風の長井葉山
視界も効かないガスと雲の下、冷たい暴風。
クライアント達と「奥の院」から足早に下山、山頂小屋にて休憩をとる。
本日は、朝日連峰の南端、長井葉山(1237m)をガイド。
高気圧の張り出しを期待したものの、入山して稜線に上がったところで冷たい強風となる。
先月の虎毛山の失態を精神的に引きずったまま日数は過ぎていった。
幾つかガイド依頼も頂戴したが、私の日程と折り合わず依頼を見送っていた。
考えこんでも何かが変わるわけでもなく。
ちょうど文化の日の連休に長井葉山のガイド依頼を頂戴し、引き受ける。
ガイド山行前夜は、テナーサックスのバッハ「無伴奏チェロ組曲第1番」を何度も繰り返し聞きながら、パッキング、ガイディングのシナリオを練る。
今回の依頼は長井葉山、「おけさ堀」ルートから「白兎尾根」を下降する企画だ。
「おけさ堀」ルートは1600年頃に開拓された「朝日軍道」にほぼ重なる。
馬が通れるように開かれた道で、緩やかな勾配の道がつづら折りで延々と続く。さらに長井葉山は稜線が台地状でほぼ水平の道が続く。
様々なレベルの人間が集うツアー登山、初心者には脚への負担が少ないが、健脚者にはもどかしいまでの道のりになる。
あまりに緩やかで特徴的な地形もない、現在位置がわかりにくいルート、クライアントが知りたいのは現在位置と所用時間。ポイント毎に「ここから小屋までは◎◎分です」「今、小屋まで▲分のところまで来ています」「あと●●分で下山口です」とマメに行程所要時間を伝えることを心掛ける。
強風の中、奥の院に到達。
風と低温のため写真撮影の後は早々に戻り、小屋へ。
ちょうど小屋では-地元の方であろう-単独行の男性登山者が薪ストーブを炊いていてくれたおかげでクライアント達は温かく休憩することができた。
男性は自分で採取したという茸で味噌汁を作っており、それがツアーの女性客のハートを直撃。
白兎尾根を下山中、やはりキノコ取りの地元の方とすれ違い、ハケゴの中のキノコが主婦の皆様のハートを直撃。下山中も、後ろの女性客の会話からは「ナメコ・・・」「キノコ・・・」と会話が漏れきこえる。
ガスで全く視界が効かない頂よりも、ナメコの印象がよほど強かった様子でありました。
本日の日の入りは16時36分。
仕事で先週は長井市に滞在していたが、曇天では16時で薄暗くなる。
日没も考慮に入れて下山し、クライアント達の脚力も揃っていたおかげで、16時前には下山。
帰路のバスの中。
今回添乗でお世話になったSさんのバリバリきめ細かいアナウンスを聴きながら温泉経由で山形市へ向かう。
バスの中では、座席の近い方から登山靴の手入れ方法や雪山用具の購入などについて相談を受ける。
幾度かツアーを重ねるうちに、常連の方からも顔を覚えられてきていた。
いろんな相談を伺っていると、思う。
メディアやネット上では散々な言われようのツアー登山ではあるが、やはりツアーをきっかけに山を始める人々が存在する。
登山用具のイロハについて相談を受けるということは、登山文化を伝える役割の一端を担っているのだ、ということ。そしてそれに応えるためには、今持っている知識に留まるだけでなくて常に最新の情報と知識を身につけなければならないんだ、と。
山形市内でクライアントの皆様とお別れ、帰宅。
本日カミさんが用意した夕食は偶然にもナメコ汁。栽培モノだけどね。
ご近所からのもらいもので、菊の花のおひたしも食卓に。
冷たい強風に吹かれた、晩秋の山の帰りの私には色も鮮やかでした。
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ガイドネタ
朝日軍道の通る山、また地元の人が開削したいくつもの「堰」で知られる長井葉山。
山頂にはお社が二つあります。
ガイドブックには「葉山神社」としか書いてありませんが、下から見て左側のお社が葉山を祀った「葉山宮」、右側のお社が月山を祀った「月山宮」です。
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コメント
お久しぶりです。あいかわらず精力的な生活とHPには脱帽です。当地では今年の紅葉は赤がとても素晴らしく、近年にない輝きでした。剱にも雪がつもり始めました。こちらでもキノコ鍋が女性陣のハートを熱くするようです。天然ナメコのあのぬめり、なんか魅かれるものがありますね。
投稿: panawang | 2012.11.05 17:42
re: panawang様
<<当地では今年の紅葉は赤がとても素晴らしく、近年にない輝きでした。
panawang様のところでは紅葉が素晴らしかったとのこと、何よりでした。
こちらでは異常な猛暑、そして急な冷え込みのせいでしょうか、山の紅葉も遅く、色づきも今ひとつです。
<<こちらでもキノコ鍋が女性陣のハートを熱くするようです。
おおっ全国共通でしょうか?(笑)
引率した女性客の皆さんの会話を聴いているとキノコ採り=食材を採ってくる男性の姿が女性陣の心をくすぐるようで、あれって食材を狩ってくる男・料理する女という、はるか古代人の暮らしの記憶が我々の潜在意識に残っているような気がします。
投稿: 聖母峰 | 2012.11.06 22:56
おばんでございます。
キノコ中毒に今年初めて経験しました。
お約束どおりの
『ツキヨタケ』
だったのでしょう…
いい経験しました。
って、もう勘弁です…
解毒してからの方が、私は辛くて、
胃がかなり荒れて大変でした。
体を張っての、お勉強でした。
葉山の小屋は、こまめに掃除やマキの収集、
暖炉のメンテナンス等をなさっている
コアな方がいらっしゃいます。
なかなか、良い小屋ですね。
投稿: は。 | 2012.11.11 20:08
re:は。様
<<キノコ中毒に今年初めて経験しました。
でぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛~!!
もうお体の具合はよろしいのでしょうか?
ツキヨタケですか・・・
やはりやられる時はやられるんですね。
私も「各種」の体調不良は経験済みですがキノコはまだです・・・
季節の変わり目も重なり、どうぞお体大事にして下さい。
<<葉山の小屋は、
はい、以前訪れた際も現在も、綺麗に整理された小屋でした。地元の方のご尽力に頭が下がる思いでした。
投稿: 聖母峰 | 2012.11.11 22:15