« リサイクル | トップページ | キム・ヨンド『登山家にとって山とは何か』 »

過去の自分と出会う時

秋田から一時帰宅。
立正大学山岳部でお世話になった古川監督から一通の封書が届く。
山岳部の森田OBが『体育会誌』のバックナンバーを大学図書館に寄贈され、その中から私が書いた文章をコピーして送って下さったものだった。

Ruac1

今読み返すと
「え?俺こんな文書いたっけ?」という硬い内容。
もともとこのブログ、アーカイブのつもりで始めたもので以下に内容を転載します。
興味のない方はどうぞ飛ばしてください。

--------------------------------------------
山岳部  主将 大滝 勝

 主将の言葉
 平成三年度、体育会山岳部はヒマラヤ山脈シシャパンマ峰(8027m)に登山隊を派遣、無事成功を収めました。私達現役部員も高度七千メートル付近まで到達し、貴重な経験を得ました。御協力下さった皆様方に対し深く感謝いたします。
 ところで、我部は部員の減少という事もあり、現役山岳部は事実上低迷状態にあります。
 後輩の諸君は自分自身の山登りの他に、次の世代への礎として、自分の能力を高めていってほしい。自分の目標をはっきり見出してそれに向かって努力してもらいたい。その過程において、楽しさだけでなく厳しさも必要だと思います。山の世界は大きい。視野を広げるためにも山の本を多く読んでほしい。特に遭難の記録・分析に目を通し、生命の大切さ山の怖さを常に自覚すべきである。
 山には下界に無い美があり、感動があります。山を通じて、学生生活を充実させてほしいと思います。

 合宿記
 「12月20日の昼ごろ」
 昼ごろから集まって合宿の準備をする。これから十日以上の衣食住と登るための道具をすべて、何の不足もなく、それでいて最小限の物をそろえるのである。そして人数分に荷物を分け、準備会恒例のじゃんけん大会で合宿は事実上スタートする。みなさんも知っている通り、登山はすべての荷物を自分たちで背負っていくのである。だから少しでも軽くしたいので、ジャンケンにも熱がこもるのである。そしてパッキングをすませ、いざ新宿となるのである。

 「新宿発23時50分発 急行アルプス」
 この電車は北アルプス方面に登山に行く人のたまり場である。新宿駅のホームには酔った登山者の群れがいっぱいである。自分達だけは別だと思っているものの、12月20日というわけで、他大学の友人等がけっこういて、声をかけられ、いっしょに酒を飲んで群の中へ入っていくのであった。

 「早朝の信濃大町駅」
 たいして寝れもせず信濃大町に着く。気合いの入った他大学はさっさとタクシーで登山口へ。我々は、まず恒例のセブンイレブンでお買い物。ここが最後の文明社会である。これから山には入ればちょっとセブンイレブンでお買い物ってわけにいかないのである。

 「風雪の北鎌尾根へいざ出発」
 とうとう登山口へタクシーで到着、頬に当たる冷たい風が心地よく気合いが入る。これからどんな困難が待ち受けているのか、まだ知らない我々は、意気揚々と歩き始めたのであった。

 平成二年度合宿報告
 初夏合宿
  谷川岳芝倉沢にて雪上訓練~平標山縦走
 夏山合宿
  剣岳真砂沢定着~槍ヶ岳縦走
 秋山合宿
  八ヶ岳 広河原沢奥壁~稲子岳南壁登攀
  小川山廻目平周辺にてフリークライミング
 初冬合宿
  富士山吉田大沢にて雪上訓練~山頂ビバーク
 冬山合宿 
  北アルプス槍ヶ岳北鎌尾根登頂
 春山合宿
  北アルプス白馬岳主稜~杓子岳小日向尾根下降

 平成三年度活動報告
 中国チベット自治区ヒマラヤ連峰シシャパンマ峰(8027m)に立正大学山岳部中国登山隊として、シシャパンマ中央峰(8008m)に10月4日登頂。
--------------------------------------------

・・・こんな文章書いてりゃ、やはり新入部員なんて入ってこないよなあ、と今現在の私は読んで苦笑いする。
当時はサークル全盛時代、体育会の各部は部員募集に四苦八苦していました。

 加藤文太郎に憧れて冬の北鎌尾根を何が何でも登りたかった私は、この年、5月、11月、合宿の12月と三度にわたり積雪期の北鎌尾根から槍に登頂した年。当時は今と違い、危なっかしく崩壊しかけた沢筋の道を湯俣からアプローチしていました。
 冬合宿のメンバーは私、平岡君竹内君という、今ではもはや考えられない超ウルトラスーパーゴージャスなメンバー(私除く)。当時から彼らは激強で、私はオマケです。

 古川監督が送って下さったコピーを読み、全く別人のような、それでいてなんとなく「ああ自分だな」と思う。
 それは、過去の自分と「向き合う」ことなんだな、と感じる。

 クライマーや自称冒険家には過去をふり返ることを忌み嫌い、またそれを公言する者もいるようだが、私はそうは思わない。
 時折は昔の自分をふり返ってみることも必要だ。
 以前の自分に比べ、何が変わり、何が変わらないのか。

 その手がかりとなるのは、写真よりも何よりも、やはり自分の書いた文章である。
 ある山岳ジャーナリスト氏が、亡くなった知人をふり返るためにその人が書いた文を読む、と書かれていた。使い古された言葉だが、やはり「文は人なり」なんだとあらためて考えさせられる。

|

« リサイクル | トップページ | キム・ヨンド『登山家にとって山とは何か』 »

アウトドア」カテゴリの記事

山岳ガイド日記」カテゴリの記事

日常」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21370/56186294

この記事へのトラックバック一覧です: 過去の自分と出会う時:

« リサイクル | トップページ | キム・ヨンド『登山家にとって山とは何か』 »