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「山開き」にどんな意味があるのか?

日曜から宿直当番で会社に出勤。
それから現場作業で月曜を過ごし帰宅してみると、日本野外教育学会の学会誌「野外教育研究」第14巻第2号が届いていた。

 原著論文では、当ブログで以前にも取り上げた太田和利氏らのグループによる『登山者に対する環境教育の効果に関する検討』が目を引く。
 内容は、南アルプスの登山者らに対して一定の「環境教育」を行い、その成果について考察したものである。

 私がなんで太田氏らの研究に着目しているかというと、登山界や山岳関連メディアでよく用いられる、「一般登山者に対する啓蒙」「アピール」「教育」といった、一見前向きながらその実体は実にあやふやな表現について、太田氏らは実際に登山者に対し環境教育を施し、その成果について具体的に検討・研究しているから。

 この研究における「環境教育」とは、南アルプス仙丈小屋、馬の背ヒュッテの協力を得て、宿泊利用者に対して20分程度の山岳環境問題に関するレクチャー、質疑応答を行ったもの。論文中では「環境教育としては時間が短いと考えられるが、これは疲れている登山者に配慮したためである」と述べているが、登山中の登山者に対しては20分程度なら適切な時間配分ではないだろうか。
 調査結果に関しては原著論文を参照いただきたいが、環境教育の結果、山岳環境問題に対する「危機感」「責任感」の促進に対しては効果が認められるが「負担感の軽減」に対する効果は大きくなかったという点は注目に値するだろう。
 論文では繰り返し、環境に配慮しない行動=環境リスク行動は社会的に「かっこよくない」というイメージに対して働きかける環境教育が必要と延べ、それが結語となっているが、さて東日本大震災を経て社会的に「環境」が意識されている今、山岳環境問題においてもどのように登山者の意識が変容するか、興味がある。 

 ところで「野外研究教育」の本号ではもう一つ、調査・実践報告という形式で『高原山山開き参加者に対する意識調査』という興味深い一文が掲載されている。
 これは栃木県に位置する高原山(1794m)の山開き参加者に対してアンケート調査を行い、その結果から「山開き」という行事そのものの意義について考察した調査である。
 惜しむらくはアンケート調査の有効回答数が33名と母数が少ないことなのだが、「山開き」という行事には山麓の地域環境・生活といった地域文化に触れる教育的役割以外に、自然環境を保護育成する意欲を高める効果があると結論づけている。

 短くない登山経験の中で、まだ「山開き」行事に参加した経験の無い私は毎年「山開き行きたいよ~」とぼやいているが、山開きというと地元山岳関係者のジジイの集まりといったイメージがあるのも事実である。(え?僕何か失礼なコト書きました?)
 「山開き」という行事は一般登山者に対してもっと有効に働きかける可能性を秘めた行事ではないのか?そう考える私にとって、前述の報告は短いながらも興味深い報告でした。

 ちなみに月山山開きというキーワードで検索して当ブログを訪問される方がいらっしゃいますが、山形県・月山の山開き(月山開山祭)は毎年、曜日に関係なく7月1日に開催されます。機会のある方はぜひおいで下さい。

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