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チャイナドレス 秘められた民族史

Ch 11月4日、東北芸術工科大学を訪問。
謝黎コレクション展 北と南ま混淆 ~旗袍(チャイナドレス)に隠された近代中国の歴史~』を見学。
爺の介護生活と家族サービスの合間に時間をやりくりして、ようやく公開最終日に間に合う。

 これは東北芸術工科大学専任講師・東北文化研究センター研究員である謝黎(しゃ・れい sha rei)先生が所持している約800着のうち、150着をセレクトして展示したもの。
 
 チャイナドレスといえば、スリットに太ももも露わなセクシー系を思い浮かべる方がほとんどと思われるが、今回展示されているのは、清朝末期の王宮のドレスから、1920~40年代のチャイナドレスがメインである。
 そもそもチャイナドレスは清朝社会の旗人(満州族を中心とする貴族階級)が着用していたワンピースに由来する。清朝時代、ワンピース型の旗袍(チャイナドレス)は満州人、ツーピース型の「上衣下裳」は漢人が主に着用していた。

 展示品の中には、漢人のツーピース「上衣下裳」に似せたワンピース型の「奇装異服」なるものが現れ、チャイナドレスが次第にツーピースからワンピースに変遷していく歴史が伺える。

 会場内は写真撮影厳禁。
 野帳に特筆すべき解説文をメモっていたところ、一人の女性が近寄ってきて詳細に説明してくれる。
 ひととおり解説を伺ってからお名前を尋ねると、この展示会の企画者である謝黎先生ご本人であった。
 展示会に行く前から抱いていた疑問点について質問させていただく。

 文革の時代、チャイナドレスは大陸では完全に消滅したのではないか、という問いに対し、文革の弾圧により、多くのチャイナドレスが鋏で切られ、廃棄されたという。所持していること自体が生命の危険を意味した時代であり、今現在この会場に展示されているドレス自体、貴重な残存品であるとのこと。

 そしてスケベオヤジみなさま共通の疑問点、「チャイナドレスのスリットの長さって、何か決まりとかあるんでしょうか?」
 先生の回答: スリットの長さは流行や歩きやすさで左右された。チャイナドレスの職人は、映画に登場する女優のドレスを参考に作っていた。戦前の上海では、ヨーロッパ・フランスのファッション情報が三ヶ月遅れで上海に伝わっており、ヨーロッパのファッションの影響も受けていた。 一時期、現代風の太もも上までスリットのあるドレスを一人の女優が着用して話題になったものの、生活上支障があるため、すぐに廃れた。チャイナドレスのスリットは、もともとは騎馬民族の衣装から影響を受けたもの。ちなみにチャイナドレスはエリ、袖、スリット長で年代が区別できる。
 等々の解説をいただきました。

 企画者本人である謝黎先生と直接お話できるのが、こういった展示会見学のありがたさである。
 もうひとつ、展示会やマスコミに流れていない情報として、我が山形県・米沢の産品である織物、通称「米織(よねおり)」も、戦前チャイナドレスの生地として輸出されていたらしい、というお話も伺う。

 文革で消滅しかけたチャイナドレスは、80年代の改革開放政策と同時に現代中国に復活する。
 改革開放政策開始から約十年後、中国登山のために四川省・成都に滞在したときのこと。
 登山隊は観光客とは区別され、いわゆる「招聘ビザ」で国家体育局から招かれるという形式で中国に滞在する。
 宿泊先のアレンジはすべて中国当局にお任せ状態。成都では予定していた宿に諸事情で泊まれないとのことで、アメリカのカーター大統領も宿泊した錦江飯店というホテルに宿泊「させられ」ることになった。
 その錦江飯店のエレベーターガールがとても綺麗な女性で、ばっちりチャイナドレス姿だったのだ。
 当時まだ20代で性欲と食欲の塊だった私は、しっかり彼女とツーショット写真を撮影してもらってました。

 展示会の帰り、実家に立ち寄り、その時の写真を確認してみると、錦江飯店の彼女は膝からかなり上に切れ込んだセクシーなチャイナドレスを着こなしている。
 
 『旗袍は私たち日本人が理解する表面的なものではなく、民族間の価値の抗争と変化の融合を見事なまでにみせてくれる』
 展示会の中で東北文化研究センター教授・田口洋美氏は総括している。
 まさにそのとおりなのだろう。
 そう思う一方、文革で弾圧され、消滅したはずのチャイナドレスが90年代初頭には豪華ホテルで外国人客の接客という舞台で「中国の象徴」として用いられていた点に、満州族の衣裳すらを文化として呑み込んだ漢族のしたたかさを、私は垣間見る気がする。

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