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幸せを分かち合う登山

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 中国共産党の代弁放送局NHKが放映する数少ない素晴らしい番組『地球ドラマチック』にて、『めざせ最高峰!アフガニスタン人初の挑戦』を視聴。
 2009年夏、アフガニスタン最高峰ノシャック7492mのアフガニスタン人初登を記録した番組(2011年フランス製作)である。

 44分間という短い番組枠ではあるが、感銘を受けると共に、登山を通じて国家とは何か、考えさせられる番組であった。

 フランス人ルイ・ムニエルによってプロデュースされたこの登山隊は、4人のアフガニスタンの青年がフランス・シャモニでトレーニングを行い、フランス人ガイド2名と共にノシャック登頂を目指したもの。
 4人のメンバーの中には、かつて父親が外国の登山隊のガイドを務めたという青年もおり、かつてのヒンズークシュ登山全盛期、そして長い戦乱による空白期を痛感する。

 準備もキャラバンも順調に進み、第一キャンプ設営というところでルイ・ムニエルに衛星電話が入る。
 アフガンの文部大臣が政情不安を理由に、登山隊の活動中止を考えているとの連絡だ。

 これを受け、4人のアフガニスタン青年からは口々に不満が飛び出す。
 危険など何もない、これは政治問題が絡んだクレームだ、パシュトゥーン人とタジク人の対立だ(メンバーの一人が、大臣とは違う民族の自分が山頂に立つのが気に入らないんだ、とつぶやく)、民族なんて関係ない、我々は同じアフガニスタン国民ではないか、等々。
 国民を代表して山頂に国旗を立てたいんだ、と。

 ここまで視聴して、ある山岳ガイド氏がヒマラヤの国際公募隊を率いて「いまや国威高揚登山の時代ではない」とウェブ上で発言しているのを思い出した。
 なんとも視野狭窄な、先進国の人間の思いあがった発言である。
 
 そしてメンバーたちの国旗にかける想い。
 日本では、日本勤労者山岳連盟のお偉方でなぜか山頂に国旗を立てることにアレルギーを示す方がおられるが、なんとも頭のいかれた人たちである。
 新生アフガニスタンでは、国民自らの手で山頂に国の旗を立てたいという熱い想いがある。
 1960年の日本・京都大学隊、ポーランド隊による初登頂から49年目、ようやくの自国人による登頂。

 我々日本人も含め、異国人ばかりが登山史において「表立って」活動してきたヒマラヤ登山。
 国威高揚登山など時代遅れ、という見方をする人は多いが、私たちは決して今回の4人の青年ような存在を忘れてはならない。

 下界での折衝もうまくいき、政府関係者の協力も得られることになり順調にみえた登山活動だが、やはり高度障害の魔の手が忍び寄る。
 父親がかつての山岳ガイドで、ぜひとも登頂して母親を喜ばせたい、と語っていた青年ハーンが高度障害に倒れ、同行するためアリ隊員も共に下山することになる。
 残ったマラング、アムルディンの2名がノシャック峰のアフガニスタン人初登を果たす。

 登頂もさることながら、ベースキャンプで登頂を見守っていたアリ隊員、そしてベースキャンプ料理人の老人がこう語る。
 「友人が登頂できたことは私にとっても幸せだ。」
 そのように語る姿に、高校・大学山岳部で育った私は素直に感銘を受けた。

 その登山経験の長短にかかわらず、なぜか日本では極地法を頭から否定し「一人の成功はチームの成功」という概念を否定する輩が多い。
 池田某老人の価値観に囚われすぎている人間は、今一度ベースキャンプのコックが語る「仲間の成功は自分の幸せ」という考えをかみしめるべきだろう。 

 この番組は7月16日(月)[日曜深夜] 午前0時00分~0時44分「めざせ最高峰! アフガニスタン人初の挑戦」として再放送される。
 アフガニスタン・ワハン渓谷の登山の模様に興味のある方はぜひご覧戴きたい。

 登山隊のオフィシャルサイトを拝見すると、隊員の中には今までずっとAK47を携えていたが、下山時にはピッケルに持ち替えていた、など、今回のNHK放映の番組ではうかがい知れないエピソードも紹介されており、戦争で疲弊したアフガンとその人々のことを思わざるをえない。
 すでにノシャックや同方面の山域にはヨーロッパのクライマーが手を伸ばし始めている。ネパールやパキスタンにおいて登山家として自立した人々が現れているように、アフガニスタンにおいても人々が登山を身近に行うことができる安定した時代が訪れることを願ってやまない。

2009年のノシャック登山隊の動画

2009年アフガニスタン人によるノシャック登山隊のオフィシャルサイト
AFGHANS TO THE TOP

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