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軍沢岳(いくさざわだけ)

3月も下旬。
今でなければ登れない山。

夏道が無い山、軍沢岳(いくさざわだけ)1193mを目指す。
昨年、ガイドでもプライベートでも通った最上(もがみ)の山々で、稜線から目立った山、軍沢岳。

Imgp0625m
日射しは時折さすものの、冷たい強風が吹く。
雪面は硬く凍りつき、一部は完全に透明な氷と化している。

Imgp0641m
強風が樹林を吹き抜け、昨夜積もった粉雪を巻き上げる。

Imgp0642m
夏道の無い山。熊のテリトリーなのだろう、爪痕を幾つも眺めながら登高する。

Imgp0644m
主稜線に立ち、頂上は目の前。
スキーシールも効かない氷った斜面に苦労した報酬は、誰もいない、足跡も無い、静かな山頂でのひととき。

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帰りの立ち寄り湯。
ガイドブックの記載では秋の宮山荘の紹介が多いようですが、今回は新規開拓も兼ねて少し離れた太郎兵衛へ。

Imgp0659

車を停め、玄関に入るとご主人らしい老人が立っていた。
「釣りですか?」
「登山です」
「えっ、一人ですか」
「はい」
「この辺で高い山というと」
「軍沢岳へ・・・」
「雪崩とか危なくないですか」
「はあ、気を付けてますんで・・・」
どうもご主人からは、雪山に一人で登ってきたということで呆れられてしまったようだ。

浴室は共同浴場のような大きさで、広くはない。
洗い場も一つだけ。(シャンプー、ボディソープ有)
大型浴場と違い、静かに入浴したい単独行者にはオススメの温泉。

帰り際、敷地内から車で出ようとすると、宿の女将さんらしいお婆さんがわざわざサッシ戸を開け、会釈して見送りして下さった。
立ち寄りの入浴客にすぎませんが、宿のご主人とのやりとり、女将さんの丁寧なお見送り。
静かな山行、人情厚い温泉のある東北の山に、ぜひどうぞ。

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山岳ガイド日記」カテゴリの記事

コメント

 はじめまして、単独での雪山、20年前の自分を
思い出しながら、読ませていただきました。
 諸般の事情で、雪山から遠ざかっております。

>「雪崩とか危なくないですか」
と問われる事への、正当な安全策を確立されていると
想像いたしますが、第一に挙げられるのは
何でしょうか。
 私の場合は、慎重な状況判断の上で、十分な
安全マージンをとって、進むか撤退するかを
決めていました。

 職業としてのノウハウでもあると思いますので、
もし、お教えいただけることがありましたら、
再開する日の糧としたいと存じます。 

投稿: nisimura | 2013.03.27 00:15

re: nisimura様
 コメントありがとうございます。
 
 まず私の活動内容は無雪期のトレッキングガイドが主体で、積雪期は今流行の「滑降を主目的」よりも移動手段としての山スキーをする程度、ということを明らかにして、お答えします。

>>>「雪崩とか危なくないですか」
>>と問われる事への、正当な安全策を確立されている>>と想像いたしますが、第一に挙げられるのは
>>何でしょうか

 地形と雪質に気を配っています。
(その程度であれば、nisimura様もやっている、と思われるかもしれませんが)
 今回の軍沢岳の記事、三枚目の画像は主稜線で撮影したものですが、最初画面左側の斜面から斜上して登るつもりでしたが、硬雪に新雪が積もった状態で、このまま斜上すれば雪崩れると判断、少し引き返してさらに傾斜の緩い尾根を遠回りして頂上に到りました。

 正当な安全策、ということでビーコン等の装備を挙げるべきかもしれませんが、3年前の2010年3月、一名の方が亡くなられた雪崩事故現場調査に立ち会い(http://everest.cocolog-nifty.com/gassan/2010/03/post-272f.html)、 
その規模と破壊力の大きさを間近に見た経験から、雪崩事故発生後の対処トレーニングも重要ですが、それ以上に雪崩を回避することも大事だと考えています。

 こちら東北の山はブナをはじめとする樹林帯での行動が多くなります。樹林帯の中でも知人が雪崩に遭遇していますため、基本的に傾斜のあるところでは注意しています。

 nisimura様が御事情により今現在山から離れ、また再開したいとのこと。
 ここ10年ほどで雪崩に対する装備(ビーコン、スコップ、プローブ等々)も年々改良され、なにより講習会など雪崩について学べる機会が格段に増えてきました。
 nisimura様のお住まいがどこか存じませんが、現在は日本各地で雪崩講習が開催されています。もし機会がございましたら、講習会で実技と講義を受講されることをお勧めいたします。

投稿: 聖母峰 | 2013.03.27 02:16

聖母峰 様

 早速のお返事を頂きまして、ありがとうございます。
 今は、「滑降」が流行っているのですね。
私が積雪期に登る目的は、森林限界を超えた場所で
雪洞を堀り、泊まってくることでした。
 場所は、長野県の乗鞍岳で、一応、3,000m到達を
目指して何年か登ったのですが、毎回、強風で
断念しております。

 当時のルートは、2,000mほどまで車で行き、
和カンジキと簡単なアイゼンで登り、雪洞の中で
一人鍋料理を楽しみ、雪の世界を満喫しておりました。
 丁度、今頃の時期、雪が締まった頃に何年か
通いましたが、この山は、転倒しても滑落の心配が無い
ゆるい傾斜のルートがありました。
 ですので、雪崩の危険は感じなかったのですが
単独行ゆえ、予期せぬアクシデント(穴に転落や、足の故障など)を、
最も恐れておりました。

 私は、単独行の場合、ビーコンの必要性を感じません。
最も大切なのは、這ってでも自力で下山するという、
強い心構えだと考えます。そのため、自分の能力と体力の
50%くらいで撤退しておりました。
 ビーコンは、誰かに助けてもらうことが前提の道具だと
思います。
 単独行は、誰かに助けてもらうことを除外して
行動すべきと考えます。
 遭難するような状況で救助に当たる方々に、
自分以上の危険を負わせたくないとも思います。

 20年前は、単独での雪山は異端視されていたと思いますが、
現在の状況はいかがでしょうか。
 講習会などで、単独行をも肯定するような内容なら
大変興味があります。

 私のような考えは、かなり偏っているはずなので
改めるべきでしょうか?

投稿: nisimura | 2013.03.27 22:29

re:nisimura様

 nisimura様の経歴や今現在の体力・技術を存じ上げないので、安易に答えるべきでない点もありますが、

<<20年前は、単独での雪山は異端視されていたと思いますが、現在の状況はいかがでしょうか。

いわゆる「未組織登山者」、山岳部や山岳会に所属していない方々の増加に伴い、単独登山者の人数は増えていると思われます。
 警察でも単独登山者の正確な入山者数は把握していないはずですが、毎年まとめられる遭難事故の統計報告では、単独登山者の事故増加が報告されていますので、単独登山者も増えていると私は推測しています。

 事故増加から行政や警察では単独登山は決して勧めておりません。これは20年前と変わりないと思います。

 これは私個人の意見ですが、私自身も単独登山を繰り返して積んだ経験もありますため、単独登山を否定する考えはありません。
 今現在、様々な状況に対処できる方を「自立した登山者」と山岳メディア等では呼んでいますが、そういった方は単独登山でもやっていける、というのが私の意見です。

<<講習会などで、単独行をも肯定するような内容なら
大変興味があります。

ちょっと私の書き方が誤解を招いたかもしれませんが、私が述べた「講習会」とは、雪崩について学ぶ「雪崩講習」のことです。これは座学と実技で雪の性質(実際に積雪を掘り、雪質を詳細に観察します)、雪崩発生時の対処法、レスキュー法、応急処置などを学ぶ講習です。
 この雪崩講習では複数人数での行動が前提ですので、私が過去に受けている講習では単独登山などの登山形態は特に問われていません。

<<私は、単独行の場合、ビーコンの必要性を感じません。

 同様の意見をよくお聞きします。
 ただ、山で事故に遭うのは自分だけでなく、他の登山者の事故現場に遭遇する可能性もある、という事をお考えいただければと思います。
 別にビーコン等器機の押し売りをする意図はありませんが、前述の雪崩講習はビーコン以外の知識、雪崩発生の仕組みやレスキュー方法等を学べますので、雪山登山の「今」を知る上でも参加をお勧め致します。

 nisimura様は過去に乗鞍岳を目指して幾度も引き返された事、また『救助に当たる方々に、自分以上の危険を』というお言葉から、慎重で真摯な方と推察致します。

 私は兼業とはいえガイドの資格を持つ者として、登山者の安全を確保するという使命を負っていますし、生命の危険を有する間違った場面に出くわせば注意義務も負う立場ですが、上から目線で人が積み重ねてきた経験を否定するつもりはありません。

<<単独行は、誰かに助けてもらうことを除外して行動すべきと考えます。

nisimura様の真摯な態度ゆえの発言と思いますが、現実には単独であれ複数であれ、危急時には警察なり消防なり地元有志なりの救援組織に救助・捜索していただくことになります。
 ビーコンのことはさておき、私は単独登山は山に登るのは一人でも、無事に登山を終えられるのは自分一人の力ではない、と考えます。

 また、『雪崩の危険は感じなかったのですが』とは、実際雪崩事故に遭った方がよくコメントする言葉です。
 私は積雪期の乗鞍岳の経験はありませんので確たるアドバイスはできませんが、斜面があれば雪崩の可能性があるとだけ申し上げます。

<<私のような考えは、かなり偏っているはずなので
改めるべきでしょうか?

 重複しますが、nisimura様の経歴や現在の力量をコメント欄では伺い知ることはできませんので、一般的なアドバイスしかできません。
 御自分の『能力と体力の50%くらいで撤退しておりました。』という謙虚な姿勢はそのままお持ち下さい。
 推察するに、御年齢は中高年の域の方かと思いますので、体力を落とさないようにトレーニングしていただき、いつか機会が来ましたらどうぞ山を再開して下さい。
 コメントされたような謙虚な姿勢でさらに雪山に取り組んでいただければ、いつか乗鞍岳の3000mラインもnisimura様を受け入れてくれると思います。

投稿: 聖母峰 | 2013.03.28 00:41

聖母峰 様

 長文のコメントにお付き合いいただきまして、
ありがとうございます。
 また、長くなると論点がぼやけてしまうようで
申し訳ございません。

 私が、もっとも強く思うのは、単独行の者は
99%無事に下山できても、1%の確立で遭難した場合、
そのまま山に眠るべきだ、ということです。
 遭難しても、救助して欲しいなら十分な数の
パーティーで登るべきだと思います。
 ビーコンを持参し、救助隊に掘り出してもらうつもりなら、
なおさらのことです。

 遭難のニュースで、単独で冬山に登り、動けなくなったからと、
携帯電話で救助を求めて来た。と聞きました。

 機器や装備が充実しても、精神は未熟なまま
なのではないでしょうか。動けなくなったらビバークし、
天候や、体力の回復を図るくらいの心構えは
当然のことです。

 突然現れて、議論を吹っかけているようで恐縮ですが、
聖母峰 様は、単独での雪山を実践されておられるので、
救助されることが前提のような登山者を、
どのように思われるかお聞きしたいと思いました。

投稿: nisimura | 2013.03.28 23:44

re:nisimura様

<<また、長くなると論点がぼやけてしまうようで
申し訳ございません。

 いえ、どういたしまして。こちらこそ長々とコメントして、ちょっと焦点がずれたようです。

<<救助されることが前提のような登山者を、
<<どのように思われるかお聞きしたいと思いました。

 nisimura様の御意見の背景は、最近のいわゆる「安易な」救助要請や登山者を思い浮かべてのことと思います。
 最近の遭難報道をみていますと、悪天候が続いたのに食糧の食い延ばしもせず救援を求めた等々、「え、そんなのありなの?」と思うことはあります。

 そんな登山者をどう思うか。
 甘いんじゃないの、と言いたくなりますが、四半世紀ほど登山を続けてきて、そういった登山技術や登山文化の継承にどれだけ力を注いできたかと聞かれると自分の責任も感じざるを得ないところもあります。

 nisimura様おっしゃる「動けなくなったら・・・当然のこと」という事が、登山を最近始めた方には知識や経験が伝わっていない現実があります。

 ですから、nisimura様の問い「救助されることが前提のような登山者を、どのように思われるか」
 そう尋ねられると、一刀両断に「甘いよ」と喉元まで出かかるのですが、どうしても歯切れが悪くなってしまいます。

 それでも私は「救助されること」に関しては肯定的に考えてます。
 その根本は、「山は人が死ぬべき場所ではない」と考えるからです。そう考えるに到ったのは間近で人の死をみてきたからなのですが、詳細を書くのはここでは控えさせて下さい。 

投稿: 聖母峰 | 2013.03.29 23:30

いい温泉ですね。わたし、源泉大好きです。
あぁ~づいのも大好き。
いまハマっているのは上山の公共浴場です。
先日ハマグリまで行けるかな…途中でソリ遊びでした。
明日からは新年度ですね。
いま、いろいろ考えることがあり
転職を思案中。
上手くいくのか、尻スベリで終わるか
久々の眠れぬ日々を送っています。

投稿: は。 | 2013.03.31 17:37

re:は。様

<<いまハマっているのは上山の公共浴場です。
 このブログ書き始めた頃は上山に住んでましたので、私もちょくちょく近所の公共浴場に行ってました。
 あのひなびた感じがいいです。
 最近どうも大型浴場の賑やかさがわずらわしいので、今回ちょっと離れた太郎兵衛に行った次第でした。

 どうぞお仕事の方、うまくいきますように。

投稿: 聖母峰 | 2013.03.31 21:14

聖母峰 様

 暖かな、広島の山をお楽しみのようで、何よりです。
 翻って、生き物の気配が途絶えたようにも感じる、
雪山の単独行にも、単独行ゆえの世界と達成感があります。

 私が最も恐れるのは、
>知識や経験が伝わっていない現実
の先に予想される、安易な登山による遭難報道の増加から、
「単独登山が禁止」されてしまうことです。
 幼稚な一面を持つこの社会では、実態より表面的な情報が
重視されてしまいます。

>「山は人が死ぬべき場所ではない」
には同感ですが、だからこそ、経験者や指導者は、
ネガティブな情報を強く発信するべきだと思います。

 わが中部地方で、数年前、高所遭難者の救助に当たった
ヘリコプターが、山頂付近で墜落しました。
 緊急救助のため、能力以上の機動を行ったとも聞きました。
 救助する側は、時にわが身の危険を顧みなくなることがあります。
 その遭難者がどうであったかはわかりませんが、
もし、安易な登山者が救助要請した場面でそんなことが起きたら、
あまりにも悔やまれます。

投稿: nisimura | 2013.03.31 23:40

re: nisimura様

<<幼稚な一面を持つこの社会では、実態より表面的な情報が重視されてしまいます。

 鋭いご推察、その通りですね。
 「単独登山」という登山形態がある日突然法的に禁止されるということは「可能性は」少ないと思いますが・・・今現在富士山で行政が「夏以外登山禁止」(法的拘束力は無いようですが)などと協議を進めているように、危惧される点ではあると思います。

<<ネガティブな情報を強く発信するべきだと思います。
 ガイドや山岳メディア等の業界では、やはり楽しい面を強調して伝えがちです。この点、御意見は率直にお受けしたいと思います。

 先年の救助ヘリ墜落は痛ましいものでした。
 ある消防関係者からは「(緊急時には)躊躇無く救援を呼んで欲しい」旨の意見を聞いていますが、nisimura様が強調されるように、「自分のことは自分で処理できる」登山者でありたい、また微力ですがそのような登山者の育成に関わりたいと思っています。

<<雪山の単独行にも、単独行ゆえの世界と達成感があります。

そうですね、とかく「単独行」は危険という烙印が押されがちですが、その価値観は登山文化の一部として尊重されるべきと考えます。

投稿: 聖母峰 | 2013.04.01 06:42

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