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下山

西吾妻から白布峠に抜ける縦走登山のガイドのため、吾妻に入山。

 お世話になっている旅行社からオファーを戴いた際、年間プログラムにない山行だったので調べてみると、初心者のための登山教室の「おさらい山行」という企画。
 参加者は顔見知りのバリバリ登る方から、全くの初心者の方まで様々。
 私の収集した情報では、午後から天候が崩れるという。その前にできれば稜線は抜けたかった。
 
 参加者の疲れ具合をみて、想定していた休憩場所を変更、梵天岩手前の広いガレ場で昼食兼休憩。

 休憩を終え、ガレ場を出発した直後だった。
 頭上から雷鳴。
 参加者からも「雷の音!」と声が漏れる。

 今日の気圧配置と天候から、出発地の天元台に引き返すことを考え、添乗員と協議。様子を見ながら、西吾妻山頂で再度考えよう、ということになる。

 梵天岩に到着。
 ここで小休止をとり、「道迷い」について少しレクチャー。
 その間も雷鳴が断続的に聞こえ、雨が降り出す。雨具の着用を指示。
 
 本日の参加者は健脚者と初心者が混在し、脚力が揃っていない。
 ここで私は西吾妻山頂まで様子をみながら前進します、と参加者に伝え、出発。

 断続的にきこえる雷鳴を背に、西吾妻山頂手前、傾斜の緩くなったところから雨が激しくなった。
 西吾妻山頂で写真タイムを終えた後、縦走はとりやめ、天元台方面に引き返すことを添乗員のEさんに進言し、参加者にも話し、天元台方面に下山。
 遠方からではなく、直近からも雷鳴が聞こえる状態であり、山上にいること自体が危険だ。
 参加者の脚力と登山コースから判断して、西吾妻山頂を抜けて西吾妻避難小屋に待機することは考えられない。そんな時間があれば一刻も早く皆を待避させたい。

 もっとも、私自身はシンプルに考えていた。
 何よりも、引率するクライアントの安全が第一だ。
 そこに迷いは無い。

 登山の経験は数えるほど、という高齢の方を私の後ろにつかせ、大きな岩の連続する急斜面では足の置き方を一つ一つ指示しながら下山。

 私は山岳ガイドである。
 どっかの田舎山岳会の爺がふれまわるような「道案内」ではない。
 そんな気概で山形の山を登っている。
 クライアント達の安全を確保するのが、仕事だ。
 
 天元台のリフト乗り場に戻ってくる頃には、米沢盆地方面は晴天だった。
 天元台からアプローチする場合、リフトとロープウェイを乗り継いで入山する。今回の退却は、催行した旅行社にしてみれば採算の面から厳しいものになろう。
  
 私にとって、あの状況から西吾妻を抜けて縦走は考えられない。
 しかし、私は感じている。
 既に雷鳴が聞こえた状態から、30分程とはいえ梵天岩から前進したことはガイドとして適切だったのか。
 せめて西吾妻山頂を踏ませたいという考えは、よこしまなものでしかないのではないか。
 下りのリフトに乗りながら、旅行社の採算の面、そして私自身のガイドとしての甘さ、相対したことが頭の中をグルグルまわっていた。

 天元台のロープウェイ駅駐車場から、クライアント達が乗ったバスを見送る。
 見送りながら、皆を無事に下ろすことが自分の仕事だ、ともう一度自分に言い聞かせる。

 8月18日、全国で「不安定な大気」があちこちで悪さをしたようだった。
 槍ヶ岳では落雷で2名死傷。
 山形では月山と朝日連峰で、登山中の高齢者が熱中症でヘリ搬送された。

 栗駒山では、私と同じガイド団体の佐藤氏も激しい雷で一時待機。
 北アルプスに遠征中のガイドの師匠からは、朝の早立ちで難を逃れた、とショートメールで連絡が入る。
 「山の原則忘れないように」、と師匠からは戒めの言葉をもらう。

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 吾妻連峰・天元台は東北サファリパーク状態。
 子連れのニホンザルが5~6組、県道脇をウロウロしてました。

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コメント

 ご無事で何よりでした。
 夏山に雷はツキモノですが、平地と違うのは、どこからくるかわからないことですね。目の前の小石が横にピシッと飛んでいったとき、背筋が逆立ったのを思い出します。
 事故にでもなって、「ガイドがついていながら・・・」なんて言われるより、弱虫ガイドとでも言われたほうがいいですよ。
 お客さんたちも、きっとわかってくれます。

投稿: かもめ | 2012.08.19 21:18

re:かもめ様

<<事故にでもなって、

コメントありがとうございます。
お客や催行会社からあーだこーだ言われる覚悟は決めているのですが、西吾妻山頂を目前に引き返すタイミングが遅れたのでは、と猛省です。

 ガイド駆け出しの頃、白馬岳で九州から来たガイド氏がお客を死なせてしまった事故の翌日、大荒れの天候下で南会津某山のツアーを強行した経験があるのですが、それがトラウマでして、やはり悪天時は毅然と決断しなければ、と改めて感じます。

投稿: 聖母峰 | 2012.08.19 23:37

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