面を演出した。従来は人工壁で開催されていた大会と異なり自然壁で開かれた大会なので、自然と渾然一体となる感じが一層増した。
大会予選は初日の土曜日、午前 9時から始まった。男女を分けず同一コースで、男性は20分, 女性は3分を加えた23分の間に登る方式で進められた。 コースの特性や必要装備をあらかじめ見積ることはできないため、参加選手たちはギアスリングとハーネスに平均 15kg 程度の各種ビックウォールギアを下げた重装備で競技に出場する。
クォン・ヨンハンさんがクラックにプロテクションを挟みこむために腕を伸ばしている。/ 女性選手で唯一決選に上がったイ・ミョンヒさんがクィックドローをかけている。
登山後、装備を詰めた100kgのホールバッグを引き上げる。自然壁に作られた3本のルートで各3人の決選進出者が競い合う方式で、これは3本の自然壁にルートを作り、ルート別の難易度を加味しないで独立して順位を決めた。
秋としては少し暑い気温に時間超過などで、登山も半ば、次の出場者のためにルートに残置された装備を回収する進行要員の動きが忙しかった。選手の中には豊富な登山経験で上手にクライミングを展開する選手もいれば、経験不足で時間が経っても速度があがらない選手も出てきた。技量と経験が不足な選手に応援の拍手を送る観客たち。参加した応援団の熱っぽい応援が競技会場を包んで開かれた予選は、夕闇が降りる午後 6時に終わった。順位別 9人の選手が明日の決選に立つことができるのだ。
1 競技場で開会の挨拶をするムン・グァンス校長 / 2 選手たちは15kgを超える重さの装備を身に着けた状態でクライミングを行った / 3 競技場で開かれた開会式.
夕方には選手たちや応援団など会場でキャンプする人々のために、主催者側で簡単な夕食を提供して、和気あいあいとした中に 年一回のビッグウォール祭を満喫する時間となった。遠く釜山からやってきた選手・応援団もいて、清州など全国各地から集まったビックウォール・クライマーたちが互いに情報交換をして夜を明かすこととなった。
日曜日朝は小さなイベントで始まった。昨年まで男性部, 女性部で競技したユマーリング競技は、今年から女性だけで行われた。20m高のオーバーハング 2箇所を含むコースを、アッセンダーを利用して登る競技に 9人が出場して、普段発揮しにくいユマーリングの実力を思いきり発揮した。
特別イベントとしてユマーリング速度競技団体戦も進行した。ソウル、仁川、忠北、江原、済州チームで男 3人女 1人がリレーする特別競技だ。
女性部だけで開催されたユマーリング速度競技で女性参加者が登る / 空中にぶら下がって次の動作を準備するパク・チュンギュさん.
午前10時から開会式が進行されてムン・グァンス校長は開会の挨拶で登山の新しい文化に位置したビックウォールフェスティバルの未来に対して、新たな飛躍の青写真を約束した。 ムン校長は今大会の1位から 5位入賞者を雪岳山の「赤壁」に招待して速度競技を開いた後、来年から最高記録を更新したクライマーにはコロンビアスポーツウェア・コリアが賞金100万ウォンを提供すると発表して、選手・応援客たちの拍手喝采を受けた。
開会式に引き続きメイン競技である難易度決選が進行した。一コースで 3位同点者が出て、総出場選手は10人だ。昨年の優勝者イ・サンウ選手も簡単に予選1位で本選に進出し、女性部優勝者イ・ミョンヒ選手も女性では唯一決勝に進出、気炎を吐いた。本戦も予選のように女性は5分の時間が余分に与えられる方式で決選が進行された。
1 少しでも早く終了地点まで登るため最善をつくすが上手くいかない。イベントで開かれたユマーリング速度競技団体戦. / 2 登山を終えた後明るい顔をほころばすミン・ジュニョンさん. 難易度優勝を勝ち取った / 3 キム・ソンドゥさんがバードピークを口にくわえたままクラックをみつめる。
決選は30分という長くない時間の内に、各種装備を利用してルートを登ってホーリングシステムを固定して下降、装備を回収してすぐ 100kg超のホールバッグをあげなければならない競技だ。しかし予選で厳選された選手たちだからクライミングは滑らかで、難関もしばらく考えて自分のコースを描いてクライミングに夢中になった。
予選の逆順に出場して見ると、競技が進行するほど観衆は選手の一挙手一投足に一緒に歎息したり喜んだりした。各組 1位のイ・サンウ、ミン・ジュニョン、ハン・ゾンフィ選手はビックウォール・クライミングの真髄を見せつける名勝負を見せてくれた。結果として順位を選り分けなければならない「大会」だから順位を決めなければならないが、クライミングで見せてくれた彼らの技量は観衆皆をビックウォールクライミングの魅力に導く時間となった。
(中略)
ビックウォールクライミングを競う国内唯一の大会
大会を進行して、果してこの大会をこのように沸き返えるようにして選手と観衆が一体となる力はどこから来るのか? お互いに力を合わせて大会を準備して一つになって進行したER登山学校講師逹と同門会家族たち、長年の歳月に相変わらずの信頼でメインスポンサーを務めてくれたコロンビアスポーツウェア・コリア、そして登山を楽しんで大会に参加して思いきり楽しんでくれたER登山学校他すべての人々が一団となって溶鉱炉のように一体となって作ったフェスティバルが、ビックウォールフェスティバルだと思う。
一年一年開かれたイクストリーム・ビックウォールフェスティバルがもう 7年目の大会を迎えた。極限のクライミングを追い求める人々を大会に導く力は、たぶん多くの人と共有しにくい彼ら独特の文化に対する「共感」ではないかと思う。ヨセミテ、トランゴタワーなどフリークライミングや高所登山の技術だけではこなしにくい極限の登山のために、必ず必要なビックウォール登山技術を競う国内唯一, 世界唯一のビックウォールフェスティバルが持つ意味であるかも知れない。
記事執筆 シム・グァンソブ イクストリームライド登山学校総務
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以上記事引用おわり
ちなみにこのビッグウォール・フェスティバル、毎年のポスターもなかなか洒落てます。
2008年はこんなポスター↓

主催のイクストリームライド登山学校はビッグウォール・クライマーを輩出していることで知られていますが、同学校関係者が中心となって展開されたのが先のメルー北壁登山隊。
このようなエイドクライミングコンペが韓国のクライミングの底上げに貢献していることはまず間違いないでしょう。
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