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オ・ウンソン女史の涙

 前号のロクスノ誌において、かの池田常道氏は8000m峰14座女性初のタイトルについては「韓国パワー」でオ・ウンソンに軍配が上がるのではと言及しておりました。
 しかしながら、事態は思わぬ方向に発展していました。
 オ・ウンソン女史のカンチェンジュンガ登頂について疑問視する声があがったためです。

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  ←説明記者会見で涙を流すオ・ウンソン女史
 事の発端は、同時期に登山活動を行っていた別の韓国隊が、頂上よりも下でオ・ウンソン女史の母校の旗が立てられているのを目撃したことでした。
 さらに問題視されたのは、ハンギョレ新聞が報道した「標高8000m地点から頂上まで「3時間40分で登頂」は速すぎる」という登頂時間への疑問視でした。
 8000m峰14座登頂の「女性初」というタイトルで韓国メディアが賑わった分、このカンチ峰登頂疑惑については韓国の主要メディアが一斉に取り上げる事態となってしまいました。

 これらの疑問視に対し、12月3日にオ・ウンソンとスポンサーのブラックヤク社は説明記者会見を開催。

 オ・ウンソン女史の釈明によれば、標高8000m地点から頂上までは12時間40分かかっており、ハンギョレ新聞の3時間40分説は誤報としている。
 不鮮明な登頂写真については、
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 (↑問題視された頂上写真)
 悪天候で視界不良の中、同行したシェルパ三名からここが頂上であると示唆され、写真を撮影したと回答。また頂上とした場所に写っている岩などについて、他のクライマーの登頂写真と比較して同様の岩が写っているなどと説明。
 この記者会見にはオ・ウンソン女史の登山に同行したダワ・オンチュシェルパも同席、「もしオ・ウンソンが登頂したものでないとすれば、それ以前に登った人々もすべて登頂したことにはならない。このように疑問視されるのは、ネパール政府が発行する登頂証明書を無視する行為」と不快感を示した。

 
 さて、ここでオ・ウンソン女史に対する海外での評価をみてみたい。

 Some of her previous summits are yet to be confirmed though:"If not she may end the race in the same situation of Fausto De Stefani、Lodue and Alan Hinkes、with unrecognized conquests、"notes Rodrigo Granzotto Peron。 (http://www.mounteverest.net/news.php?id=18313)
ロドリゴ・グランゾット・ペロン曰く「オ・ウンソンの過去の登山の幾つかは検証の対象となる。確認できない場合は、彼女はファースト・デ・ステファニー、アラン・ヒンクス同様に(疑惑が残るまま)登山レースを終える可能性が高い」と指摘。

 Ein Erfolg von Oh Eun - Sun in diesem Rennen kann、wenn man den Geist des Alpinismus'der modernen Zeit nicht vollig absprechen mochte、der Menschheit nicht positiv im Gedachtnis bleiben。Ahnlich dem Olympiasieg des mit Doping vollgepumpten Ben Johnson im 100m - Sprint 1988 、hatte ihr Triumph einen grosen Makel。 (http://www.bergleben.de/klettern/1258-kommentar-eine-frage-des-stils.html)
 セバスチャン・リンデマイヤー曰く「あたかも1988年のオリンピックの100 mレースでベン・ジョンソンがドーピングで勝ったように、彼女(オ・ウンソン)の勝利は非常に大きな禍根を残す。」

と、厳しい声が挙がっています。
また12月3日に開催された説明記者会見後も、韓国の山岳雑誌ウェブサイトの掲示板では厳しい意見が寄せられています。

 当記事のタイトルは「オ・ウンソン女史の涙」としました。
 8000m峰は一座でも、登頂することは多大な労力と精神力を必要とします。
 説明会見で、数多くの8000m峰を登ったサミッターが涙の会見をする。
 それは異常な事態だと言わざるをえません。
 しかし厳しい言い方になりますが、このような事態を招いた点については、オ・ウンソン女史自身に責任が求められるでしょう。

 私自身が経験していますが、遠征登山ではマスコミは「事実」は伝えますが「真実」を伝えるとは限りません。
 現地にいなければわからないこともあり、伝わらないこともあります。
 登山は個人の意志と自由の下に行われるべきものであり、本人が「登った」といえば登ったことになる。それが私自身の考えです。しかしながら、スポンサーやチームから厚いバックアップを受け、「成果」を求められる「プロ」の登山家となれば、メディアに隙を与えない行動(登頂)が要求されるのが現実なのでしょう。

 大昔にさかのぼってデナリ初登頂の「虚偽報告」など、登山史を振り返れば偽りの登頂スキャンダルなど残念ながら存在します。
 当ブログでは取り上げませんでしたが、つい最近もシシャパンマ中央峰の登頂写真を「偽造」したウェブサイトの存在が問題視されていました(クライミングの英文サイトをご覧になっている方は既にご存じでしょう)

 私は決してピュアな人間ではありませんが、人間の限界まで心身の能力を要求するヒマラヤ登山において虚偽の報告をするなどという、その精神構造が全く理解できません。

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