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横山勝丘講演会『10代でアルパインやりたい人がいれば、ぜひ大学山岳部に入り給え。』

12月15日夜、セックスと暴力に彩られた街、仙台へ。
パタゴニア仙台支社で開催の横山勝丘氏講演会『糸 岩、山、人』を聴講するのが目的である。

横山氏の講演については、一昨年やはりパタゴニア仙台支社で開催された講演を聴講した。氏の講演は、通常の遠征登山報告にありがちな時系列に沿った「報告」にとどまらず、心象を深くえぐったような講演で、非常に印象に残るものでした。今回の講演も素晴らしいものに違いないと確信し、講演参加の予約をいれておいた。

 なおパタゴニア日本支社で開催された横山氏の講演『糸 岩、山、人』については、ブログ『雪山大好きっ娘。』のえのきど。さんが非常によくまとめられており、内容につきましてはぜひこちらを参照ください。

参考記事:ブログ『雪山大好きっ娘。』
横山勝丘講演会・「糸 ~岩、山、人~ 北米クライミングトリップ14ヶ月の記録」

以下に記すのは、私が特に印象に残った部分と、質疑応答です。
(太文字強調は特に印象に残った言葉)
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生い立ちから
 六人兄弟の末っ子として育った。
 家にテレビが無く、テレビに興味もなく、自分のやりたいことを自分で見つけてやっていた。
 その子供の頃から趣味は二つあった。それが相撲、登山。

 何で山だったのか?
 尾根を歩いていて、その先に何があるのか?というワクワク感、不安。
 登山の魅力について、後付で魅力を語ったとしても、少年時代のドキドキ・ワクワク感にはかなわない。

信州大学時代
 年間200日以上は山に入った。一回の山行で30日くらい入っていた。ここでアルパインに必要なことを学んだ。
 それ以上に仲間を得たこと。ソロで登ることはない。

遠征クライミング
 アラスカはヒマラヤより経費が安い。とにかくクライミングしたくて仕方がない。
 やればやるほど、やりたいことが増えてくる。これもパートナーに出会ったおかげ。

 08年、アラスカ・デナリで山田・井上を失った。07年には明神岳でグランドフォールし、剣では雪崩に流された。
 世を去った人間と、生きている自分の差は何か、考えた。
 答えは出なかった。次に考えたのは、(亡くなった)彼らのためというより、自分のため、やりたいことをやるべきではと考えた。それが北米クライミングトリップの理由の一つ。

北米クライミングトリップ
 14ヶ月間、トイレ以外は、常に誰かといた。
 (旅を共にした)妻は頼れる存在。
 様々な人間と出会い、山中だけにいては経験できないことを経験してきた。
 アメリカ山岳会主催のインターナショナル・クライマーズ・ミーティングに参加。
 ジム・ドニーニと出会い、アメリカの誇れる岩場(これがアメリカのクライミングだといえる場所)としてヨセミテ、インディアンクリークを挙げていた。
 訪れたアメリカ、カナダでは自分たちの岩場を誇らしく話す。それがクライミング「文化」ではないか。

ローガン南東壁
 「Alpinist」誌のクリスチャン・ベックウィズと会った際、勧められたのがローガン南東壁。
 同壁を前々から狙っているジャック・タックルとは以前からの知り合い。55歳、高い情熱と実践力を備える。自分の口から「ローガン南東壁」と出た瞬間、ジャックの目つきが変わり、「あれは俺の壁だ」と言われた。

 高所順応に8日間かけた。
 大自然の中に三人だけでいるという満足の一方、不安で不安で仕様がなかった。あれ(南東壁)を登に行かなければならないというプレッシャー。
 昼間は共同の食テンで過ごすが、夜間、各人の個人テントで寝るときのいやな感じ。

ここで横山氏は、講演の話をストップする形で会場の聴衆に質問を投げかけた。
「この中でアルパインクライミングやっている方?」
会場はアルパインクライミング未経験者が大部分だった。
「では、これまでの話を聴いて、アルパインやってみたい方?」
何人かが挙手し、横山氏は重ねてたずねた。
「どういうところに興味がありますか?」
聴衆のAさん「大自然の中で、頂上まで登ってみたいです」
横山氏「アルパインなんかやらねえ、という方?」
誰も手を挙げず。
横山氏「みなさん遠慮してません?」
続けて横山氏は語る。

 なぜアルパインなんかやっているのと言われるときがある。それに対して明確な答えを用意するのは難しい。仲間の存在はモチベーションになる。
 なぜ山に登るのか、その答えを示せないもどかしさはある。

 ローガン南東壁を抜けて稜線に出た後、頂上までの道のりは遠い。
 頂上を目指して歩いている途中、パートナーの岡田さんがついに戻ろうという。岡田さんは岡田さんなりに、考えがあって判断したと思う。(筆者注・このあたりの言い回しは非常に言葉を選んで状況をお話されていた。またそんなところに横山氏と岡田氏との強固なパートナーシップを感じる)
 下山のため、ザックをパッキング中に、ほんとうに無意識にため息が出た。
 そのため息を聞いた岡田さんが
「ジャンボ!(頂上に)行こう!このままじゃダメだ!」
 そこで(山に対する)モードが変わった。

 山は絶えず迷わせる。考えさせる。パートナーと議論させる。山は要求し、強いてくる。
 そのプロセスの先に、クライマーは何か特別な瞬間が得られるのではないか。
 それはアルパインでなくてもよい、自分がどれだけ本気になって問題に直面するか、ということ。

北米クライミングトリップを終えて
 クライミングの世界は狭いと思っていたが、「出会い」に支えられた14ヶ月間。
 クライミングは人と人をつなぐツールである。
 日本に来た海外のクライマーにも、いい経験をしてほしい。
 日本でも、自分を見かけることがあれば無視しないで声をかけていただければ、本日ここに来たかいがあったかなと思います。

質疑応答
 いつものごとく、真っ先に私が突撃質問。
 聴講の間、二つの質問を用意していた。
 一つは「信州大学で仲間を得られたとのことですが、今現在人がいないと言われる現状の大学山岳部についてコメント頂戴できれば幸いです。」
 もう一つは「過去何隊も敗退したローガン南東壁、過去の隊と横山氏ペアの違いは何か?」
 講演を聴き、「仲間」をメインテーマに語る横山氏に対してはローガンの成因など枝葉末節、ぜひ前者の質問を尋ねたいと判断、質問。
横山氏A.「(信州大学山岳部で)あそこでやっていれば、一流になれるぞ、と本心で思います。やはり長期で山に入ることは、社会人になったらできない。アルパインクライミングで重要なのは生活力。10代でアルパインやりたい人がいれば、ぜひ大学山岳部に入り給えと言いたいです。

Q.北米クライミングトリップで気になる、おさいふの方は・・・?
A.14ヶ月の旅で蓄えを使い果たし、無財です。今現在は山関係の仕事を少ししてますが、支出を減らすということも重要です。(ガイドはやらないのか?という声に対して)少し興味はあるが、はっきりとは考えていません。

Q.穂高でオススメのルートは?
A.夏ですか?冬ですか?
Q.夏冬通じて・・・
A.夏も冬も、質が高い錫杖岳です。アルパイン本気でやりたかったら、穂高のパチンコか剣・黒部、毎月錫杖登っていれば、世界の山でも登れると思います。

Q.今まで登山経験のない、30代から(アルパインを)ゼロから学ぶにはどうすればいいですか?
A.山は経験が重要です。フリーはジムで登り込めばいいが、山は経験が必要。山に入ることイコール危険なことが多い。山岳会に入ること、自分が何をしたいのか考え、仲間を見つけること。クライミングよりも山に入ること。あ、クライミングも両方大事ですよ。(筆者注・人工壁と実際山に入ってのクライミングの事か?)

Q.ローガン南東壁を登ったあと、ジャック・タックル氏の反応は?
A.登った後すぐメールを出し、本心から喜んでくれていました。(プレゼンで用いている)ローガン南東壁の写真はジャック・タックルが撮影したもので、使うときにはジャックの名前を入れるようにしています。「ローガンの歴史に加えてくれてありがとう」という礼がきました。
 ただ、ジャック・タックルには、非常に悔しい想いをしていてほしいと思っています。

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これだけ仲間のすばらしさを聞く・感じる山の講演というのは初めてである。
鬱気味の私も、元気をもらってJRでウイークリーマンションに帰った夜でした。
講演者の横山勝丘氏、パタゴニア仙台スタッフの皆様に深く感謝申し上げます。

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