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アルプスの山の娘

A 旧かなづかいに悩まされながらも、岩波文庫の『アルプスの山の娘(ハイヂ)』を、一月から二月にかけ、現場帰り、育児の合間の隙間時間を利用して読了。
副題に(ハイヂ)とあるように、皆様ご存じ「アルプスの少女ハイジ」の原作本である。訳は作家の野上弥生子。
野上弥生子のあとがきは昭和9年となっており、本人によれば初めて訳したのはそれから二十年前と書いてあることから、ハイジの物語は大正年間には日本に紹介されていることになる。

結論から書く。
いや良かった!
感動したっ!(小泉純一郎風)
物語は多くの善人で占められ、純朴なハイジという存在を軸に周囲の人間たちが変わっていく姿を通して、厚く神を信仰すること、人間としての生きる姿勢をさりげなく示唆している物語である。

夢枕某とかなんとかの最近の山岳小説もどきとか、新田次郎の極悪人が出てくる山岳小説ばっかり読んでる方は、ぜひ一度『アルプスの山の娘』を読んで心の洗濯してくださいまし。

 日本で放映されたアニメ番組『アルプスの少女ハイジ』は絶大な支持を受け、そのクォリティの高さは海外で放映された当時、日本製のアニメ番組と思われなかったという。
 私はこのアニメ番組に関してはあまり記憶に残ってないのだが(なぜならば当時裏番組が宇宙戦艦ヤマトだったから)、今回の「アルプスの山の娘」を読んでのサプライズは次の通り

 ○アルムじいさんの人生が詳しく語られている
 ○放牧の無い冬季、ペーターが学校に通う姿が描かれている
 ○物語の結末、自分の人生が残り少ないことを思ったアルムじいさん、クララの父は協議してクララ付けの医師にハイジの養父になってもらうことを決める。また医師もそのことを幸せに思うというハッピーエンド。

あとはだいたいアニメ版「アルプスの少女ハイジ」とほぼ同じ物語ですが、なんといっても冒頭に書いたように、クララの家の女中が意地悪な程度であとはだいたい登場人物は善人ばかり、純朴なハイジに感化されていく姿がとても美しい。

 話題は変わるが、ハイジは幾度も実写映画化されているが、あまり原作に忠実ではなくいろんなストーリーがあることが知られている。(詳細はハイジに関する日本のウェブサイトを検索してみてください。)
 昔私が見た海外で製作された実写版ハイジでは、なんとペーターが登場せず、クララは感動的な山羊の出産シーンを自分の眼で見ようとして立ち上がる・・・というストーリーでした。

 また日本の絵本「ハイジ」にも様々なバリエーションがあります。
 物語の終盤、ペーターがハイジとクララの仲に嫉妬し、クララの車椅子を谷底に蹴飛ばして壊してしまいます。
 日本の絵本によっては、最後のページ、クララが立ち上がり皆が喜んでいるすみっこで、木陰から陰気な表情で皆の喜ぶ姿を見ているという「最後までペーターは悪役」で終わる絵本もあったりします。

 「アルプスの山の娘」では、車椅子が壊されたことが村人に知れ、警察沙汰になりかけたところ、初めから全てお見通しのアルムじいさんとクララのおばあさんの機転で巧く解決、ペーターが改心していく姿が道徳的な教訓として描かれています。

 この本の中でとっておきの言葉

 ※初めてアルプスの山に連れられ、夕日に輝くアルプスの山々に驚いたハイジの質問に対して

 『ぢや、あの牧場だの、岩山だのが急に火事みたいになるのは。』
 『それはおひさまが山々に「さよなら」をするのだ。』
 おぢいさんは申しました。『さうして明日また来てやるといふ約束のために、お日様の一番美しい光線を投げかけてやるのだ。』

 ※クララとクララのおばあさんがアルプスにやってきて野外で食事をとる場面で

 アルムをぢさんは言いました。
 『山の空気というものは、台所の不足をおぎなつてくれますからねえ。』

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コメント

>>『山の空気というものは、台所の不足をおぎなつてくれますからねえ。』

とはいえ、山羊のチーズはドイツ料理店でつまみに食べてみましたが、強烈に臭かった!。
スイスではチーズを焼くことはあまりないそうです。そのまま食べるのが普通。
酸味のあるライ麦パンは固いけど味は良いです。バターこてこて塗りはパス。

昔読んだ本では、夢遊病になってお屋敷を徘徊するハイジがかわいそうでしたね。
サウンド・オブ・ミュージックのアルプスのほうが私には憧れの山。

投稿: かも | 2010.02.17 11:15

なんで"め"が消えてるんだろ?
すいません、かもめですぇ。

投稿: かもめ | 2010.02.17 21:00

re:かもめ様
 早速のコメントありがとうございます。
 ほー、山羊のチーズはそうでしたか・・・

<<酸味のあるライ麦パンは固いけど味は良いです。バターこてこて塗りはパス。
 旧ソ連領の山に登りに行った方(世界中旅したタフな方)が、「ロシアの黒パンは駄目だった~」と語っていたのでヨーロッパ圏の「黒パン」って興味津々なのです。
 給食やスーパーで売っている黒糖の黒パンしか知らない私は幸せでしょうか(笑)

 おそらく原作にほぼ近いであろう野上弥生子訳本でも、ハイジがクララの家で早々に「夢遊病」になってしまいます。

 サウンド・オブ・ミュージックもいいですね。
 修道女たちがナチスドイツの軍用車の部品かっぱらう場面が好きです。

投稿: 聖母峰 | 2010.02.20 00:14

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