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アフガン侵攻前夜に暗躍した登山家たち

1979年12月。
あの旧ソ連軍によるアフガニスタン侵攻直前、ヒンズークシュ山脈アフガニスタン領内で秘密活動に従事した登山家達の存在が明らかになりました。


Война в Афганистане: воспоминания альпиниста(War in Afghanistan: Memories climber) by BBCロシア語版12/24

このネタは上記のようにBBCロシア語版で報道され、ロシアのクライミングサイトに転載され話題となっています。

 話は、ソ連軍が侵攻する数日前の1979年12月某日、ヒンズークシュ山脈にソ連軍空挺部隊67名を乗せたイリューシン76機が墜落したことから始まります。このイリューシン機には、ソ連軍の機密情報が入ったブリーフケースも搭載されていました。
 そして12月某日、当時アルマアタに住む登山家エレバン・イリンスキー(Ervand Ilinskij)のアパートの電話が鳴りました。
 電話はモスクワからの簡潔な内容で、標高6000mで活動できるチームを緊急に編成し、ドゥシャンベ空港に向けて出発できるようにとの要請でした。
 イリンスキー達は要請どおり出発の手はずを整え、現・タジキスタンのドゥシャンベ空港に赴きます。
 そこで手渡されたのは、救急用具と、銃でした。
  
 記事では次のような生々しい会話が明かされています。
 以下引用開始
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「私たちはどこに行く予定ですか?」 私はパイロットのひとりに尋ねました。
彼は理解しかねるように私を見て言いました。
「俺たちはカブールに行く予定だ!」

中略

空港に到着した際、他の将校と会った際に指示されました。
もし夜に誰かがノックして、ロシア語を話さなかったら警告無しに撃て、と。
「それは誰かを殺せということですか」私は聞きました。
回答はこうでした。
「これは戦争だ!」
そして私たちは重大な事態に直面していることを知りました。

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 以上引用おわり

56244 1979年、秘密活動に従事した当時のエレバン・イリンスキー氏

12月27日朝からヒンズークシュ山脈某所の標高4200m地点にヘリで降下したイリンスキー氏達は墜落機体の捜索活動を開始、山中で新年を迎えた1月1日、機密文書入りのケースを発見、翌日イリンスキー氏達はカザフスタンのアルマアタに帰されます。

 アルマアタに戻った際、イリンスキー氏らは軍の活動に従事したことで表彰されることをほのめかされますが、それが実現したのは30年後だった、という記事のオチがついています。
 この軍事活動に従事した・しないで年金の額が違ってくるらしく、後日イリンスキー氏らはロシア国防省に活動の事実の照会を求めましたが、証拠となる情報は残っていなかったとのこと。

56245
秘密活動中と思われるスナップ。
AK-47を抱えた姿の脇にピッケルが写っているのがなんとも奇異な光景である。

 ちなみにロシアのクライミングサイトでは、この記事は興味深い記事・・・・登山家が祖国の軍事活動に従事した英雄的行為・・・として語られています。

 おそらく日本なら、たとえば日本のクライマーがアフガンの山中で自衛隊の山岳活動のお手伝いをしたなんてことになったら、労山はじめ反体制的な方々が多い雰囲気の中で、国家に追随したろくでなしとして糾弾されていたところでしょう(冷笑)。

 この記事の主人公であるエレバン・イリンスキー(Ervand Ilinskij)氏は現ロシア登山界においては国家スポーツマスターという指導的立場にある重鎮であり、数々の8000m峰ロシア隊を引率、レーニン峰冬季初登などに関わった方です。

Iljinski_in
現在のエレバン・イリンスキー氏(Russianclimb.comのインタビュー記事より引用)

 当ブログでは掲載しておりませんでしたが、昨年はインドの大国化も要因の一つなのでしょうか、ドイツや中央アジア某国の陸軍が演習を兼ねて、インド軍と共同でインド領ヒマラヤの共同登山を行う記事を幾度か見かけました。
 また日本の山岳雑誌はなぜか全く取り上げることはありませんが、イタリアはじめヨーロッパ各国軍の山岳部隊がヨーロッパアルプスを背景に演習活動する様子がクライミングサイトに掲載されたりもしていました。

「平和あってこその登山」
などと、日本の一部団体の方はおっしゃいますが、現実は果たしてそうなのでしょうか?
登山家が戦地に赴き、軍事活動に従事し、それによって栄誉を求めるという現実。
この他、ロシアのクライミングサイトではロシア特殊部隊「スペツナズ」(79年のアフガン侵攻の際、カブール制圧で主役的な役割を果たした部隊)を登山団体がトレーニングしている記事も見受けられます。

平和だからこそ登山が出来る、などという発想は、実は平和でノンポリな日本の登山者だから出来る発想なのかもしれません。

2010年。
ヒマラヤ山脈を抱え、対外諸国と領土問題で火種を残すインドと中国が大国となりつつある今後10年、登山家達はいつまで『平和』という幻影の中で登山を続けられていられるのでしょうか。

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