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帰ってきた男

ピーター・ハケット。
80年代から、真摯に高所登山に取り組んできた方ならご記憶の名前でしょう。
『高山病 ふせぎ方・なおし方』という新書版の薄い本の著者であります。
また医師にしてクライマー、1981年のアメリカン・メディカル・エベレスト登山隊(医療関係者を中心として高所医学の研究をも目的としたアメリカのエベレスト登山隊)での活躍で知られています。

High Altitude Doc Peter Hackett Returns from Everest by The Watch 2010.6.24

Hackett3
2010年春、エベレストBCで凍傷治療にあたるピーター・ハケット氏。

 そのピーター・ハケット氏が、数年前から高所登山に「効く」とされているバイアグラの治験、そしてエベレストを訪れる数多くの登山者の治療に活躍しているという記事です。
 もともと自身もクライマーであるハケット氏、つい先日までアイゼンも履いた経験が無いインドの少女がエベレストに挑む現実に呆れながら、バイアグラの効果を巡る実験、またボランティアとしてエベレストBCで負傷した登山者の治療にあたる姿が記事に描かれています。
 ハケット氏いわく、
 『The real climbers are not doing Everest anymore
 (真のクライマーにとって、エベレストでやることなど何もない)
 とは、自身のクライマーとしてのコメントでしょう。同様の趣旨の言葉は、既に30年近くも前、池田常道大先生も「岩と雪」とかいう外国登山隊崇拝プロパガンダ雑誌の後書きに書いているのですが。

 話題は変わりますが、ハケット氏が参加した1981年のアメリカン・メディカル・エベレスト登山隊のメンバーが、英語の授業の視察団としてやってきたのが、偶然にも私の高校、そして私がいたクラス。
 退屈で大嫌いな英語の授業に、突然やってきたアメリカ人女性がエベレストに行ったことがある、と話出し、黒板にエベレスト南面のルート図・キャンプ配置図を書き出したのを今でも覚えています。
 なぜ日本の、ド田舎の山形の高校の、しかも自分のクラスに、知る人ぞ知るアメリカン・メディカル・エベレスト登山隊の隊員が!?
 当時の私は高校山岳部に在籍していましたが、体力が無くて蔵王もろくに登れず、同期の仲間からも相手にされない部員でした。
 本でしか知らないヒマラヤ、エベレストの世界、その世界に足を踏み入れた登山家が目の前にいるってのは、英語もろくにできない、山岳部の部活もろくにできないおちこぼれを刺激するには十分な理由付け。
 世界最高峰を目指す過程ではいろんな人の存在に刺激を受けましたが、この偶然の巡り合わせほど、運命的なものを感じた瞬間はありません。

 それからウン十年、世界最高峰を目指した自分は今や単なる土木作業員ですが、今もなお医療の現場・最前線において活躍中のピーター・ハケット氏には、あらためて尊敬の念を抱きます。

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