« 精力有り余っている中高年登山者の皆様へ | トップページ | 韓国 月刊「山」が総括するアイスクライミングW杯 青松大会 »

『クライミングとは、夢。』 野口啓代 アスリートトークショー

庄内での現場仕事を終え、帰宅。
疲労のため仮眠をとった後、色と欲に彩られた大都市・仙台に移動。
ノースフェイス仙台で開催される、アスリートトークシリーズの野口啓代さんの講演を聴講。

 講演の内容は、2010年ボルダリングW杯の記録を中心に、野口さん本人の意向として、「小5から始めたクライミングの10年間」をふりかえるという内容でした。

以下に概要を記す。

--------------------------------------------------
 ピンクも鮮やかなアウタージャケット姿で現れた野口さん、講演の冒頭に「クライミング未経験の方いらっしゃいますか?」と聴衆のクライミング経験を確認。未経験の方も会場に参加されてましたので、初めにクライミングの簡単な説明(外岩、人工壁、ボルダリング競技、リード競技など)から始まる。

○クライミングとの出会い
 家族旅行でグアムに行った際、グアムのゲームセンターにあった人工壁にとりついたのがきっかけ。
 父がやる気になり、クライミングジムに行くようになった。
 小6の頃から草コンペから始まり、クライミング競技の道へ。
 中学入学後、ジャパンツアーのリード競技で最下位。特に悔しくもなかった。
 このころ、父が自宅に人工壁を作ってくれた。(筆者注・スライドで映されたが、じゅうぶん民営のボルダリングジム程度の大規模な壁)
 中学に入ってクライミング以外にやりたいこと、楽しい事が増え、クライミングを辞めたくなった時期。
 父、弟、妹の自分の4人でクライミングを始めたが、父はケガ、弟・妹は部活などで辞め、結果的に自分一人で続けた状態。
 父からはクライミングについて「がんばれ」ともいわれず、大会の結果についても特に何もいわれなかった。自宅に大きな壁を作ってくれたので、何も言わないが期待してくれているんだなあと感じていた。このころ、自宅の人工壁に行くことが「すっごい嫌」だった。

○高校以後
 高校に入学、世界大会に出場できる年齢となった。
 高校生活をエンジョイしたかったが、世界大会にボルダリング、リード両部門にエントリー。
 課題が自分に合っていたのだろう、世界大会3位となった。→嬉しいを通り越してビックリした。このとき初めてクライミングを頑張ろうと思った。初めてクライミングが好きになった。
 
 世界大会3位以後は低迷。その後のコンペでは予選通過がやっと。趣味程度にクライミングを続けていた。

 2007年、友人に誘われエントリーしたボルダリング大会で2位。
 その後、また低迷するかと思ったが、3位、4位と続く。ボルダリングで優勝できるのでは?初めてクライミングに夢が持てるようになった。

○大学進学と退学
 高校卒業後、大学にかなり悩んだ結果、進学した。
 自分ではクライミングに専念するつもりでいた。父は大学に行かずクライミングに専念することを勧めてくれたが、母はクライミングをあまり知らず、将来を心配して大学進学を勧めてくれていた。母親に恩返ししたいという気持ちもあり、付属高校から大学に進学。半年ほど通って中退することになります。

○クライミングコンペ
 2008年7月フランスのボルダリング大会で優勝(初優勝)。
 それまでは毎回、特定の人物ではなく、それぞれ違う人に勝てなかった。メンタル的に問題があったかもしれない。
 一ヶ月後のワールドユースで年間チャンピオンを取って気が抜けた状態。
 この一年が追う立場ということもあり、一番楽しかった。

 加須W杯は日本国内でW杯開催ということで凄いプレッシャーがあった。

 2010年、V2は取りたいなと思っていたが、やり尽くした感じもあった。
 「勝ちたい」というよりも「負けたくない」。勝てなかったらどうなるのか、という気持ち。本当はそれではいけないのかもしれないが・・・一番つらい時期でした。

 2010年はメンタル的にもあまり良くないスタート。W杯の7戦中、次第にメンタルを立て直して最終戦のドイツ・ミュンヘン大会に持ち込んだ。

 今年(2011年)は2年に一回の世界選手権がある年。自分の中ではW杯より大きい。優勝したい。

○ドイツ・ミュンヘン大会
 (筆者注)ドイツ・ミュンヘン大会のナレーション付の記録映像を放映、それに合わせて野口さんが解説を入れる、という流れで講演が進んだ。複雑なボルダリング競技のルールをわかりやすく、野口さんが実際の映像を背景に説明。

ミュンヘン大会の映像放映後、話題は再び大学進学・退学の話題に。
大学入学してW杯優勝した後、母にもクライミングを理解してもらった。
半年で退学したが、大学に進学していなかったら「(大学に)行ってみたかった」と思っただろうし、大学に在学していれば、今の優勝は無かっただろう。自分としては(大学を中退したことは)一番良かったと思う。
(筆者注・大学進学に迷ったこと、進学を巡っての家庭内での話し合い・雰囲気など、野口さんはかなり言葉を選び、講演の中で時間を割いて進路に関する話題に言及されていた。御本人も当時は相当悩まれていたのではないかと推察)

○質疑応答

Q.野口さんにとってクライミングとは一言で言えば何ですか?また普段の食事で気を付けていることなどあればご紹介ください(筆者)
A.私にとってクライミングとは「夢」です。最初嫌だったけど、少しずつ楽しくなってきて、一生クライミングをやっていくと思います。一回優勝しても、二回、次の優勝、と終わりがない。新たな夢が見えてきます。クライミングはずばり「夢」、です。
 食事制限などは特にしていません。過去にそういったこともやりましたが、あまり成果は良くなかったです。高校時代は食事が「『じゃがりこ』とジュース」なんてときもありました。減量などもありますが、(クライミングでは)身体が軽ければいいというものでもないようなので、特に食事制限などはしていません。

Q.メンタル、モチベーションのコントロールなど、トップ選手の意見を聞かせてください。
A.皆さん考えている以上に私はしっかりしていません。登りたいときに登り、登りたくないときは休みます。三日間休んだ時もあれば、一週間続けて登ったりという時もありました。最近は巧く設定できるようになりましたが・・・自分はメンタルに左右されやすいです。かなり適当、気持ち次第です。

Q.トップアスリートからみて、先日に習志野で開催されたブラインド、パラクライミング(視力および各種障害者のクライミング)は、クライミングの世界の中でどう展開していくと思いますか?
A.12月にブラインド選手権大会を応援に行きました。近くの千葉で開催されると聞いて、何もわからない状態で行ったのですが、「面白い」。同じクライミングをしている人間として尊敬できるし、同じクライミング、同じ選手なんだな、近くで開催されるから行ったなんて失礼な話なんですが、見に行って良かったなと思います。
(私が言わせてもらっていいのか、とことわり)自分のW杯クライミングよりもブラインド、パラクライミングはメディアにも注目されており、「一般の」W杯クライミングよりもメディアが注目していくのではないでしょうか。凄い発展すると思います。

Q.最近の映画、本、曲で良かったものはなんですか?
A.海外に行くことが多いので、飛行機内で映画を見る機会は多いんですが、映画館ってここ数年行ってないんです。本は・・・東野圭吾はあと何冊かですべて読み終わるくらい読みました。映画は・・・「レオン」見ました。今は「あしたのジョー」みてみたいです。感動モノは好きなんですが、涙モロいのであまり見てない。ディズニーものとか泣けますよね。音楽はガガが好き。練習中は必ずバックにかけてます。難しいところ登るときに音楽のいいところが重なるようにかけたりしてます。
--------------------------------------------------

 現代のクライミングを把握するためには競技クライミングのことも不可欠な世界。メディアからの知識だけでなく、実際に世界の舞台で活躍されている野口さんご自身の言葉でお話を聞き、大変参考になった。
 何が参考になったかといえば、クライミングコンペでの心理的な駆け引き、メンタル面の模様などである。やはり競技者本人から語られる世界は興味深かった。(特にW杯年間チャンピオンを争うアンナ・シュテールとの簡単な会話によるやりとりが、二人それぞれのクライミングに重圧を与えるエピソード)

 もちろん良い意味でマジメな話題ばかりではなく、あるパフォーマンスで野口さんがW杯出場二年間出場停止になりかけたエピソードなど、笑いどころもあります。(この内容は、これから東京、福岡、神戸で講演をお聞きになる方のお楽しみ。)

 御本人は質疑応答でメンタル・モチベーションに関して「かなり適当」と自分を診断していますが、講演中もご自身の口から「メンタル」という言葉は何度も用いられ、普段からかなりメンタル面が自分に及ぼす影響について意識されているのではと感じられます。
 放映されたミュンヘン大会のビデオでは(野口さんの)「タフネス」という言葉が用いられていますが、野口さんが語られるお話はとても自然体で、タフネスという言葉は適当ではないような気がします。あくまでも良い意味で 「 天 然 」 と形容するべきでしょうか。
 「クライミングは『夢』」と言い切る野口さんの、今後の活躍が気になりますし、また期待しております。

Akiyo_2
これがW杯V2を果たした手。
トークショー終了後、私の「す、す、すみません、手を撮影させてもらえますか?」という変質者っぽいお願いに快く応じてくれた野口さん、ありがとうございました。
またアスリートトークショーを企画・運営されたノースフェイス仙台スタッフの皆様に感謝申し上げます。

参考サイト

野口啓代ブログ

野口啓代ツイッター

|

« 精力有り余っている中高年登山者の皆様へ | トップページ | 韓国 月刊「山」が総括するアイスクライミングW杯 青松大会 »

クライミング」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21370/50844006

この記事へのトラックバック一覧です: 『クライミングとは、夢。』 野口啓代 アスリートトークショー:

« 精力有り余っている中高年登山者の皆様へ | トップページ | 韓国 月刊「山」が総括するアイスクライミングW杯 青松大会 »