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ポスト=キム・ジャイン、ハン・スラン

キム・ジャインに続く韓国の女性クライマーとして、10代のハン・スランが注目されています。

以下引用開始
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限界!それを楽しめれば最高になる by 月刊 人と山2010年10月号

韓国スポーツクライミング界を導く次世代女性クライマー

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 韓国 の「少女時代」「KARA」たちのパワーが恐ろしい。
 10代のファンは無論、中年男性の支持を受けて音楽チャートを席巻したにも飽きたらず、海の向こうの日本人ファンの心を一瞬にしてとらえたからだ。彼女たちの影響力がいかに大きいか示す例が、保守的に有名な NHKの看板ニュース「News Watch 9」が『第2の韓流ブーム』というタイトルで彼女らの活動状況を 7分間報道したのだ。
 朝日新聞もこんな韓国女性グループの爆発的人気の秘訣を、実力を基本とした多様性、パワフルでエネルギーにあふれるパフォーマンスと説明した。

 韓国の10代達の善戦は今日だけの事ではない。去るバンクーバー冬季五輪を通じて、楽しむ者の強靭さを強く印象づけたG世代(1988年ソウルオリンピック前後に生まれた、グローバル世代)のパワーを、私たちははっきり見守ったからだ。

 こんな視点で見れば、韓国スポーツクライミング界も同様だ。代表的な例が、去る春川ワールドカップリード部門で優勝を占め、今後数年間は敵なしといわれるキム・ジャイン選手だ。そしてその後にひかえる一人の10代のクライマーがいる。ハン・スラン(19歳,崇実大学校)だ。

H2

無心になると遠いホールドが掴めた

「こんにちは、スランです。」
9月 8日、短いスカート姿にリュック代わりにタイヤがついた旅行用ケースをひいて現われた彼女に鷹峰山岩壁登山公園で会った。
 そんなハン・スランがクライマーに変身したのはトイレで服を着替えた後だった。そして舞台に上がる前の歌手が首をリラックスさせるようにストレッチを終えた彼女は、人がいないルートを選んでクライミングを始めた。
 軽快なダンスをするような彼女のムーブは、愉快なダンス歌手の律動のようにさわやかだった。しかしこのために彼女の流した汗は、言葉では表現することができない。その過去の物語のスタートは今から 5年前である。

 ハン・スランは幼い頃から自由な精神とハートを持った子供だった。彼女の自由奔放でまっすぐな性格は安定した水平の世界よりも垂直の壁を登るのに適していた。これを裏付けるエピソードがある。
 小学校にちょうど入学した頃、スランはイベントに参加して人工壁に初めて触れた。一番高く登った参加者が景品をもらうイベントだったが、彼女はこの時頑張って人工壁を登りきった。景品に目がくらんだわけでもなく、高さと墜落に対する恐ろしさがなくもなかった。ただ競争相手である兄よりもっと高く登りたいという意欲がすべてをさしおいてクライミングに集中したのだ。

 このように生まれつきの垂直志向を示した彼女の性格は、イベント行事という気軽さの陰に忘れ去られるところだった。しかし、水面下で眠っていたクライミングの本能が眠りを覚ましたのは 2005年、高校山岳部出身である父親とともに水原クライミングセンターをたずねてからだ。この時からスランはクライマーの卵として楽しい遊びのようなクライミングを栄養にして、すくすくと成長した。

 水を得た魚となった彼女は、クライミングの実力が伸びるとすぐに親善ボルダリングコンペに出場、好成績をおさめ、クライミング全国大会を見学しながら、選手として出場する夢をいつしか育てていった。 そんなある日、「クライミングコンペに一度出てみては?」彼女のずばぬけた実力を見抜いたチョ・ギョンア氏の提案に、彼女の返事は“Yes!”であった。 そのように始めた選手生活が今ちょうど5年目をむかえた。

「 2005年秋、安養で開催されたスポーツクライミング大会中等部に初出場して以来、私より年少の大邱のカン・ボラにスーパーファイナルで毎回負けてました。理由を考えてみたら、ボラが私より果敢でもっとパワーがあったんです。それで手足がもっと長かったらホールドを易しく取ることができるのにって思ったんです(笑)。でも他に方法ないでしょ。能力不足を満たすためにはクライミングをもっと楽しむしかありません。」

 そして中学校 3年生になったスランは、優勝圏内にいるものの一度も表彰台の一番高い場所に上がることができなかった。優勝に対する望みを抱いてその年秋のソウル市大会に参加した。しかし今回も優勝を目指す状況にはなかった。何故ならば指の負傷にあう前まで中等部最強といわれたハンナ・ソン選手が 1年ぶりにこの大会で復帰、毎度自分を破っていたカン・ボラさんも並大抵の強さではなかった。
 
 しかし気後れして解決される問題ではない。かといって前向きに力んでも結果がみえないその瞬間、スランは ‘ユーレカ(わかった)’を叫んだ。
「落ちてもいいんじゃない。気負わず楽しみながらやってみよう。」

 無心の境地に立ったのだ。すると緊張された筋肉はほぐれ、今まで弱点として指摘されていた遠いホールドにも手が届き始めた.
「あまりにも不思議でした。つかめなかったホールドが手につかめる感覚は…,何とも言葉で表現しにくい位だったからです。」

 このように堰を切って水が落ちるように彼女は2006年の各種大会中等部の優勝をほとんど総なめにしたのに次いで、2007年高等部優勝にまでつながった。この時彼女のクライミングに最大の影響を与えた人が、ソン・サンウォンの後を引き継ぐといわれるまでに急成長したミン・ヒョンビン選手だ。
「クライミングチームのお兄さんたちと一緒に登ってましたが、特にヒョンビン兄さんに多くの手助けを受けました。弾力を利用したクライミングが私に必要だったようです。そして無理やり登るより楽しみながらすることが大きく役に立ったんです。」

H3

一般部優勝をかちとる

 2008年はハン・スランの年だった。第7回アジアユースクライミングチャンピオンシップで 2位、ソウル市大会では一般部に参加して優勝、キム・ジャインに続く次世代女性クライマーに急成長した。しかし彼女にとってジャインは相変らず大きい壁であると同時に「手本」でもあった。
 実力が及ばないことはわかっていながらも、ジャインが登攀したルートは 10回も 100回も挑戦してとうとうムーブを解くと気が済んだ。
「クライミング意欲は私の方がちょっと多いように思います。段階を踏まなければならないということは分かってますけど、目標が決まらないとムーブがわかりませんから。」
 そのためだろう、クライミングの力は急上昇し、機会ある度に一般部競技に参加、優勝圏に入り「新しい強者」という印象を人々に刻んだ。

 しかし成長期にあった彼女の身体に無理が来た。2008年冬、新しいステップを目指して高強度のトレーニング中に中指を負傷する。これにより翌年シーズン初めの大会を逃した彼女は、気を取り直して光州で開かれた「全国スポーツクライミング大会」女性一般部難易度 3位に輝いたことを皮切りに 2009年春川で開かれた「第18回アジアチャンピオンシップ」 リード競技部門で 2位に上がった。.
 その年の冬、トレーニング中に再び肩を負傷、6ヶ月間リハビリ治療に専念するしかなかった。これが終りではなかった。肩がほとんど完治する頃、ボルダリングをしている最中にまた足を負傷したのだ。泣き面に蜂だった.
「あまりにも激しく痛みました。他の友達が体を動かしているのを見ていて涙が出ました。私もあれをしていなければならないという思いで。悪い事がどうして私にだけ重なって来るのか理解ができなかったんです。」

 この時期スランは待つことを学んだと言う。難しい試練と思い、この峠さえ突破すれば新しい世界が開かれると信じて待った。幸いに身体は急速に回復し、8ヶ月ぶりにまたホールドを手にすることができた。
 
 こんなハン・スランが、去る 9月 11~12日に開催されたソウル市大会で完璧な復活を遂げた。世界最強の地位を固めたキム・ジャインとスーパーファイナルまで行く闘いを展開、惜しくも 2位となったのだ.
「リハビリはとてもうんざりしましたが、実際に決勝戦でジャイン姉さんと一緒に登って二位だからとても気持ちが良かったです。それまでの不運がいっぺんに吹き飛んだようです。」

 半日のクライミングを終えた彼女が、短いワンピースに着替えて現われた。クライミングの本質に対する質問を投げかけた。
「今年がクライミングを始めてから 5年目です。クライミングは大変だけど面白いです。まだクライミングの深い意味は分からないけど、10年くらいたつと分かることができるのではと思います。その時なら、ジャイン姉さんのように世界の頂点に立つ自信もあります。」

「努力ばかりする者は、楽しむ者には歯が立たない」
面白く楽しんで、自分の力量を上げていくというハン・スランは、韓国女性歌手グループの日本での活躍のように世界に向けた彼女の活躍はこれからが始まりだ。

 しかしそんなスランが不安に思うこともある。
 それは恐ろしい勢いで追いかけてくる後輩たちだ。
「サ・ソルが密かに気になります。私より手足が長 くて遠いホールドをよく取るんですよ(笑)。でも私も一生懸命やってますから、楽しく競おうと思います。」

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以上引用おわり

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