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イ ス

「なんでもいいから、必要と思った物は買ってこい」
会社の上司から、私にそう指示が下された。

会社が私に求めているのは作業員としてのスキルではなく、アウトドアの経験。
そう理解した私は、最初の陸前高田滞在から、もう購入するものを決めていた。

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それはイスである。

 会社で現場も何も知らない方々は、私を飯炊き係にしたがっていたと人づてに聞いた。
 しかし現場には大型の工事用発電機がある。電気ポットも使えれば電子レンジも使えるのだ。
 若手社員が大量に食料品を買い込み、朝昼晩、各自が好きなモノを喰え、というスタイルで正解だった。
 被災地のガレキの中の作業で、食事は数少ない楽しみであり、ストレスから解放される時間である。
 特定の人間がメニューを決めるより、自分の喰いたいモノを喰うことが一番なのだ。

 被災地チームに加わり気にかけていたのは、みんな立って休憩をとったり食事をとったりしていたことだ。
 私が所属している部署は、土建業の中でもやや特殊な業種であり、職人気質が強く残る、上下関係が厳しい雰囲気の職場だ。年長者が立っていれば、若手社員はまず腰掛けることなどしない。
 前回の陸前高田行きから戻った後、短い休みの合間にキャンピング用イスを調達した。

 あらためてキャンプ用品のイスを物色すると、いわゆるディレクターチェア、カップホルダーがついたり快適な背もたれがついたりと便利なのだが、これがえらいかさばるのだ。
 私達が現場作業に用いるトラック、ダンプの荷台は工事機材がきっちり詰められてあるし、わずかに残ったスペースは食料品のボックスで占められている。残る荷物のスペースは、トラックの座席裏くらいだ。
 さらに私達の部署の人間は大柄な人が多く、小型サイズの折りたたみイスでは耐えられない。
 我々作業員の体格、車両の積み込みスペース等々を考慮し、CAPTAIN STAGのCSレジャーチェアを選択、購入。

 私にイスの重要性を教えてくれたのは、山岳部の後輩ながら海外登山のキャリアは遥かに長い この人。
 あるヒマラヤ登山を共にしたとき、準備作業で「ヒマラヤの長いベース生活では、絶対にイスが必要なんですよ」と強調していたのを、今でも思い出す。聡明な彼のこと、イスはあくまでもたとえで、ベースキャンプで快適に過ごすことの重要性を訴えていたのだろう。

 作業も終わった被災地の現場。
 全て破壊しつくされ、私達のキャンプサイト以外は完全な暗闇。
 工事用ライトの下で食事を取り、イスに座ってリラックスしている他のメンバーを眺めながら、あらためて彼の言葉をかみしめた。

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