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『巓峰記憶』 シシャパンマに逝ける人々、生きる人々

去る11月18日、北京において中国で制作された山岳映画の試写会が開催されました。
北京大学の山岳会「北京大学山鷹社」によるシシャパンマ登山を記録したドキュメンタリー映画、『巓峰記憶』(簡体字で「巅峰记忆」、英題「SUMMIT MEMORY」)です。

登山电影《巅峰记忆》首映式在京举行 by 中国戸外資料網2010.11.19

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《ストーリー》
 人は皆、逃れることのできない記憶と対峙しなければならない。(映画ポスターのコピーより)
 
 2002年、北京大学山鷹社登山隊はシシャパンマ西峰(ポーロン・リ、7292m)の登頂を試みた。
 同年8月7日に発生した雪崩により、隊員5名が死亡する惨事が発生、社会問題にもなった。
 登山隊で生き残り、チームメイトを失った女性隊員、李蘭は遭難事故以来、ずっと自分を責め続けていた。
 7年後の2009年、李蘭は仲間達と共に、再びチベットを訪れ、シシャパンマ峰8012mを目指す。
 映画は李蘭の動向を中心に、彼女個人の「救済」の姿だけでなく、一般大衆に「高所登山」を伝えることも目的としたドキュメンタリー映画である。映画は北京、上海、陽朔そしてチベット、シシャパンマ峰で撮影ロケが行われた。

 この映画に関しては11月初め頃に情報をキャッチしてましたが、なかなか動画サイトでも検索できず、試写会が行われた18日以後、ようやく試写会の様子や予告編がアップされていました。

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シシャパンマ頂上に立つ隊員たち

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北京での試写会にて、上映挨拶に立つ登山隊メンバー達。ドラえもんのトレーナーを着ているのが、映画で主人公的な役割を果たす李蘭女史。

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報道で流れた試写会の様子。若者の姿が目立ちます。

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上映会そのものはかなり盛況だった様子。

Sc5_2
 試写会で挨拶する、中国登山協会の王勇峰氏。あの悪名高き北京五輪トーチ登山隊の隊長を務める他、様々な中国国家登山隊に関わる重鎮です。
 その他、中国経済界の大物で自ら高所登山を続けている王石氏がメッセージを試写会に送っています。

 このような面々をみてもおわかりのように、北京大学山鷹社は一大学の学生課外活動の枠にとどまらず、中国の民間人の登山組織として大きな存在であることが伺えます。

 1989年に設立、北京大学の教師と学生で構成された山鷹社については、日本ヒマラヤ協会の機関誌「HIMALAYA」で過去に紹介されたことがありますが、2002年のポーロン・リの件については補足が必要でしょう。
 2002年のポーロン・リ遠征は先年の日本隊の資料を基に計画されましたが、当初からいくつかの問題点を抱える計画でした。チベット登山協会のアドバイスに従わず、衛星通信機を用意せず持ち込んだのは3台のトランシーバーのみ、なにより、登山期間を学生の夏期休暇に合わせてモンスーン期に設定したことが雪崩事故の遠因となりました。

 ネット上では山鷹社の解散を叫ぶ声が書き込まれ、北京大学は遭難者遺族各々に8万元の弁償金を支払うことになります。さらに、李蘭をはじめとする生き残った隊員たちにとっては、心の傷となる日々の始まりでした。
 亡くなった隊員の名を冠した「奨学金制度」を設けたものの、二年間で打ち切りとなります。打ち合わせのため、遭難者遺族たちと顔を合わせなければなりません。亡くなった五人の遺族たちは「来るな」とは言いませんが、婉曲な表現から李蘭は遺族の気持ちを察し、幾度か月餅を送り、以来、会うことはありませんでした。
 その後、李蘭は四川の雪宝頂、青海のユイチュ峰など遠征を続けて2009年、シシャパンマ峰に向かうことになります。隊員の負担金は一人8万元。李蘭は投資家でもある登山隊隊長に負担金を出してもらい、参加となりました。

Sc6
映画の中で中心人物となる、李蘭女史

李蘭女史は、メディアのインタビューでこんな風に紹介されています。

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 李蘭はまだ結婚していない。《巓峰記憶》の中で、彼女は少し釈明している。
 「それはまだですね。」
 その類の忠告はよく言われるが、彼女いわく、
 「全人口の13億人、女性は6億5千万人、私1人、少しだけ別の人生を歩んで駄目でしょうか?」
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 シシャパンマ山群で亡くなった仲間の弔い合戦、ではなく、生き残った女性隊員の再生の姿、そして登山を一般大衆に知らしめたい、という二つのテーマを担ったこの映画、中国産の山岳映画として、海外の山岳映画祭に出品されるとも言われています。

 私が予告編の動画を観ていて大変興味深かったのは、登山活動前にチベット寺院に参拝する隊員達の姿・表情でした。

Sc1
映画予告編より。左より二人目が李蘭女史。

神妙な面持ちでチベット僧を見つめる彼ら『漢族』。

 チベット問題で「中共のチャンコロども死ね!」とかマジで思いますが、私情を挟まず考えた場合、経済大国の道をひた走る現代中国の将来において、チベット問題を解決(解決などという理想が現実になれば、の話だが)もしくは軟着陸させるには、もはや諸外国の圧力など無力に等しく、現在の若い漢族とチベット族との対話が必要不可欠となるだろう。

 登山を通じてチベット文化を知り、関わっていく漢族の若者が、少しはマシな方向に人々を導いてはくれないだろうか。そんな甘い理想を、私は『巓峰記憶』予告編の動画を観て考えた。

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