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『遊歩大全』

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コリン・フレッチャー著、芦沢一洋訳『遊歩大全』が復刊とのこと。
田舎の山形では復刻版が書店に出回っていないため、旧版を改めて読む。

同書に関しては既に多くのサイト、ブログで語られているので、解説は要すまい。
「バックパッキング」を通じて「歩く」そして「アウトドア」の魅力が語られている。

高校山岳部から登山を始めた私が図書館で出会った、くだけた本。
それがシェリダン・アンダーソン、田淵義男氏共著の『バックパッキング教書』。
バリバリの山屋な山岳部の顧問に指導を受ける一方で、自由な気風を同書から学んだ当時高校生の私が、その流れで『遊歩大全』を手にするのは当然のなりゆきであった。

『遊歩大全』を初めて読んでから数十万年。
いまだに「強烈に」記憶に残っているのがストーブのプレヒートに関する記述だ。
コリン・フレッチャーの記述に、プレヒートで「直射日光で暖める」「手で暖める」という記述がある。

日光で暖める!
手で暖める!

なんておだやかな光景だろう。

私が登山の基礎、そして厳しさを学んだ高校、大学山岳部時代。
高校山岳部では安全のためケロシンストーブ「マナスル」、大学ではガソリンストーブ「ホエーブス625」を使用していた。

こうした登山用ストーブは点火する際、まず燃料を気化させるために「プレヒート」という作業が必要になる。
具体的には、小指大の固形燃料を燃やし、器具の燃料通過管を暖めるのだ。

冬山。
合宿で、極寒のテントで真っ先に起床してストーブを点火するのは下級生の仕事だ。
テントはぎゅうぎゅう詰めなので、シュラフに入りながら点火する、なんて芸当は不可能。
吐息も凍る寒さの中、シュラフから抜け出し、シュラフをたたみ、今自分が寝ていた場所にスペースを作る。
寒さに震えながら固形燃料を二つに折り、ストーブが暖まるのを待つ。
この待ち時間のつらさといったら!

そんな経験を積んできただけに、コリン・フレッチャーの「直射日光」「手の温もり」というプレヒートが、なんともメルヘンチックに、そして強烈に記憶に残っているのだ。

復刻版の『遊歩大全』で、今の若いアウトドア愛好家達は何を得られるのだろう。
同書の内容は、もはや現在の日本には装備や背景など古すぎることは明白である。
カメラを持たない「ノンフォトグラフィーの歓び」など、現在にも通用する「思想」があちこちにちりばめられている。
読む方々の経験やレベルに応じて、同書は-歩く旅に限らない-アウトドアの歓びを学べることだろう。

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コメント

 プレヒート、灯油バーナーですが、受け皿みたいなところに少量を出してマッチ点火、やや火達磨状態ながら燃え尽きるころバルブを徐々に開けるとOKですね。メタを別に持っていくのも面倒なので。雪山ではダメかな? 最近はガスが重宝で使わなくなりましたが。

投稿: かもめ | 2013.01.05 16:45

re:かもめ様

<<やや火達磨状態ながら
おおっ豪快なっ!
マニアの方には怒られそうですが、ススを詰まらせて何台もホエーブスをオシャカにしてましたんで、ススの出ないメタでのプレヒートをやってました。

<<最近はガスが重宝で使わなくなりましたが。
そうなんですよね。
20代で気合い入ってた頃は信頼性と火力でガソリンストーブ使ってましたが、カチャッ・プシッと簡単にボンベ接続→点火というガスストーブの利便性には降参でした。

 たまーに避難小屋なんかでガソリンストーブ使っているマメな方を見かけると、内心手を合わせて拝みたくなります。

投稿: 聖母峰 | 2013.01.06 19:29

今年もHP楽しみにしています。あの”デカイ”ホエブス見なくなりましたね。うちの仲間ではMSRは、目が痛くなるというものもいます。というわけで最近はガスばっかし。メタで予熱するまどろっこしい時間と、点火した瞬間のあの燃焼音がなつかしい。

投稿: panawang | 2013.01.07 20:34

re:panawang様
<<今年もHP楽しみにしています。

本年もどうぞよろしくお願いします。

<<あの”デカイ”ホエブス見なくなりましたね。
最近は減りましたが、一時期ネットオークションで高値で出まわっていましたね。それを見るたびに、学生時代オシャカにした台数を思い出して罪悪感にひたりました(笑)

<<メタで予熱するまどろっこしい時間と、点火した瞬間のあの燃焼音がなつかしい。

 夏山はいいんですけど、メタの余熱の時間は極寒の冬山ではなぜか長く感じるんですよね。
 ほんの一時期アルコールバーナーも使ってたんですが、何か物足りない。燃焼音が無いんです。
 火の燃焼音に安堵するのは、原始人以来の遺伝子に刷り込まれた何かでしょうか。

投稿: 聖母峰 | 2013.01.08 23:50

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