« リカルド・カシン賞2008にクリスチャン・ブレンナ | トップページ | ひろしまドリミネーション2008 »

或る登山ガイド本のおはなし。

宿直明け、自宅には戻らずそのまま仙台空港に向かう。
日曜潰して出張移動。
リストラに片足突っ込んだ貧乏暮らしの土木作業員の私、子供達が楽しいクリスマス・正月を迎えられるように粉骨砕身でございます。

仙台空港の書店にて、新刊の登山ガイド本を見つけた。
その本を手にして、一瞬凍り付く。

今年、某連峰の主(ぬし)的な存在であるA氏と山行を共にする機会があった。
そこで少し話題になったのだが、その某連峰に関するガイドブックを書くためと称して、A氏はとある人物から取材・原稿の確認を依頼されたのだという。
その原稿を見ると、ガイドブックの内容はA氏管理のウェブサイトの丸写しで、問いただすと「海外の山に行っていて時間が無い・・・」という回答。
怒り心頭のA氏は電話口で一切の協力をお断りしたという。

その執筆者の所在地、海外登山歴から、おおよそ人物の見当はついていたが、今、仙台空港の書店で手にしたガイドブックを読んだとき、すべての点が線となって私の頭でピンときた。
A氏が激怒されたのは、このガイドブックの著者であろう。

とはいえ確証を得た訳ではないし、あくまで私の推定にすぎないので、前述のとおり人物も山域も伏せ字である。
その執筆者とは、以前ある登山を巡って私も一時期おつきあいさせていただいた。
物事を進めるのに、少々(というかかなり)強引な進め方をされる方である。

登山ガイド本を書くという行為は大変な作業である。
以前、山岳写真家で集団の主宰者で、かつて「雪沓(ずんべ)山の会」のクライマーとして数々の初登記録を残している写真家・早川輝雄氏の山行に同行した。
ある登山教室の講師・ガイドとして私たちは鬼首の山を訪れたのだが、時間が空いたので「ちょっと見に行こう」と、早川氏は近場の山の登山口を確認すべく車を走らせ、途中では山麓のバス停の時刻表も丹念に調査・記録されていた。
 そのような細かい、地道な作業を積み上げて完成されたのが、多くの登山者が活用している山と溪谷社のガイドブック「分県登山ガイド」である。
 
早川氏も広い山域をカバーするのに自分一人だけでは限界があるわけで、時には山仲間に情報確認したりすることももちろんあるらしい。
そういった意味では、くだんの執筆者がA氏に協力依頼を求めたところで何も問題は無い。しかし、「ウェブサイトの丸写し」で怒りを買う・・・
これはデリケートな問題なのでオブラートに包んだような書き方しかできないのだが、その執筆者には執筆者なりの言い分があるのだろう。それはA氏にしても同様である。
しかし結果的にその執筆者の行為はA氏の怒りを買うことになってしまったのだ。(A氏は遭難救助隊の指揮者であり、登山道の環境保全活動にも心血を注いでいる社会的地位のある方なので、他人に言いがかりをつけるような方でもない)

普段、私も当ブログで二次情報を頼りに好き勝手なことを書き、「おめーもネット上の記事引用してんだろ」と言われれば返す言葉もなく、あれこれ言える立場には無い。
そのことは十分承知なのだが、あえてこの生々しい話について言及してみた。
書店に積み上げられた、新刊のガイドブック。
この本を手に嬉々として山に向かう人もいるだろう。
文章を書く、出版物として世に問う、という際に「信頼」「信用」「誠実」ということがどれだけ大事なことなのか。
そんなことを思わずにいられなかった。

|

« リカルド・カシン賞2008にクリスチャン・ブレンナ | トップページ | ひろしまドリミネーション2008 »

山岳ガイド日記」カテゴリの記事

コメント

このコメントを拝見して少し気になる事が有りました。この「ある人物」とはもしかするとかつての同じ山岳会メンバーで、はるか昔ですが一度ヒマラヤに同行した人物に符号する点が有ります。
今となっては登山の方向性が全く異なり、3年ほど前に久しぶりに再開したのが最後でその後のお付き合いは有りません。しかし、これが誠なら大変残念な出来事ですが・・・。
その引用された可能性のある思われるWebサイト、又はガイドブックの内容を見たいと思いますが、もし可能であればメールにてお知らせ下さい。

投稿: yamadori | 2008.12.02 13:18

re:yamadori様
 コメントありがとうございます。
 この件につきましては新刊本に関する話で、前述のとおり確証は得られておりませんので、万一の場合yamadori様ご自身の交友関係にもご迷惑がかかるおそれがありますため、あくまでも関連Websiteとガイドブックの書名の公表は控えさせていただきます。ご理解いただければ幸いです。なおこの件に関しましては改めてメールさせていただきます。

投稿: 聖母峰 | 2008.12.02 22:22

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21370/43274751

この記事へのトラックバック一覧です: 或る登山ガイド本のおはなし。:

« リカルド・カシン賞2008にクリスチャン・ブレンナ | トップページ | ひろしまドリミネーション2008 »