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先人たちのクライミングシューズ

 前々から不思議だったのですが、旧ソ連のクライミングの資料・写真を見ていると、

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 クライミングシューズ、たいていシューズの紐を足の甲から土踏まずにくくりつけているんですね。

 これって、登山靴の紐が長かったり、ちょっと外に出るときに、簡易的に足首に靴紐を巻き付けたりする人をたまに見かけますが、あんな感じでやってるのかなぁ・・・と長いこと思っていました。

 今回たまたまモスクワ山岳協会の「懐かしのギア」みたいな記事を読んでいたら、その理由が判明しました。

 旧ソ連では、クライミングシューズとしてゴム製のкалоше(英訳するとgaloshes)、雨天用のゴム製オーバーシューズを流用していたんですね。雨の中、濡れた道でも滑りにくいゴム靴にクライマー達が目を付けたのも当然でしょう。

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калоше(galoshes)近影

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旧ソ連のgaloshesの広告ポスター

 旧ソ連では1950~60年代から、このゴム製オーバーシューズが登山で用いられていたそうです。
 このゴム靴は長いことソ連のクライマーに使われ、86年、シュテファン・グロバッツが使っていたスポルティバの「メガ」がソ連に入ってきたことは画期的な出来事だったそうです。

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ビクトル・マルケロフ、1971年ソ連クライミング選手権大会優勝者
(galoshesを靴紐でガッチリ足に縛り付けているのがよくわかる画像です)

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レオニード・トロシュチネンコ (82年のソ連初のヒマラヤ遠征・エベレスト南西壁隊のメンバー、後に故・ユーリー・モイセーエフらとカンチェンジュンガ主峰登頂)、ゲオルギー・シチェドリン(旧ソ連登山競技チャンピオンを3度獲得)のクライミングの様子 二人とも90年、レーニン峰で雪崩に遭い死去。

これら画像のように、旧ソ連のトップクライマーも皆、ゴム靴 galoshesを履いてクライミングしていたんですね。
この靴、早い話がデザインは普通の革靴みたいなデザインですから、クライミング中に脱げないようにきっちり紐で縛り付けておく必要があったわけです。

 大昔、クリミア半島で国際的な「岩登り競技会」が開催され、日本からも選手は坂下直枝氏とゆーメンツで出場してました。現在のような人工壁が出現する以前、当時は会場は外岩、ルールはスピード競技で、ソ連勢が圧勝していたと記憶してます。
 その後のクライミング史は皆様ご存じ、ラバーソールのクライミングシューズに人工壁の登場、西ヨーロッパ勢の台頭で旧ソ連のクライマーは遅れをとるわけですが。

 このクライミングシューズの代用ゴム靴を「時代の流れ」と片づけるのは簡単です。
 鉄のカーテンに閉ざされた政治体制の中で、雨天用のオーバーシューズで代用してまで、自分の限界に挑戦し、困難に挑んでいった旧ソ連のクライマーの事情を想うとき、先人たちのクライミングへの情熱をひしひしと感じるのです。

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コメント

クリミア半島で国際的な「岩登り競技会」が開催され - 記憶では1975年以降ぐらいです。既にEBシューズが日本にも紹介され始めた当時でしたが、ボルダーリングはまだ一般的でなくて、上の大会でも比較的長いトップロープを白墨を囲んだ領域で競わせているような写真を思い出します。

靴に関してはフェルトのものは使っているのを見たことはありませんが、砂岩のドレスデン郊外では戦前から裸足が今まで続いていますので、恐らく各地で様々な試みはあったと思います。少なくとも我々の周りではオニツカのタイガーシューズが1985年ごろまでの標準装備でした。

投稿: pfaelzerwein | 2011.11.17 04:36

re: pfaelzerwein様
 貴重なコメントによる補足ありがとうございます。
 
<<恐らく各地で様々な試みはあったと思います。

 私の関心はそこにありまして、その「様々な」「試み」に、陳腐な言い方ではありますが多種多様なクライミングギアに溢れた現在では見失われた何かがあるのではないか。そんな風に感じています。

 ドレスデンの砂岩では裸足ですか。ドイツの砂岩の岩場は書籍でしか知りませんが、用いられるギアも独特の伝統があるようですね。

 オニツカのタイガーシューズの話はよくお聞きします。私が登山を始めた頃にはアシックスの「ガントレ」が出回っていました。

 蛇足ながら、今の若い人の支持を得て「オニツカタイガー」ブランドも健在、「ガントレ」も復刻版として再販されたようです。

投稿: 聖母峰 | 2011.11.17 22:36

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