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キム・ジャインを破った少女、サ・ソル

 今月の韓国の月刊「山」にキム・ジャインちゃんの記事だっ!

 去る7月13日、フランス・シャモニで開催されたクライミングW杯。
 そこで優勝したキム・ジャインちゃんマンセーの記事。
 
 『やはりキム・ジャインだった。』

 という書き出しで始まる記事は、もうキム・ジャインちゃんヨイショ記事全開なのだが、その記事の片隅に、こんな記載がある。

 『韓国から出場した女性選手中、サ・ソルは20位、ハン・スランは31位に終わった。』

 キム・ジャイン時代到来を高らかに叫ぶ月刊『山』誌だが、それは裏を返せばキム・ジャインに続くクライマーがなかなか出現しないこと、韓国の女子選手層の薄さを如実に物語っていることの現れでもあろう。
 当ブログでは、「ポスト=キム・ジャイン」として頭角を現しているハン・スランを取り上げた。
 偶然にも、私が韓国でお世話になっている岳人とハン・スランの父親がお知り合いということもあり、韓国の若手クライマーの事情も少し伺えたのでしたが・・・

 参考記事:ポスト=キム・ジャイン、ハン・スラン

 イタリア・アルコの予選では小林由佳さんと並んだハン・スラン嬢も、シャモニのW杯では残念な結果だったようです。
 そのハン・スランが意識するクライマーとして名を挙げたのが、サ・ソル。
 彼女についての詳細はなかなか韓国の山岳メディアで明らかにされていませんでしたが、去る7月の月刊『山』誌で期待の星として取り上げられました。

月刊『山』2011年7月号 [話題人物]少女クライマー サ・ソル 

以下記事引用開始
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[話題人物]少女クライマー サ・ソル 

2011062901311_0 世界最高のスポーツクライマーを夢見るサ・ソル

 去る2月末、ソウル三成洞(サムソンドン)KOEXで開かれた第17回ノースフェイスカップ スポーツクライミング大会は、将来が期待される少女クライマーの誕生を告げる大会だった。
 高校2年への進学を目前にしたサ・ソル(17・ヌウォン高校・ノースフェイス)はスポーツクライミング女性ワールド チャンプのキム・ジャイン(23・高麗大・ノースフェイス)を抑え、波乱を起こした。 サ・ソルは、ボルダリング競技においてキム・ジャインに比べトライ数が少なく優勝した。

 サ・ソルは既に未完の大器に選ばれてきた。
 2005年、小学5年の時にスポーツクライミングを始めたサ・ソルは、その年の秋に開かれた第14回大韓山岳連盟会長杯大会・初等部リード部門と速度部門を席巻し‘神童’に浮び上がった。 3年後の2008年、全国体育大会で女子中学部リード部門1位となったのに続き、昨年の全国体育大会では女子高校生リード部門と速度部門を席巻し、ジュニア チャンピオンとなった。

「控室に座っていて、私が優勝したという声が聞こえてきました。その瞬間はぼんやりしていました。トライ数で1位となったのは格別の興味は無かったです。 素直に優勝を夢見ていなかったといえば嘘になりますが、ジャイン姉さんを抑えて優勝とは思いもしませんでした。姉さんは名実共にワールド・ベストクライマーじゃないですか。」

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第17回ノースフェイスカップ クライミングコンペ表彰式の模様
キム・ジャインを抑えて表彰台に立つサ・ソル

 サ・ソルは、国際大会として開催されたノースフェイス大会で優勝した。 しかし多くの人々の期待とは裏腹に、以後の海外で開催された国際大会では、これといった成績を出すことができなかった。
 第31回全国スポーツクライミング選手権大会で一般部に出場し、リード部門3位・ボルダリング2位、第2回ゴ・ミスン杯全国青少年スポーツクライミング選手権大会ではリード部門で優勝したが、イタリア・ミラノで開かれたIFSCクライミング ワールドカップ(ユースB・ボルダリング)で31位の低調な成績に終わり、続いてカナダ・キャンモアと米国・ベイルで一ヶ月間隔で開かれたIFSCクライミング ワールドカップ(ユースB・ボルダリング)でそれぞれ15位と20位に終わった。

 だが、サ・ソルはこれに落胆しなかった。 来る7月に開かれるIFSCクライミング リード ワールドカップを控えて猛訓練中だ。 今回は決選進出が目標だ。

 小学6年の時に、関節炎を押し切って訓練を強行

 「ソルと一緒にロープを結ぶ機会はあまりないです。私より忙しいですね。」
6月中旬、初夏の蒸し暑い天気はクライマー少女にも手に負えなかった。静かなクライミングを楽しむクライマー達に知られた森の中の岩場、南漢山城(ナムハンサンソン)は車から降りて10分程の距離しかない。 しかしソルは寂しい山道を歩く間「大変です~」と何度も声にした。
 聞けば、今週は月曜から水曜の今日まで三日間ずっと一日5時間を超えるクライミングを続け疲れていたのだ。
 母親のパク・チョンア(46・清州(チョンジュ)クライミングクラブ)さんは「何が大変なのか」と言いつつも娘を心配そうな表情で眺めていた。

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▲南漢山城(ナムハンサンソン)虎洞窟の『-5.10』を登るサ・ソル。 ソルは「外岩はあまり慣れていない」と言いつつも、終始余裕があふれる洗練されたスタイルで登った。

 パク・チョンアは娘と同じ時期にスポーツクライミングを始めた。副士官として空軍に服務中である父親サ・ヘギ(44)氏は、部隊内で軍人がスポーツクライミングをしている光景を目にして、健康に良いと考え、家族皆に薦めた。 2005年春、ソルが小学校5学年の時であった。
「清州(チョンジュ)市内のクライミングジムに家族会員第一号として入会しました。 ソルは初めから上手かったです。 大会に出場さえすれば上位入賞しました。 娘が自慢ですかって?参加選手が何人もいなかったんですよ」

 何人もいないどころではなかった。 全国大会の場合、初等部は少なくとも20人以上の選手が参加して、ソルは難易度、速度、ボルダリング競技で全て2位に入賞したりした。 優勝ではないとしても、入門直後におさめた成績としては凄い結果である。
 小学6年の時、指の負傷でしばらく休まなければならなかった。

「スポーツクライミングをすることで、普段使わない筋肉を無理に使っていたことで問題が生じました。ホールドを捉える時に最も力を多く使う右手中指が関節炎にかかったんです。 お医者さんはしばらく休むと良くなるといいました。 ところが我慢できないんですね。 こっそり壁に取り付いてました。」

2011062901311_2 ▲ 2009年秋、纛島(トゥクソム)人工壁で開催された第14回ノースフェイスカップ スポーツクライミング大会で登攀中のサ・ソル。

 岩場の取り付きに到着、母親と共にハーネスを着けたソルは、「大丈夫と思って、ずっと人工壁にぶらさがったんですが、痛みがひどすぎてしばらく運動できませんでした」と笑う。
 そのように運動に専念したところ、技量は急速に向上、小学校6学年の時に一般部の大会に参加して9位に入賞、中学校に進学するとより一層速いスピードで成長した。 日進月歩だった。 そのような娘の姿に、母親は母親の決定を下さなければならなかった。

「ソルは人工壁に登ることばかり好みました。 それで中学校に進学する時、たずねましたよ。 勉強と運動、どちらが良いかと。ソルは運動を選びました。 悩んだ末、子供が好きな方を選択するのが良いと考えました。 事実、私も学生の時は勉強は好きじゃなかったんですよ。とにかく、好きではないことを強要したくはありません。 意欲があるから上手くなるのだと信じています。」

 母親はサ・ソルが中学校に進学すると同時に室内人工壁を作った。 現在の会員制で管理されているタオルムクライミングクラブがサ・ソルの将来のため、母親とパク・チョンア氏が作った作品だ。 80坪の面積に人工壁を整備したもので、規模は途方もないものである。そのように大きい壁を作っても、パク・チョンア氏は中学校3年が終わる頃、ソルをソウルに転校させた。 大きくなろうとするなら大海に進まなければならない、という考えのためだった。

「室内ジムはソルがソウルの有名な病院で関節炎が完治したことを記念して作りました。常識も知らずに(身体の)故障を起こしたのですが、それでもソルが熱心に運動している姿を見れば満たされました。 この前、小学校3年の末っ子娘が熱心に訓練したおかげで、今年初めて出場したコンペで良い成績を上げました。 八公山(パルゴンサン)大会で9位、ゴ・ミスン杯で7位入賞しました。 遊ぶのに忙しくて、熱中することはできないようですが。私も少しはクライミングをします。 およそ5.10? 違います、5.9が私の実力でしょう。 ソルと同じように、外岩は苦手です。 それでも八公山(パルゴンサン)大会の壮年部を2連覇しました。 見くびられないように、ですね。」

 ソルはソウルに転校する前の2008年初め、ノースフェイス・クライミングチームに抜擢された。 神童と呼ばれるほどにクライミング大会で頭角を現わしたが、当時は体格が小さかった。 それでもノースフェイス・ クライミングチーム監督のイ・ジェヨン氏は身長168cmに腕と脚が長い母親の体形を見て、ソルの将来を信じた。 ワールド チャンプ、 キム・ジャインのクライミングの技量を受け継いだならば、より一層良い結果が出ることができるだろうという期待のためだ。

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▲ 1 まもなくコンペが始まるかのように、母娘は真剣な表情でハーネスを着ける。 2 「ママ、ホールド見えないよ」、「よく探してごらん、右腕を伸ばせばホールドが掴めるよ。」

「大変な時に誰かが応援してくれれば、また力がほとばしります」
 ソルは現在、所属会社が提供した城北区(ソンブクク)、月谷洞(ウォルトクトン)のアパートで世界のアイスクライミングコンペで頭角を現わしている女性クライマー、シン・ウンソンと共に住んでいる。 すでに2年目だ。
 ソルの一日はタイトなスケジュールだ。 明け方5時30分に起床、朝食をとり、カバンを持って電車を二回乗り換え、道峰洞(トボンドン)のヌウォン高等学校に登校、授業を受ける。

 本当のスケジュールは午後4時30分の放課後からだ。トレーニング場を午後5時に訪れた後、夜10時半や11時まで5,6時間の猛訓練だ。 指から力が抜けて、これ以上ホールドを捉えることができない時までだ。ソルにとっては、トレーニングはあまりに荷が重かった。 しかしある瞬間、達成感が感じられて、今は楽しくこなしている。

「初めは力んでいるだけで、つまらなかったです。指がブルブル震えるときは死にそうでした。 ところが、ある瞬間、不足していたものが満たされているような気がしました。少しずつ良くなっていると考えると満足してきました。 毎日毎日、より一層楽しくなってます。」

 ソルだけが大変なのではない。 いつも笑っているが、母親も容易な道を歩んでいるわけではない。ソルが小学校5年の時、家族会員第一号としてクライミングジムに登録したが、母親はジャズダンスにすっかりはまっていたため、その年1年は一回程度の参加だった。
 ソルが小学6年の時から変わった。ソルが参加するコンペはどこで開かれようが、一緒に参加した。 そうするうちに、子供がスポーツクライミングで大成するなら、正しく作られた訓練場が不可欠だという考えで作ったのが、清州(チョンジュ)クライミングクラブだ。
 ソルがソウルでの生活を始めてからは、さらに忙しくなった。まず1週間に一回ずつ食事を作って清州(チョンジュ)の家からソウルの月谷洞(ウォルトクトン)に‘配達’するのだ。
 それでも母親は、日々成長していく娘の姿を見ると満足だと話す。

2011062901311_4 ▲ソルはクライミングのために、足指が折りたたまれる程にタイトなクライミングシューズを履いている。 ‘常に最善を尽くそう!’ソルはスポーツクライミングで世界制覇をするために、今日も猛訓練だ。

「朝はママが作ってくれたおかずとご飯で、お昼は学校給食で済ませています。 夕方はおやつで終わりです。 バナナ、鳥のささみ、ソーセージなどですね。 私は好き嫌いがないので、なんでも食べますね。」

 ソルは一時期、太ったらどうしようか気を遣っていたが、この頃は気楽だと考える。 「食べてこそ力を使える」という平凡な真理を悟った。 それでも一つ、気を付けているものがある。
「大好物のアイスクリームはずっと我慢して、コンペが終わったら食べます。 アイスクリーム パーティーをやりますよ。」

 ソルは学校の成績は中位。「友達は勉強ができる子より私を羨みます」と話す。 「トレーニングの時は本当に大変です。 それでも、そばで誰か応援してくれれば力が沸きます。 友人が連続して優勝したら肉を買うと言ってます。 今年は友達らと肉を必ず食べるでしょ(笑い)。」

 クライミングルートは難易度5.11d級の『-5.10』。ソルは岩を掴むやいなや「今日はこのルートを登るほど力がない」とおおげさな態度を示した。 指がパンプするのか、いくつか仕草をして指をほぐした。 ソルが苦しがるとすぐに笑顔で見守っていた母親の表情も固まった。 ソルと母親は外岩は苦手だ。主に人工壁でトレーニングしているためだ。

 ソルは2008年10月、第7回アジア ユース チャンピオンシップ ユースB部門で優勝して、翌年2009年には世界大会に初めて参加した。 フランスで開催された世界青少年スポーツクライミング大会であった。 70人を越える選手たちと競った。 結果は準決勝で脱落した。

「どんなに緊張をしたのか、手と足がガタガタ震えました。 それでもクライミングを始めれば、たいてい平常心を取り戻すのにそれができませんでした。緊張の中でクライミングしていると何の声も聞こえなかったです。 その時悟ったのは、何より、競技を楽しむことができなければならないという事実でした。」

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▲「無理はしないこと。あなたが大きくなることもいいけれど、なにより楽しくクライミングするのがママがさらに望むことだよ。」

 次の大会から、ソルは違う姿を見せてくれた。 同年7月、カザフスタン、アルマトイで開かれたAFSCアジア ユース チャンピオンシップ ユースB(15~16才)リード部門で優勝、昨年の秋にイギリス・エジンバラで開催された青少年スポーツクライミング大会(ユースA・16~17才)では4位に入賞した。 ユース部やジュニア部(18~19才)参加選手たちの水準は、成人のワールドカップ大会の参加者に劣らないとも言われている決選ルートの難易度は5.13aクラスに相当する。

 ソルが今年参加した3回の国際大会では、これという成績を納められなかったが、それでも期待する人は多い。  毎日毎日変わる姿を見せるところに、ソルは目標に向かって邁進しているためだ。ソルと同じノースフェイス クライミングチーム所属のキム・ジャインをモデルとみなして運動をしている。共に過ごす時間は多くはないが、コンペの時でも多くのことを学ぼうと努力するという。

「はっきりいって私は適当な性格です。 ところが(ジャイン)姉さんはすべての面で凄いです。 朝起きればストレッチをしています。 ストレッチで一日が始まるんですよ。 大会で外国選手たちを見れば、話しかけるのもとまどう程にクライミングに集中します。 私もさらに熱心にクライミングをするつもりです。 力と技量も、集中力も養うつもりです。外国選手たちと話もできるように、時々英語も勉強もしてますよ。 夢ですか? 当然、最高のクライマーになります。 この前から走っています。 持久力を養うためです。一位になろうとすれば、しなければならないことが本当に多いんです。」

 ソルのウェブサイトには、次のような文が6月5日付の日記に記されている。 ワールドカップ大会を控えた少女スポーツクライマーの自省と覚悟だ。

 『IFSC Climbing worldcup (B) -Canmore 15位 IFSC Climbing worldcup (B) -Vail 20位、不足した私の実力がこのように現れた。 もう7月にあるリード ワールドカップにむけて準備しよう』

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以上引用おわり

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