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雨呼山(あまよばりやま)

Pa0_047329日、祝日。
午前中は息子の保育参観に家族総出で出席。
幼稚園入園から約3週間、先生方に声をかけられると私の陰に隠れてしまうシャイな息子の行く末が心配。
まあ、時間の許す限り子供の成長は目にしておきたい。

昼前に保育参観は解散。
自宅で家族みんなで昼食をとり、私は急ぎ会社へ。
諸事情で5月1日に代休を取るため、誰もいないフロアで月末提出の書類を一気に作成。
それから会社を出て、山形市を再び縦断して天童市に向かう。
本日の目標は雨呼山(あまよばりやま)、標高905m。
祝日だというのに、育児と会社に時間を費やし、里山を一座登るにも時間捻出に努力しなければならない。
もっとも、私は家庭があろうが会社があろうが、山に登り続ける姿勢に変わりはないんすけど。

さて、本日の雨呼山は雨乞い信仰の対象として地元民から親しまれてきた山だ。
山そのものよりも有名なのは、山麓にある「ジャガラモガラ」である。
風穴が存在する窪地で、風穴から吹き出す冷たい空気により独特な植生が発達している地形だ。
意味不明な地名、「ジャガラモガラ」については諸説ある。
よく言われているのが「姥捨て」で置き去りにされた老人の声が聞こえないよう楽器を鳴らしたことに由来するという説である。
しかしながら地理的に人里に近く、姥捨てには不向きとみられることから地元の天童市教育委員会の学術報告では「姥捨て」説は明確に否定されている。

地形図片手に、狭い集落の一本道を車で走り「秘境」ジャガラモガラをめざしてみると・・・

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地形図にはない立派な道路が切り開かれ、ラーメンの幟旗が立った売店「じゃがらむら」があったりする。
水曜スペシャル並の「秘境」ですな(笑)

そこからさらに車道を走り、林道が始まるところが駐車場。
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林道歩きといえば登山では「退屈」の代名詞のようなものだが、ここ雨呼山の林道は両側にソメイヨシノが植樹されている。
しかもまだ八分咲きだ。もう山形県内各地の公園は葉桜になっているのに。天童市街から標高にして500mほど登っただけで、まだ桜が楽しめる。

雨呼山の登山口は
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花を地面に振りまいたような群落を成すエゾエンゴサク、また白、青のキクザキイチリンソウが満開だ。

登山道が始まると、
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たくさんのエンレイソウが、枯葉を押し上げて咲き始め。

しばらく歩くと、文字通り「見上げるほどの」急斜面の階段が始まる。
約20~30分の階段を登り終えると、景色の良い頂上稜線となる。
一人だけの山行なのに、積み重なった枯葉がカサカサとにぎやかだ。

先日訪れた福岡の英彦山と同様、この山でも山頂手前に泉があった。
「竜神の池」である。
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凝灰質とおぼしき斜面がくりぬかれ、ポツポツと水がしたたり落ちている。
地元の農民たちはこの竜神の池で雨乞いをしたといわれている。

最近、山形の食文化に関する本を読んでいる。
昔は天候の良し悪しが作物の成果に直結、農業以外に産業の乏しい山形盆地では、すなわち天候不良は即、「飢饉」に繋がるという厳しい時代だったらしい。現在のように灌漑施設や天気予報など無い時代の話である。
農民、先人たちは、どんな想いでこのしたたる一滴を眺めていたのだろうか。
私が今登っている山の名前は、「あまよばりやま」である。

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山頂は意外にも、お社も何もない静かな頂上であった。
雨乞いのための神社などが奉ってあるのかと思っていたのだが。
静かな山頂で、インスタントのチャイと揚げあんパンで休憩。

Pa0_0492雨呼山の頂上は山頂のピークと前衛峰の二つから成る。
いずれも広いブナ林になっており、歩いていて気持ちが良い。
汗ばんだウエアの胸元に吹き込む、早春の冷たい風もまた気持ちがよい。

ふたたび枯葉をカサカサとにぎやかに踏みつけながら、下山を始めた。

【山岳ガイドのワンポイントアドバイス】
雨呼山に関しては、尊敬するガイド本執筆者・高橋金雄氏らの著書に詳しいので詳細はそちらをご覧いただきたい。
この山は分岐が多く、標識はあるが朽ちている物も目立つ。また春先は登山道に枯葉が積もり倒木も多い。コース確認のための地形図とコンパスはぜひ携帯を。
本日筆者が歩いた「ジャガラモガラコース」は、頂上稜線まで急な階段が続く。土留めの板や杭が飛び出ている箇所もあり、転倒は重大な怪我に結びつく傾斜のため、ゆっくりあせらず登り降りしてください。

追伸:登山口の看板を確認したところ、この山には『 上 下 地 獄 コ ー ス 』という登山コースがあるらしい。場末の檄辛ラーメン屋の看板メニューみたいなネーミングである。
うーむ、なにが地獄なのか、こんどヒマだったら行ってみたい。

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