« 『Q』を呼べ。 | トップページ | Marek Klonowski、冬のナンガパルバット、シェルルートを語る »

サリー・ジュエルが政界入りする意味【OUTSIDE誌】

先日REIのCEOサリー・ジュエルが第二次オバマ内閣に内務省長官として就任するニュースを取り上げました。

日本のマスコミ各社にとってはREIがどのような企業か知らないのでしょう、「アウトドア小売業」のおばちゃんが政界入りというだけで、論評抜きの報道に終始していましたが、私にとって次の2点が気になっていました。

・なぜ政治経験の無いサリー・ジュエルという個人が選ばれたのか?
・サリー・ジュエルが政界入りすることは、アウトドア業界にとってどんな意味を持つのか?

幅広いテーマでアウトドアを取り上げる『OUTSIDE』誌が、突っ込んだ内容の記事を掲載しています。

Sallyjewellpresidentbarackobamawhit
ホワイトハウスで内務省長官任命を受けるサリー・ジュエル

WHAT SALLY JEWELL’S NOMINATION MEANS FOR THE OUTDOOR INDUSTRY by OUTSIDE誌2013.2.14

以下、超訳。
以下記事引用開始
------------------------------------

サリージュエルの政界入りはアウトドア業界にとって何を意味するのか
記事:Mary Catherine O'Connor

 昨年6月、REIのCEOであるサリージュエルは、ワシントン州知事クリスティーヌ・グレゴワール、ユタ州知事ゲイリー・ハーバートらの傍らに立っていた。彼らは西部州知事会において『アウトドア・レクレーションの経済的影響』を報告していたのである。

 報告によれば、アメリカ人はアウトドア活動に自家用車や自宅の光熱費よりもさらに支出していることが明らかにされた。2011年、アメリカ国民はアウトドア活動に6450億ドルを費やした。2006年には7300億ドルを示し、景気悪化から回復中ではあるものの、レクレーション産業においてアメリカは「経済大国」であることを報告書は示している。

 アウトドア用品業界内で多くの個人や組織が理解するように、経済の牽引力だけではない、環境保全の原動力でなければならない。コンサベーション・アライアンス(REI、パタゴニア、ノースフェイス、ケルティによって設立された団体)とアウトドア産業協会は、アウトドア活動を目的として公有地にアクセスする権利を保護するため、ロビー活動を行ってる。アウトドア産業協会は政治活動委員会を有し、強力なロビー活動なしには実現しなかったであろう公有地の保護を勝ち取っている。
 ただし、これはグレッグ・ハンスコムがハイ·カントリー·ニュース紙で解説するように、 2010年の中間選挙において西部でティーパーティー運動が勢いづく前、オバマ政権が連邦政府所有地に大規模な天然ガスプロジェクトを承認する前の話である。

 公有地とその活用について、アウトドア業界は石油·ガス産業との利害関係を一致させることができるのだろうか?ケン・サラザール氏が内務長官を離任することにより、答えは彼の後任者が出すことになるだろう。

 先週、ジュエルはケン・サラザール氏の後任としてオバマ大統領の第二次内閣に入閣した。この人選はきわめて異例である。エネルギー開発のための公有地、そしてレクリエーションや野生生物のための公有地。明らかに矛盾する内務省の任務の2つを橋渡ししようとする、オバマ大統領の戦略の一環である。
 ジュエルはREIに就任する前職は、銀行役員だった。さらにその前は、モービル石油のエンジニアだった。ビジネス、レクリエーション、エネルギー、これらの経験を積んだ人間がどれだけいるだろうか?

 ジュエルが入閣を指名された日、コンサベーション・アライアンスのエグゼクティブディレクター、ジョン・スターリングはコメントする。
 「彼女が指名されないなんて考えられませんね。私が想像するに民主党が推すでしょう。共和党は [彼女を承認しないために] あら探しをして議事を妨害しなくてはならないでしょうけど。」
 「当然のことながら、アウトドア業界の誰もが、私たちの中から内務省をリードする人物が出てきたことを嬉しく思います。彼女は非常に行動的です。アウトドア業界と石油業界の両方で積んだ経験は、エネルギー供給そしてレクリエーション目的の土地を保護するという相反する任務を果たす上で役立つでしょう。」とスターリングは語る。

 「任命は画期的な事です」
 ブラックダイヤモンド最高経営責任者(CEO)であるピーター・メトカーフはコメントする。
 「ワシントン、そして政界では沢山の事が起こる、象徴的な出来事だ。」ジュエルの任命はとても重要な事、と彼は付け加える。
 「彼女が銀行や石油産業で経験を積んできたことはもちろん、彼女が最初の最高幹部であることに間違いないのですが、それらは造られた実績ではないということです。 彼女の人生は、山や谷、岩場で多くを過ごし形成されてきました。公有地の最高かつ最善の利用はアウトドア活動の場として検討されているという現実に、政治が追いついたということなのです。」
 メトカーフはジュエルを「プロの友人」と呼ぶ。
 「ジュエルはREIのCEOとして常に注目を浴びていました。彼女は公共政策に関わり、実践してきました。彼女の率いるREIは素晴らしくリーダーシップのとれた組織です。業界を牽引し、いくつもの環境問題も解決してきました。」

数字のゲーム

 しかし、ジュエルはエネルギー開発から環境保全へと、どのように方針を切り替えていくのだろうか?
 それに答えるためには、まず国内の状況を把握する事が重要だ。
 「BLM (訳者注:合衆国土地管理局(Bureau of Land Managementの略称)管理の公有地において、内務長官は約2億5000万エーカーの公有地を管轄下に置いています。そのうち、ほんのわずかな領域だけが国立景観保全システムの一部に含まれます」
 NGOピュー慈善財団のBLMプログラムディレクター、ケン・レートが説明する。
 「約2億5000万エーカーのうち、保護されているのは11パーセント未満です。」

 BLMとは対照的に、米国森林局が管理する土地のほぼ半分は保護されている。もちろん国立公園局管轄の土地は非常に強力な保護下にある。保全対象として困難が予想されるのは、エネルギー開発が期待されるBLMである。国立公園局は深刻な財政難に直面している。いくつかの公園は閉鎖の危機にあり、ジュエルは国立公園部門を監督するうえで既に喫緊の課題を抱えている。

 「伝統的に、ある課題に対しては内務省よりも議会との結びつきが好まれます。しかし内務長官が実現できる真の保全活動があります。活動の余地はまだ数多くあるのです。」

産業界の結束

 NGOの Sunlight Foundationによれば、ジュエルはアウトドア産業協会に11,000ドルを寄付している。彼女はまた Initiative for Global Development や国立公園保護協会にも関わっている。政界入りする前は、彼​​女は積極的に民主党を支援し、都市公園などで子供達にアウトドア活動を奨励・推進する活動を通じ、オバマ政権とは密接に協力してきた。

 サリー・ジュエルは、オバマ大統領の第一次内閣の頃から内務省長官候補として噂されていた。
 しかし、メトカーフは今回の任命の方がタイミングとして彼女に有利だと言う。

 「オバマ大統領が環境問題に対して関心を向け直しているので、彼女の存在は効果的です。第一次オバマ内閣では、大統領は健康保険問題に翻弄されました。」メトカーフはまた、天然ガスの大規模な埋蔵量が明らかにされており、新エネルギー開発の圧力が軽減されていると考えている。

 「サラザール氏は残念ながら「ディープウォーター·ホライズン」(2010年のメキシコ湾原油流出事故)に任期の多くを費やさねばならなかったと思います。」
 内務省はプロジェクトが危険であるとする警告を軽視されたという報告を示していた。

 それは新たな始まりであり、彼女の時代の到来でもある。
 彼女は再選について心配する必要もなく、レクリエーションの経済効果を売り込むことが可能だ。彼女の采配の下、REIは店舗で利用する電源の2割を再生可能資源エネルギーから捻出し、年商20億ドルの企業となった。

 「サリーの秀でた能力の一つに、異なるグループの意見に耳を傾け、異なる視点を持つ人々との合意形成を図ることができる点です」
 NPCA(国立公園保全協会)代表のトム・キールナン氏は語る。
 内務省長官として采配をふるうという課題に対処するために、ケン・レートはこう語る。
 「彼女がREIで証明した手法が有利に働くでしょう。アウトドア産業界が待ち望む、まさに「日の目が当たる」瞬間でしょうね。」

------------------------------------
以上引用おわり

 日本のメディアはじめAFP通信も、サリー・ジュエルが任命されたのは、おっさんが多いオバマ第二次内閣に女性を採用し多様性を持たせるためだ、というスットコドッコイな記事を配信していましたが、OUTSIDE誌の報道では、サリー・ジュエルという個性を見込んでの政界入りということが伺えます。

 アウトドア関係者には大きな期待をもって受け入れられたサリー・ジュエルの入閣ですが、一方、ニューヨークタイムスの記事のように政治経験の無さを憂慮する報道も見受けられます。
 また彼女の前職、務めていた銀行がかなりダーティーな資金運用をしていたこと、彼女自身がエンロン(巨額の粉飾決算で2001年に破綻したIT・エネルギー企業)と関わる会社の役員を務め、多額の役員報酬を得ていたこと、また環境保護論者からは彼女は「石油業界の人間」であり、石油業界の喜ぶ人事=自然破壊の推進者、とする意見も挙がっています。

 なんでもかんでも反対反対というクルクルパーの左翼が多い日本の山岳界とやらでは、やたらと反体制な思想の持ち主が跋扈しているわけですが、サリー・ジュエルのようなアウトドア産業の第一人者が入閣して国政の采配を振るう立場に立つ、というのは彼の地での「アウトドア」「レクレーション」「余暇」に対する国民の認識・考え方の差異を感じます。

 私自身は実際にアメリカの海底油田リグや鉱山開発の現場を見学した経験があるため、サリー・ジュエルの経歴に非常に興味があります。
 石油開発の現場を経験した元・技術者が、内務省長官としてどのようにアメリカの自然保護に采配を振るうのか。引き続き注視していきたいと思います。

|

« 『Q』を呼べ。 | トップページ | Marek Klonowski、冬のナンガパルバット、シェルルートを語る »

アウトドア」カテゴリの記事

マ ス ゴ ミ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21370/56806881

この記事へのトラックバック一覧です: サリー・ジュエルが政界入りする意味【OUTSIDE誌】:

« 『Q』を呼べ。 | トップページ | Marek Klonowski、冬のナンガパルバット、シェルルートを語る »