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平成20年度 自然生態系保全モニタリング調査報告書

 私がガイドトークを組み立てる上で「主に」参考にしているのは、山形県の山岳地域のほぼ全域をカバーしている山形県学術調査委員会発行の学術報告書である。
 通常の登山ガイドブックに書いてある事項は、熱心な登山者であればたいてい知っている事であるし、何より調査で実証された数字・史実を把握しておきたい。
 最近、氷河研究で知られる土屋巌氏が「推定」した鳥海山の年間降水量「12000mm」という数字が一人歩きし、地元の観光業関係者や一般登山者のブログなとで、さも確実な数値であるかのように語られているのを散見するが、そのような姿勢を私は好まない。

 さて、その山形県の学術調査が実施されたのは昭和50年代以降、山岳地をとりまく環境も調査から数十年経過して大きく変化(悪化)している。
 その追跡調査ともいうべき意味合いで実施されたのが、表題の調査および報告書である。
 収録内容は、
 ◎自然環境調査報告
  月山地域、朝日地域、蔵王地域、御所山地域
 ◎希少野生生物保全調査報告
  白鷹湖沼群、東根市内草原、ジャガラモガラ
 という内容である。

 月山地域は今や「幻の登山道」といえる『横道』、朝日地域では鳥原小屋周辺の湿原地について調査が行われている。
 調査内容をわかりやすくいえば、先に行われた山形県の学術調査以来、希少植物の植生についてその変化が確認されている。
 特筆すべきは、蔵王地域における高山植物の盗掘の実態であろう。盗掘現場の位置・状況について突っ込んだ分析が行われ、「悪質」の一言につきる現実を突きつけられる。

 また環境保全活動の成功例として、天童市のジャガラモガラが挙げられている。記載は半ページほどであるが、保全活動が成功した理由が箇条書きに記され、特に地元住民に科学的に環境保全を捉え推進できる人物がいたことが挙げられている。
 
 環境保全・保護活動といえば、ときおり狂信的・情緒的な環境保護論者が暗躍している例が見受けられるのだが、ジャガラモガラの記載事例はある意味興味深い。

 発行元は山形県環境科学研究センター、2009年3月発行。
 山形県立図書館で閲覧可能。

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コメント

現在、2015年12月。

ところで、土屋巌博士ですが、まだ存命でしょうか?
土屋巌博士は60歳代前半、南方の香川県の香川大学農学部で2~3年教授を勤めました。

その折、大学院修士課程で2年間御指導を賜った者です。反抗し、修了は出来ませんでした。若気の至。

『気象』誌に載ったのだと思うけど、鳥海山の年間降水量の論文の骨子は、それまで観測地と観測地の間のアメダスデータは平均値で求められていたのを、地理的データ(標高)を考慮に入れて求めるべきだということを言いたかったのだと思います。(つまり、山地の降水量は地点間の平均値で求めたものよりべらぼうに高くなる。)

土屋先生まだ元気かな?小柄なにこにこした先生。
不肖の弟子をどう思ってるかな?

投稿: 山口弘貴 | 2015.12.26 23:18

まだ書かせて下さい。土屋先生つながりで。

おれ、精神障害者なんだ。大学院中退で精神を壊し、いま障害者枠で働いています。結婚は出来ませんでした。岡山の生まれた街に帰り、

東北には行った事はありません。大学院時代にしていた山登りは止めました。

今、50歳。

ところで、土屋先生は、氷河研究で80年代、『地球は寒くなるか』という御著書で極地は寒くなるが赤道地点などはそうでもないと書いていた。今、温室効果で温かくなっているのは周知のこと。極視的なデータに従うとこういうことになるのは鳥海山の降水量も同じ。これは失敗やな。

投稿: 山口弘貴 | 2015.12.26 23:31

re:山口様

コメントありがとうございます。

<<まだ存命でしょうか?

 勤務先の雪氷学会員に聞いてまわってみました。
 私たちも土屋先生と直接つながりがあるわけではありませんので、正確な御消息まではわかりかねました。
 大変失礼な書き方になってしまいますが、お亡くなりになったという知らせも聞いておりませんので、私たちの知る範囲ではまだご健在と思われます。

<<『気象』誌に載ったのだと思うけど、
そうですね、私が拝読した「鳥海山の降水量12000mmの論文」をあらためて確認してみましたが、山口様のお名前も記されてましたね。

<<鳥海山の年間降水量の論文の骨子は、
 ご教示ありがとうございます。
 私としては土屋先生が論文で示した「可能性」をまっこうから否定する意図はなく、鳥海山のPRに降水量12000mm、ものによっては18000mmという数字が一人歩きしている現状がありまして、こんな記事を書いてました。ご理解いただければと思います。

<<極視的なデータに従うとこういうことになるのは
 私小さい頃は子供向け科学雑誌で散々『氷河期が来る!』という記事に脅かされた世代でして・・・その反動で、地質学的タイムスールでみると「温暖化」もどうなんだかなあと感じるところはあります。
 そうは言っても、こちら山形市は昨日、観測史上最も遅い初積雪を記録しました。

 山口様もどうぞお体に気をつけて、良い年末年始をお迎え下さい。

投稿: 聖母峰 | 2015.12.28 16:27

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