« 【映画】 無言歌 | トップページ | キム・ジャインちゃんがドレス姿にっ!! »

山書を読むならば

Yk山と渓谷誌2012年2月号を読む。
正確には、連載オピニオン『山の論点』、山岳ジャーナリストの柏澄子女史による『「山書」という言葉を絶やすな』を読む。

●古典を読め、といわれても

 『「山書」という言葉を絶やすな』において、柏女史は現在の若者が山岳書の古典を知らないことを嘆き、「それには最近の本ばかり読んでいては駄目だ。古典も読まなければならない」と強く訴える。

 それでは、山岳書の古典とは、どこで読めるのだろうか?

 実はこのコラムの冒頭において、書店をみてもガイドや技術書ばかり、と柏女史は嘆いているのだが、事態は深刻なのである。
 私は小学生の頃から地元の公立図書館を利用し、そこで様々な山の本、大島亮吉や上田哲農から、ヒマラヤ、アンデス、アルプスの山行記から様々な山書に触れていった。
 歳月が経ち、社会人になった頃のことである。
 ふとした事情でパミール三山の記録が読みたくなり、公立図書館を訪れた。原真氏や田村俊介氏らによる、日本人によるパミール7000m峰登山黎明期の記録本である。
 
 ところが、蔵書を検索しても、本の名前が消えているのである。
 もしやと思い、高校生の頃読みふけった、数々の冒険記やヒマラヤ登山の本、メスナーや小西政継の著書を検索してみた。いずれも、蔵書から消えていた。

 そう、公立図書館では毎年多数の蔵書が廃棄されているのである。
 具体的には、日本の公立図書館の廃棄冊数は年平均で県立 1館当り6,667 冊、市区町村立では平均 2,961冊にのぼる。(文科省調査報告『諸外国の公共図書館に関する調査 調査結果の概要』より)
 この中に、多数の山岳書が含まれていることは想像に難くない。

 このエントリーを書くために、各地の県立図書館の蔵書をWeb検索してみたが、さすがに大島亮吉クラスの名作古典は保存されているようだ。しかし、柏女史お勧めの小西政継の著書あたりは心許ない限りである。

 山岳書の古典に関しては、最近は山と渓谷社も復刊に力を入れているようだが、かつては中公文庫が冠松次郎はじめ杉本光作、板倉勝宣など山屋なら必須の名作を出していたものだが、書店でも入手しにくくなっている。

 私は柏女史より年下の坊やなわけだが、そんな自分でさえも、ヒマラヤやアルプスへの夢を育むきっかけとなった高校生の頃と比較すれば、現在は格段に「山岳書の古典と出会いにくい」時代なのである。

 いや今はアマゾンとかネット購入とか、便利なシステムがあるだろ、という方がおられるかもしれない。
 だが図書館の書棚から実際に手に取り即、先人たちの文章を目にすることができる、という利便性はWebでもかなわないものがあると私は考えている。
 
 東京のような都会ならば、大型書店、山岳専門古書店、あるいは大型登山用品専門店で、充実した山岳書コーナーに容易に立ち入ることができるだろう。
 しかし地方都市ならば?
 意思ある登山者でもないかぎり、山岳書の古典には出会いにくいのが現実である。

 ただし、学生や若い衆は別だ、と釘を刺しておこう。
 自分の登山の指針となる書との出会いくらい、自分の意思で見いだすべきである。それが若さの特権なのだから。
 

●ハイカーの皆さん、郷土の山の本を読んでみよう

 柏女史はコラムのとりまとめで「つまるところ、私はもっと多くの登山者に山書を読んでもらいたいと思っている」と述べている。
 正論であり私も同感なのだが、価値観が多様化した現代の登山界において、あまりに大まかな結論づけではないだろうか。
 今もなお困難を求めて研鑽を積むアルパインクライマーと、山をやり始めた若者、そして中高年のハイカーでは、おのずと興味をひかれる本、読むべき本は、異なるはずである。

 現在の登山界において大部分を占める未組織登山者、特に中高年のハイカーの皆さんに対し、私は皆さんにとって身近な、いつも登っているような郷土の山の本を読んでほしい、と考える。
 そこで注目していただきたいのが、前記では蔵書の廃棄を嘆いた「公立図書館」の存在である。
 公立図書館で山の本が置いてあるのはスポーツ・レジャー・登山の書棚ばかりではない。公立図書館には必ずある、郷土資料・書籍のコーナーに貴重な本が所蔵されている。
 そこには「山と渓谷」「岳人」といった山岳雑誌のブックレビューでも紹介されなかったような、郷土の山の本があるはずである。

Pa0_0011
上記画像は、最近山形市で出版された『盃山物語』という本。
標高256mの盃山は山形市東部に位置し、昔から早朝登山が盛んな、山形市民に愛されている里山だ。
この里山に関する本はあくまでも一例にすぎない。
みなさんの身近な山について、事細かな歴史、人との関わりが記された郷土本があるはずだ。
それは決して「山と渓谷」や「岳人」誌、大手出版物しか取り扱わない書店では読めない、山書なのである。

郷土の「山書」によって、自分が普段登っている山について新たな発見があるはずだ。
そこから、柏女史もコラムの結びで書いているように「自身の山の世界をひろげてくれる」し、「さらなる夢が広が」っていくだろう。

|

« 【映画】 無言歌 | トップページ | キム・ジャインちゃんがドレス姿にっ!! »

山岳ガイドが読む本」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21370/53762141

この記事へのトラックバック一覧です: 山書を読むならば:

« 【映画】 無言歌 | トップページ | キム・ジャインちゃんがドレス姿にっ!! »