ペンタゴン、高山病治療薬開発に資金提供
アメリカ国防総省が高山病の治療薬開発のため、470万ドルの資金提供を行っているとのこと。
Пентагон выделил $4,7 млн на создание лекарства от высотной болезни by Rosbalt.ru2010.8.7
このネタを知ったのは上記のロシアのメディアですが、検索すれば英字メディアでも報じています。
ウェブサイトPopular Scienceによれば、アメリカ国防総省、正確には DARPA の名称で知られる米国防高等研究計画局が絡んでいるようです。
資金提供を受けているのはオハイオ州のケース・ウェスタン・リザーブ大学。ノーベル生理学・医学賞受賞者を8名も輩出しているハイレベルな研究機関。提供されたといわれる470万ドルは日本円に換算して約4億円、新薬開発に必要とされる一般的なコストは200~300億円と言われていますが、もともと循環器系に関しては全米一といわれるケース・ウェスタン・リザーブ大学にとっては有益な援助でしょう。
勘のいい方はおわかりのように、高所山岳地帯の多いアフガニスタンにおけるアメリカ軍の軍事活動に役立てることが新薬開発の背景にあります。報道によれば既に動物実験に入り、3年後には人体による試験を予定しているとのこと。将来的には民生用として登山などに利用されるだろうと記事は締めくくっています。
あらためてテクノロジーの開発を促進するのは「戦争」である現実を知らされます。
ま、労山あたりの「軍靴の音が聞こえる」とかいう耳の調子のおかしい方にとっては癪に触る話題でしょうが、登山用品の発達史をふりかえってみれば軍事技術の民間転用→登山用品という流れはありふれているのが現状ですね。
金とヒマもてあました爺婆が8000m峰で使用している酸素ボンベ用具一式自体、ロシアのミグ戦闘機の技術が転用されているのはよく知られている事実です。
高山病の画期的な治療薬なんてのが完成したら、アメリカ軍以上に欲しがるのはチェチェンはじめ多くの山岳戦闘地域を抱えるロシア、そしてカシミール紛争で昔から高度障害で何人もの兵士が命を落としているインド・パキスタンでしょう。
民間利用が可能になったら、昔はダイアモックス、今はバイアグラが盛んに利用されている高所登山のマーケットに流れるんでしょうかね。メスナー爺さんが唱えた「フェアな登山」なんてのは、今後ますます遠ざかる予感がします。
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コメント
ペツル等の主要クライミングギアメーカーも、売り上げのほとんどが軍事向けです。最近ではカタログにも堂々と軍事向けの製品が掲載されています。
投稿: えのきど。 | 2010.08.08 19:16
re:えのきど。様
ご教示ありがとうございます。
海外メーカーの日本向けのカタログで「レスキュー機関が利用」とはよくPRされているのは拝見しますが、軍用という言葉はあまり見聞きしませんでしたね。
売り上げという点は不勉強ながら知りませんでした。メーカーの現地サイト等もっとよく注目してみたいと思います。また機会ありましたらコメントいただければ幸いです。
ツイッター、英語の話題も含め楽しく拝読しております。英国滞在はしばらく続きますでしょうか。日本はとにかく猛暑続きです。どうぞお体には気を付けて。
投稿: 聖母峰 | 2010.08.09 21:58
Twitterまで見ていただき恐縮です。期間は決めておりませんが、軍資金が尽きるまでは勉強しながら滞在予定です。
こちらは、イギリスのクライミングギアメーカー・DMM のカタログですが、明確に"Military"と記載されています。
http://twitpic.com/2d63xt
日本の場合は、担当者から聞いたところでは、消防等のレスキュー関連が、売り上げでは圧倒的に多いようです。クライミングでは雀の涙程度の売り上げしかないと、以前に伺った気がします。
投稿: えのきど。 | 2010.08.10 03:08