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栗城史多氏の無邪気さとNHKのインチキ報道を憂う。

昨年末、栗城史多氏の著書『一歩を越える勇気』を一読。
年が明け、NHKで栗城氏の記録番組が放映される事を知り、視聴。

栗城氏は著書の中で、過去にチョモランマ無酸素単独登頂に成功したのは唯一R・メスナーだけと明記した。
そしてNHKの番組では、過去にチョモランマ無酸素単独登頂に成功した者は一人だけ、と女性ナレーターが明言した。

しかしながら、
E
そりゃ事実と違うだろ。

チョモランマ無酸素単独登頂の件については当ブログで過去に記事にした。

日山協のヒトの頭の中は80年で止まっているらしい。2008年8月30日付

私は前記リンクの記事で書いたように、他校の大学山岳部にまで入って山を始めた栗城氏の行動力に敬意を抱いているし、その気持ちは今も変わらない。
「セブンサミット」も登山における一つの価値観として尊重するし、現に私が慕うある岳人もセブンサミット達成に向けて活動中である。

しかし、2009年現在においてもなおチョモランマ無酸素単独登頂を達成したのがメスナーだけという認識は、あまりにも登山史そして先人の記録をおろそかにしていないだろうか?

さらに問題、いや、滑稽ですらあるのはNHKのナレーションだ。
メスナーに次いでチョモランマ無酸素単独登頂を果たした、イギリスの故アリソン・ハーグリーブスを日本のメディアとして初めて伝えたのは、他ならない、NHKなのだから。
1995年の日本大学山岳部によるチョモランマ北東稜完登の記録番組において、NHKは単独・無酸素登頂を目指すアリソン・ハーグリーブスの姿を放映したはずなのに、何故チョモランマ無酸素単独登頂に成功した者は一人だけなどとナレーターに語らせるのか?

 栗城氏の周りにはサポート・アドバイスする『アルパインクライマー』やら『一流の登山家』がいるそうだが、そういった方々はメスナーだけが唯一の無酸素単独登頂者、という誤った認識について何もアドバイスしないんでしょうか?

 ネット上に氾濫する声から、栗城氏の行動が多くの人々に夢と感動を与えているのは事実だろう。
 しかし、無意識にせよ意図的にせよ、過去の先人の記録が誤って伝えられる事は正されるべきである。
 NHKの安易な制作態度に、複雑な想いで番組を視聴した。

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コメント

NHKに限らず日本のマスコミは信頼できません。
しかも、心配なのは、国民の多くがメディアの報道や発表を等を鵜呑みにしている事です。
例えば、中核派系の団体が自衛隊の訓練に反対すれば「市民団体が訓練に反対」と報道、中核派って市民団体ですか?(私はそうは思いませんが)
でも、そんな事知らない一般の人は「市民が嫌がってる事を強行するなんて自衛隊も防衛庁もけしからん」と思うでしょう。
作る会の教科書問題でも市川市だったかので起きた作る会の教科書採択に反対する抗議行動があったが、報道では「父兄等の市民団体が反対の抗議行動」ってあれ「中核派のデモでしょ」
なぜか、中核派がイニシアチブを取る団体は市民団体と報道されているよね。
中核派って無差別テロや内ゲバで1000人以上の死傷者を出している極左暴力集団と私は認識していたがちがうのかな?私が間違っていたのかな?
NHK(土曜解説)では先般国の公債残高が膨れ上がったのは「道路建設のせいである」旨の怪説(解説)があるがホントなの?(建設国債は道路投資には殆ど使われてないのに:道路投資には他に財源があったのに)公債残高膨張の本当の理由は社会保障費や人件費やによる赤字の穴埋めのためと私は理解していたが。
さらに公共事業のGDP比は他国と比較してフランス、イギリス等は2~3%なのに日本が突出して6%前後でいまだに多額の公共工事を継続も大ウソ。
本当は日本がGDP比3%アメリカ2.5%イギリス1.8%フランス3.3%等々、別に日本が突出しているわけでない、しかもこれらのGDP比が低い欧米諸国は日本と比較して平坦で費用のかかる橋やトンネルが少なくて済む、地盤が強固で基礎部分の費用がかからない、地震がほとんどなく耐震構造によるコストアップが無い等、コスト面で日本と比較出来ないほど有利である。
このような事を知ってか知らずか、NHKや他の報道機関は上記のような報道をしている。
結果的に、マスコミの報道を鵜呑みにする傾向のある日本人はマスコミの造った悪者を非難しさらにマスコミはそれをあおり立てる悪のスパイラルに突入するのでは・・・・
長文になってすいませんでした
思いつくまま書いていたらとりとめのない物になってしまいまいた。ゴメンナサイ
反省
最後に、椿事件を思い出してしまいました

投稿: トホホくん | 2010.01.10 08:43

re:トホホくん様
 コメントありがとうございます。

<<結果的に、マスコミの報道を鵜呑みにする傾向のある日本人はマスコミの造った悪者を非難しさらにマスコミはそれをあおり立てる悪のスパイラルに突入するのでは・・・・

 もうこれは昔から、ワイドショーの芸能ニュースに顕著ですよね。メディアの『マッチポンプ』として。

 ネット上の情報は玉石混合と言われますが、新聞の論説でそういった批評を読むと「おまえが言うな」といつも思います。

 私の場合、多くの人の「考え方」を知るツールとして新聞はじめメディアに接するようにしています。情報源としては、トホホくん様ご指摘のようにメディアというフィルターがかけられているので、それを見抜く力が求められるなあ・・・と感じています。

 椿事件のご教示ありがとうございます。不勉強なものでこんな件があったとは知りませんでした。

 話は戻って、今回の記事の件は「ヒーローを求めたがるメディア」の姿勢が端的に表れているなと思いながら書いた次第です。

 ・・・最近は、市民団体っていうと何かもう恥ずかしい響きを感じるのは私だけでしょうか。(笑)

投稿: 聖母峰 | 2010.01.10 12:51

で?
なんで本人に知らせてあげないんですか?

人を批判するのって新しいことにチャレンジすることに比べればゴミカスのようなものだと思います。
まぁ、栗城が新しいことにチャレンジしているかといえばそうとも言えないんですがね。

栗城はちょっとだけ興味ありますが、大半の人はエンターテイメントとしてとらえているんじゃないですか?
たぶん、彼、8000mの14座も単独無酸素で挑戦する勢いだと思いますよ。
批判はそのときでも遅くないと思います。

問題はNHKが情報のチェックをせずに流したことが一番だとは思いますが。

投稿: ちょっと通りますよ | 2010.01.18 20:51

re: ちょっと通りますよ様

 コメントありがとうございます。

<<なんで本人に知らせてあげないんですか?
 至極ごもっともです。ご指摘ありがとうございます。
 栗城氏の著書を拝読した当初、事務所に電突しようかと思いましたが、現場作業の日々でやる気失せました。ブログの記事掲載で、私の意見表明といったところです。

<<批判はそのときでも遅くないと思います。
 山の世界では「野口健氏」という 悪 し き 前例があるので、「大半の人がエンターテイメントとしてとらえている」のは事実だとしても、それが登山の本流だとは思われたくないと考えています。

<<問題はNHKが情報のチェックをせずに流したことが一番だとは思いますが。

 文中で引用した自分自身のブログ記事もそうですが、どうにもメディアの取り上げ方に疑問を持っておりますので、むしろNHKの姿勢に重きをおいたつもりだったのですが・・・ちょっと通りますよ様にもその点ご理解いただけたとすれば幸いです。

投稿: 聖母峰 | 2010.01.19 22:20

ちょっと通りますよさんが、「なぜ本人に直接言わないの?」と仰ってますけど
既に多くの人が、栗城君のブログ等に、注意する書き込みを過去行っています。
ですが、そのたびに削除されたり掲載されないのだそうで。

つまり、確信犯的なんですね。

投稿: 通りすがり2 | 2010.10.03 23:56

re:通りすがり2様
 コメントありがとうございます。

 栗城氏の関わるサイトは、実はもう興味外で普段閲覧することもなくメディアから動向を伝え聞く程度なのですが、氏関連のサイトはそのような状況でしたか。

 栗城氏ご本人の心情を伺い知ることはできませんが、大昔やはりスポンサー付きの登山を経験した者として、どれだけ主体性もって登山されているんだろう・・と感じています。

投稿: 聖母峰 | 2010.10.04 22:15

最近の栗城氏の行動。

・シェルパが映ってる過去のビデオを全削除(単独を演じる為)
・酸素を吸った映像を削除(無酸素を演じる為)
・「実はアメリカ隊は登頂してなかったみたいです」とTwitterで発言。その後アメリカ隊から非難されて、読者に断りもなくそのTweetを削除。

その他多数。

投稿: 通ります | 2010.11.06 16:16

re:通ります様
 コメントありがとうございます。

 私がスポンサー付の登山を経験した年は、インマルサットという衛星電話が出始めの頃で、ほとんどの隊にとっては一度BC入りしたら、それは外界との連絡遮断を意味していました。

「人と感動を共有したい」でしたか、栗城氏のWebや動画を多用する手法は、ご本人か周囲の取り巻きの行為かは判断しかねますが、かえってご本人の首を絞めているようなイメージを受けてます。

 事の推移を見守りたいと思っていましたが、そのような価値すらあるのかどうか。日々の土木作業に追われている身としては、心奪われるような海外のクライマー達の成果を伝える情報に浸っていた方がいいようですね。

投稿: 聖母峰 | 2010.11.07 21:55

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