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【映画】 誓いの休暇

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 映画の冒頭、息子を想い広大なロシアの麦畑にたたずむ母親。

※以下の記事にはネタバレが含まれます。

 先日の蔵王雪崩遭難事故現場の調査結果について、新庄防災研の阿部先生のお計らいで日本雪氷学会東北支部で発表する機会にお声をかけていただいたのだが、あいにく本日は現場作業。
 某現場にダンプで砂利を運び、夕方、会社を退出した時にガイドの師匠から電話。無事発表が終わったと連絡を頂戴する。
 師匠からの電話を受けながら、視線は夕暮れの蔵王連峰前衛峰、龍山。

 こういうときは気分転換だね。
 カミさんに電話を入れ、映画観て帰るので先に寝てろと指示。
 家庭団欒より、生活費稼ぐ俺様の気晴らしが優先なのだ。

 本日の映画は、フォーラム山形が「ロシア文学映画館シリーズ」と銘打って一日だけのリバイバル上映、旧ソ連映画(1959年)の『誓いの休暇』。
 映画館内では特別に
 Pa0_0000 ピロシキの販売もあったりする。ピロシキ好きの私はもちろん購入。

 さて『誓いの休暇』。
 ストーリーは冒頭に主人公アリョーシャの死を悼む母親の光景から始まり、母親の知らない息子の体験をふり返る形式で映画は展開する。
 第二次世界大戦、独ソ線の最前線で偶然に功績をたてた19歳の通信兵アリョーシャは「母親に会いたい」と指揮官に願い出て、往路2日、実家滞在2日、復路2日の計6日間の休暇を与えられる。
 しかし優しいアリョーシャは旅の途中に出会った兵士の預かり物、傷痍兵の付き添い、密航した貨車で出会った少女との淡い恋など、様々な出来事で時間を費やしてしまう。

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 アリョーシャと少女との別れ。故郷への道はまだ遠い。

 ようやく母親と会えた時には、もう既に時間はなく、抱き合うだけの時間しか残されていなかった。
 そしてアリョーシャは車に乗り込み、広大な麦畑の彼方へと消えていく。
 アリョーシャが戦場から戻らなかったことを示唆するナレーションで映画は終わる。

 映画上映後、山形大学の中村唯史准教授の解説がある。
 中村准教授のお話では、この『誓いの休暇』は日本はもちろん、ソ連内で大ヒットした映画で現在もロシアの40代以上の人間にアンケートをとればまずベスト3に入る映画だという。
 この映画の中では缶詰の賄賂を受け取る兵士や下ネタに興じる兵士、出征中の兵士の妻が不倫している場面などが盛り込まれているのだが、旧ソ連の映画でこのような光景が盛り込まれるのは画期的なことなのだそうだ。この映画が制作された背景として、フルシチョフによる「スターリン批判」によるいわゆる「雪解け」時代の影響が大きいという。私のような門外漢はさっぱり気が付かないが、監督はウクライナ出身、登場人物たちもウクライナ・ロシア南部訛りの強いロシア語を話している。独ソ戦で激戦地となったウクライナ地方を取り上げた演出である。

 私自身はこの映画の存在は小学生の頃から知っていたが、視る機会に恵まれなかった。
 現在、出張続きの身でわずか15分しか子供の顔を見ることが出来ずに次の出張に出かけたときは「誓いの休暇みたいだな」と自嘲したものだったが、肝心の作品を今日まで視ていなかった。
 
 サイトによっては反戦映画と呼ばれ、ストーリーを紹介しただけでは悲劇的な映画に思われるが、実際に映画を見た感想は、全く異なる。
 誤解を招くかも知れないが、最後に主人公アリョーシャが母親の元から去っていく場面では悲しみと共に清涼感に似た感情を覚えた。
 全編を通じ、出会う人々を通してロシア人の強い家族愛を見た。途中に盛り込まれる、傷痍兵の妻への疑惑、出征中の兵士の妻の不倫などのエピソードは、アリョーシャにとって家族という絆を引き立てるスパイス役にすぎない。
 映画全編を通じて、血飛び肉裂ける残虐な場面は無い。
 静かな意志をもって、人々の悲しみを伝える映画である。

 カティンの森で大虐殺を行い、中国東北部では日ソ不可侵条約を破って日本女性をレイプしまっくた露助どもではあるが、第二次世界大戦において最も戦死者、非戦闘員の死者が多かったのは旧ソ連である。その旧ソ連において、その馬鹿げた左翼思想のプロパガンダを微塵も匂わせない素晴らしい映画が作られていたことを知ったのも、今夜の収穫の一つであった。

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