九州国立博物館 特別展『聖地チベット ポタラ宮と天空の至宝』を見て
宝満山から下りてそのまま九州国立博物館に直行。
特別展『聖地チベット ポタラ宮と天空の至宝』を見学するためである。
こちら福岡では宣伝にもかなりの力の入れよう、あまり更新が盛んとはいえない福岡県のウェブサイトでも告知が出され、西日本新聞では毎日展示物の解説コラムまで設けている。
中国側の多大な協力で、ラサ・ポタラ宮の宝物・仏像が出品されている。
過去にポタラ宮を訪れている自分としては、どうしても見てみたい。
古代からのチベットの歴史を解説すると共に、数々の仏像、タンカ類が展示されている。
特に印象に残るのは蓮の花を模した蓮マンダラ。
花びらのパーツが可動、蓮の花が開いたり閉じたりできる。中心に仏像を配置したものだ。
やはり蓮の花に特別な感情を抱くものなのだろうか。
純粋にチベットの宝物を鑑賞するとともに、私は展示についてもう一つの側面についても関心を向けざるを得ない。この展示会、チベットの歴史をどこまで展示するのだろうか、と。
今回の展示では元・明・清との交流について展示があり、その先は「チベットの暮らし」とタイトルが付けられたコーナーとなる。チベットの暮らしといっても、チベット医学のタンカと祭典に用いられる衣装・仮面が展示されているのみである。民衆・遊牧民の暮らしに関わる物は、無い。
もちろん、中共政府によるチベット支配をうかがわせるものなどは展示内容には微塵も無い。
ここ最近のチベットにおける暴動騒ぎで、この展示の企画立案に携わったスタッフの方々のご心労には、むしろ心から敬意を表する。
これだけの展示物を日本で見られる機会はまたとない。
その意味では貴重な特別展である。
しかしこれだけは指摘しておきたい。
朝日新聞関係者や日中友好協会関係者、また自称人権派弁護士などが中国のチベット侵略を事実上支持し、その理由としてチベットの奴隷制度開放、僧侶を頂点とした階級制度打破をチベット侵略のメリットとしてメディア上で公言している。
そういった人々は、人民を階級制度、奴隷制度から解放したはずの中華人民凶悪国の文化組織が、階級制度、奴隷制度のトップにたっていたはずのチベット仏教の仏像・その他資料を「至宝」「宝物」とまつりあがめる姿勢に矛盾を感じないのだろうか。
展示室から出てすぐの場所は売店となっており、日本語も堪能な中国人スタッフが見学者にいろいろなチベットグッズを販売していた。カトマンズの書店あたりでも売っている、木彫りのスタンプが一個600円で売られているのを見て心が折れた(WBCのイチロー風。)
色川大吉氏の書籍、平山郁夫氏の絵画など、中国当局に差障りの無い方(笑)のものが置いてある。
1300円の入場料を払って見学したが、私にとってはむしろ併設の文化交流展示『海の道、アジアの道』の方が非常に見ごたえのある内容であった、というのが正直な感想である。
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