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SURFING THE HIMALAYAS

Surfing_the_himalayas FREDERICK LENZ著『SURFING THE HIMALAYAS』を読む。
ヒマラヤの写真を表紙にあしらえたこの本。
内容は、アメリカ人の若者がヒマラヤをスノーボードで滑降するためネパールを訪れ、そこでチベット仏教の僧侶と出会い、仏教を探求していくというストーリーである。

 こう簡単に書けば、「おおっ」と思うバックカントリー愛好者がいるかもしれないが、同書は問題人物による問題作である。私は表紙の「A SPIRITUAL ADVENTURE」の文字に不吉な予感がした(冷笑)

 実話を元にしたフィクション!
 著者は「ワールドクラス」のスノーボーダー!
 
 というわりには、あまりにお粗末な内容。
 そもそも、
 ・3時間ちょい登って山頂に到達。
 ・スノーボードで滑っていたら突然そこにMaster Fwapと名乗るチベット僧が現れる。
 ・チベット僧にいろいろ教えてもらうため、Hiking boots(mountaineering bootsではないらしい )に履き替えて下山。

 って、いったいヒマラヤはヒマラヤでも、どこ登ってどこ滑ってきたのよ?(具体的な山名・地域名は一切書かれていない。)
 「ワールドクラス」のスノーボーダーなら、記録くらい残さないの?

 この本、実はスノーボードによるヒマラヤ滑降よりも、仏教との出会いとその神秘に関する内容がメインなのだが、それにしてもさ、ジャッキー・チェンのカンフー映画に出てくる師匠じゃあるまいし、スノボで滑ってるところに突然チベット僧が現れてヘラヘラと奥義を見知らぬ外国人に教えるのか?
 まあ英語の勉強のつもりで読み進むが、このMasterFwapなる僧が前世のエピソードで「アトランティス文明」に言及し始める頃から、読む方もかなり脱力してくる。
 ちなみにこの本、Bookoffで暇つぶしに買いました。

Splash_left 著者フレデリック・レンツ(Frederick Lenz)氏は1950年生まれのアメリカ・カリフォルニア出身。コネチカット大学、ニューヨーク州立大学で哲学を学び、IT技術者、音楽出版業を経て、自らを「ラマ」と称し、禅と瞑想などを通じて仏教を広めることを目的とした新興宗教の教祖となる。
 本人いわく前世では、15世紀の日本、禅寺の僧侶だったと主張。
 何百人もの若い信徒を抱え、月額2500~5000ドルの「会費」を徴収、その活動内容は神秘主義に走り始める。
 新興宗教にはありがちですが、女性信徒を愛人に抱え、時には暴行まがいに寝室に誘うなどの例も報告されている。さらには信徒の人命も失われることになる。
 1984年、UCLAの学生が「Bye, Rama, see you next time.」という遺書を残し自殺。
 1986年、信徒が10万ドルの大金をレンツに寄付した後、蓮華座にて裸の自殺体で発見される。
 1989年、女性信徒Patty Hammond、Brenda Kerberが相次いで消息を絶ち、現在に至るまで行方不明。

 そして1998年4月、レンツ自身がニューヨークの海辺で自殺体で発見される。検視の結果、大量に薬物を摂取した痕跡が認められたという。
 彼の死後、動産・不動産含め1800万ドル(約18億円)の遺産の存在が発覚。これを巡り、レンツと結婚していたと主張する女性と遺族が裁判で争うことになる。
 いやいや、このレンツなる人物は禅と瞑想で何を学んだんだろう?
 なお彼の遺産は結局アメリカでの仏教振興に役立てられるため、彼の死後に設立された「レンツ財団」によって運営されている。

 ヒマラヤという存在は、登山はもとより、いわゆる「スピリチュアル」とか新興宗教に利用されることがままある。
 同書はまさにその典型。

 フレデリック・レンツ氏についてはアメリカのカルト関係サイトに詳しいので、知りたい方はそちらをどうぞ。
 日本でも「夢の実現」をお題目に支持を得ている自称登山家がいるようだが、似たような臭いがしてならない。

 ヒマラヤって、そこを訪れた程度で自己変革が叶うというほど、特別なトコなんでしょうか。
 西洋人にとっては、禅や仏教の神秘主義は自己変革への手段に見えるんでしょうけど、カルマやらニルヴァーナとか学ぶより、「普段の日常やご先祖様に感謝する気持ち」の方が大切な気がしますけどね。

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