« パク・ヨンソク氏らの捜索打ち切り | トップページ | 登山用集水器Succulent »

LOU WHITTAKER Memoirs of a Mountain Guide

Louwhittaker Lou WhittakerとAndrea Gabbard共著による『LOU WHITTAKER Memoirs of a Mountain Guide』を読む。

 日本では山岳ガイドの本場といえばなぜか「おフランス」らしい。私の場合はアメリカである。山を始めた頃から「バックパッキング」に代表されるアウトドア・アクティビティ大国としてアメリカに憧れていたし、ガイドなりたての頃、実際のガイドクライミングを体験するべく、渡米してガイドと共にクライミングしたことも理由の一つである。
 
 今年は英語に慣れるべく月一冊の洋書読書を目標にしていたが、どうしても読みたかったのは、アメリカの山岳ガイドの本だった。そこで選んだのが同書である。
 アメリカ登山界の重鎮、LOU WHITTAKERの自伝である。
 内容はその生い立ちから、登山に親しみ、やがてレーニア山のガイド組織、今やアメリカでもガイド組織の老舗となった『RMI』を立ち上げガイド活動について述べている。
 このRMI(Rainier Mountaineering, Inc)は結果的に優れたクライマーたちを輩出することになり、イギリスの「ボニントン一家」ならぬ「ウィテッカー一家」のようなコミュニティとなる。アメリカ初の8000m14座登頂者である高所クライマー、エド・ビスチャーズもMRIでガイドの経験を積んだ。
 このことからウィテッカーは、アメリカの大きなヒマラヤ登山隊にも当然関わっていくことになる。この本には75年のK2、82年のチョモランマ北稜、84年の米中チョモランマ合同、89年のカンチェンジュンガ北面の遠征記録が収録されている。

 長年の登山活動・RMIのマネジメントを通じて名士となったウィテッカーは政界にも顔が利き、テッド・ケネディ上院議員(ケネディ兄弟の末っ子)の口利きでヒマラヤ登山の許可をモノにする様子が描かれている。
 興味深いのは、ウィテッカーも当時未踏だったナムチャバルワを虎視眈々と狙っていたことだ。さすがのウィテッカーも高額な登山料、タフネゴシエイターの中国当局には手を焼き、結局許可は日中合同隊として日本に下りた。
 「歴史的なジャパニーズ・エンペラー(天皇陛下)の訪中直前に彼らは(ナムチャバルワ)に成功した」と書いている。(かなり悔しかったのか?エリザベス女王戴冠式前のエベレスト登頂にひっかけた表現なのか?)
 80年代初期、中国の対外開放に合わせてヒマラヤの中国サイドに遠征していることからもわかるように、ウィテッカー自身は政治家のコネを最大限に利用して大きな遠征に赴いた。その一方で、75年のK2遠征後にパキスタンのブット大統領(ズルフィカール・アリー・ブット、後に暗殺されるベナジル・ブットの父)がクーデターで絞首刑に、83年にカンチ峰の登山許可を取得する際、ケネディ上院議員を通じて登山許可を依頼する手紙を送っていたインディラ・ガンジー首相は翌年暗殺。ウィテッカー曰く、

『Politics is a very dangerous sport - in many ways,more dangerous than mountaineering』

と述べている。「平和あってこその登山」とか頭がお花畑な日本勤労者山岳連盟のエラい人には理解不能な世界であろう。あ、政治がらみなら日本山岳会のお爺さま方ならよく知ってますよねー(棒読み)

 時折出てくる「いやあ、RMIってこんなに素晴らしい人材出してるんだよねー」と自慢話満載なのはまあ地元の名士の書いた本ですからスルーするとして、50~70年代のアメリカの、climbingではなくmountaineeringに関する様子が写真入りで記録されていて興味深い。アメリカの登山史をひもとく上でも、良き資料となる本であろう。

Out なおアメリカ流のリーダーシップ、チームメイキング等を知りたい方には、同じThe Mountaineers出版社が出しているJohn Graham著『Outdoor Leadership: Technique, Common Sense & Self-confidence』がお薦めである(ルー・ウィテッカー、息子のピーターはじめ、アメリカ各地で活躍するクライマー、野外活動指導者の体験談・解説が掲載されている。)

|

« パク・ヨンソク氏らの捜索打ち切り | トップページ | 登山用集水器Succulent »

山岳ガイドが読む本」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21370/53151608

この記事へのトラックバック一覧です: LOU WHITTAKER Memoirs of a Mountain Guide:

« パク・ヨンソク氏らの捜索打ち切り | トップページ | 登山用集水器Succulent »