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ずぶぬれ

 蔵王連峰の後烏帽子岳~前烏帽子岳をガイド。

 どっかの登攀ガイドのセンセイみたいに御立派な事だけ書きたくないので正直に書くが、後烏帽子頂上に迫りながら頂上標識のあるピークを見つけることができず、しばらく右往左往の後、ハイ松の陰に隠れたピークに到達。

 さらに稜線を進んだ前烏帽子岳からの下山では、予定よりルートが西にそれた。高度計と地図・コンパス、周囲の地形をにらみながら、夏道があるはずの方向に向かう。
 夏道に合流するまで、引率するクライアント達に藪こぎを強いる結果となる。

 残雪期の山。
 採算無視して(「個人事業主としての山岳ガイド」を意識するため、ガイド山行では自分の山行とは別個に必要経費を記録している)残雪状況の確認、ルート目印の赤布を加えるため偵察は二度行ったがこのていたらく。
 自分自身が残したトレースはここ数日の高温で消え去り、カモシカの足跡が融けた所が人間の足跡にも似て、紛らわしい。

 本日引率したクライアントは18名。登山道に合流後、
「こうして夏道を探し出すなんて、ガイドさんも大変ですよね」
 とか、
「ガイドさん、時間どおりに下山できましたよ」
 と言ってくれる方もいらっしゃったが、クライアントに予定外の負担を与えたことに変わりはない。
 なによりルートを探し出すことに気を取られ、クライアントにきめ細かい言葉によるフォローが足りなかったのではないか。

 下山路が心地よい早春の登山道であるだけに、後悔の念ばかりが募る。
 最後の徒渉。
 飛び石づたいに渡れるはずの沢。
 偵察山行よりも明らかに増水している。
 私はスネまで雪解けの川に浸かり、クライアント達に手を貸して渡る手助け。
 春秋シーズンに愛用しているアークテリクスのパンツは濡れにも強く乾きも早いが、私のメンタル面は靴下みたいにズブズブです。
 いや、最後まで気を抜くな、と内心自分を叱咤し、バスが待つ駐車帯に至るまで、車道横断するクライアントのため車道の安全確認。

 クライアント達、お世話になった添乗のHさんが乗るバスを笑顔で見送る。

Pa0_0982
徒渉でずぶぬれの靴。よく働いてくれました。

 解散地からの移動の車中で、本日の反省点をふりかえる。
 失敗をフィードバックするという作業。
 私のような事実上フリーのガイドとしては、自分で自分を叱咤するしかない。
 バ勝間勝代を信奉する某女性登山家のような優秀な社会人ではないので、私の場合、失敗を糧にするという行為には苦痛を伴う。
 厳密には、ガイドの師匠のように「それでも8000m峰に行った人間か」と罵倒叱ってくれる人はいるのだが、いい加減卒業しなければならない歳と立場である。
 あらためて、フリーで自活している某山岳ライター氏はストイックだなあ・・・と思う頃、青根温泉に到着。
 青根温泉で入浴、コンビニでとびきり甘い缶コーヒーとパンでエネルギー補充、ガーナそしてアフリカ独立の父といわれるエンクルマの自伝を少し読んで休憩。

 本日はまっすぐ帰宅せず、ガイドのオファーをいただいている某山の登山口を確認すべく、とある林道に車を走らせる。
 林道は途中で大きな崖崩れのため進入不能。

 伏流水の多い林道だった。

 Pa0_0981
 水の流れのそばに、大輪のカタクリ。
 もう日没も近い、誰もいない荒れた林道で車のエンジンを止め、カタクリを眺めながら今日のガイドをふりかえった。

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コメント

いい、ガイドさんだぁ…

投稿: は。 | 2010.05.07 20:53

re: は。様
 いえいえ、あまりに反省の多い山行でして。
 自分たちの山行なら笑って許される失敗も、それぞれの想いがあって参加されているガイド山行の参加者には一度きりの山行ですからね。

 ガイドは「山」以上に「人」が好きでなければならないと痛感した一日でした。

投稿: 聖母峰 | 2010.05.09 07:25

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