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キャンプ場に暮らす人々 ~シェールオイルは、人々を幸福にするのか?~

 日本の経済学者やエコノミストと呼ばれるおっさん達が、アメリカのシェールガス、シェールオイル「革命」とやらで、マスコミでブイブイ言ってるようだ。

 それでは、その「革命」原油産出地の実態はどうなのか?
 日本のネクタイ締めた評論家どもが、経済という「数値」でしか語ることはないシェールオイル産出地の実態が、今夏 The Fiscal Times で明らかにされている。

The Dark Side of North Dakota’s Oil Boom by The Fiscal Times 2013.8.16

以下超訳
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1
(訳者注:画像人物の顔は伏せてあります)

 カナダ国境から7マイル(訳者注:約11km)、ノースダコタ州・ウィリストン。

 新開発の技術により、何百万バレルもの原油生産が可能になり、地域経済に数百万ドルの利益をもたらした。
 過去5年間に450万バレルの石油が生産され、75,000人以上の雇用を産み出している。地方税を潤し、数百もの新規事業に拍車をかけた。
 この地域の昨年の平均賃金は、2002年の24,841ドルから3倍以上となる78,364ドルとなった。

 どんな所でも人々が働き、金が使われていく。売りに出されて数秒後には、家は買われていく。車のディーラーにはトラックの新車の在庫は無い。レストランはかつて無いほどに忙しい。マックでさえ、アメリカでもトップクラスの売上げを記録した店舗となった。

 しかし、誰もが石油ブームの恩恵を受けているわけではない。

 トレントン湖キャンプ場。一見、典型的なアメリカのサマーキャンプスポットのようだ。湖のそばに木製のピクニックテーブル、芝生のキャンプ場にテントがあり、遊具も備えられている。
 だが、滞在している人々、家族の大半は休暇で来ているわけではない。彼らには住む場所がないのだ。

 ユタ州からやって来た7家族のうちの1家族、3歳の幼児と11ヶ月の乳児を連れた彼らは、バンと小型テントに住みこんで2週間になる。
 他の人々と同様に、アンダーソン一家はノースダコタ州で良い雇用先を見つけた。父は溶接工として働いていたが、寝室3部屋の物件でこの地域の平均家賃月3000$をまかなう余裕はない。企業が労働者用に用意した通称「丸太小屋」と呼ばれるプレハブ住宅も、賃貸料は月額約2000$を要する。アンダーソン一家は、キャンプ場が閉鎖され気温が劇的に低下する9月1日までに、住む場所を探さなければならない。

 原油ブームに沸くノースダコタ州のホームレス(車両に寝泊まりしている人々を含む)の人数を把握するのは困難だ。
 ノースダコタ州の「ホームレス連合」によれば、2008年の832人から今年1月で1433人、72%増加した。比較するならば、ノースダコタの8倍の人口を擁するミネソタ州のホームレス人口が約2500人である。


新興都市の誕生

 問題は需要と供給の問題といえる。2007年、ウィリストンは人口約13,000人の草原にかこまれた小さな田舎町であり、80年代の短い原油ブームが去った後は衰退の一途だった。それが、全国各地から何千もの人間が集まる原油ラッシュの中心地になろうとは、誰が想像したことだろう。

 求職者が来て、使用可能な住宅は満杯になり、家主は家賃を2倍、3倍に引き上げても物件は売れていった。寝室2部屋のアパートも月約500$から2500$にはね上がり、古くからの住人でも低所得者やカードの信用履歴に問題がある者は、生活のためにキャンピングカーやテント暮らしをすることになった。
 ある時から、地元のウォルマートの駐車場はトレーラーパークのようになり、図書館の敷地はキャンプ場のようになった。
 しかし、不況時のテント村とは異なり、住人のほとんどが仕事を持っていたのである。

2
ウォールマート駐車場を占拠する、ホームレス達の車両(The Fiscal Times、画像はgoogle mapより)

 2012年の記録では、市では4億7000万ドル相当の建築許可を出している。しかし建築のペースが追いつかず、その一方で新たな人口の流入は止まらなかった。たとえ多くの新しいアパートが建ったとしても、賃料は下がらない。
 2012年には、買物客からの多くの苦情を受け、ウォルマートは駐車場からホームレスを一掃した。市は、自動車、テント、施錠されていないトレーラーに宿泊することを禁止した。

 地元「救世軍」スタッフのヨシュア・スタンスベリーは語る。「彼らはここで生活して最後の所持金も使い果たしました。どこにも行くことができないんです。」

 原油ブームまでに家を購入していなかった、多くの古くからのウィリストン市民もまた、自身がホームレスとなり、キャンピングカーに住んでいる。10年にわたり、寝室を3部屋備えたアパート住まいだったロンダ・コームズと彼女の家族は、突然に家主が家賃を倍の3500$に増額したため、今は親の住む実家の裏庭にキャンピングカー住まいである。
 ロンダはウィリストンで育ち、地元のカーペットクリーニング会社で働いている。夫は、公園やレクリエーション地区で働いている。「私達は共働きですが、私も彼も油田とは縁がありません。」彼女は地元メディア紙に語った。「36のこの歳になるまで、この街の欲望のために家族と堪え忍ばなくちゃいけないなんて、思いもしなかったわ。」

 市にはホームレスの収容施設は無い。市議会は建設を議論したが、多くの住民は、完成した際にアメリカ各地から多くのホームレスが集まることを懸念する。

 町の小さなルーテル教会では、雨の中、男性の集団が中に入ろうとドアの側にうずくまって待っている。中では、靴下がイスにぶらさがり、寝袋がテーブルの間の床に押し込まれ、敷かれている。現在、約29人の男女がここで夜を過ごす。教会は市のホームレス収容施設になりかけてる。別の協会では、56人が教会に宿泊、廊下にまで宿泊者があふれ出ていた。 市当局はその状態を規約違反と判断、人数を29人に制限した。

 暫定的な「避難所」を運営するジェイ・ラインケ牧師は、教会にシャワー施設が無いため閉鎖される危機に直面している。
 「彼らは家族に奉仕する夫であり、父親なんです。彼らには収入が必要であり、働く意欲を持っています。救いの手をさしのべるのは、私達の義務です。」
 教会は毎日、新たな訪問者で満杯になる。「彼らを追い出さなければならないなどと、想像できますか?」と風速40マイルの雷雨が外で降り続くドアを示し、彼は語る。

 地元の救世軍は流入者を助けるため、2010年の40,000ドルから2012年には196,000ドルに予算を増額した。しかし住む家が無ければ、できることにも限界がある。
 「私達は、避難所としてではなく、食事のような基本的なニーズで支援しています」スタンスベリーは語る。
 (中略) 冬は気温が-40度になることもあり(訳者注:原文では-40°Fとあるが、ノースダコタ州の年最低気温は摂氏-40度のため表記ミスと思われる)、速やかに居住地を持たないことは生命の危険を意味する。
 「私はフロリダとジャマイカ出身の人々に説明しました。冬に慣れている人々でも、ノースダコタの冬は違います、と。」

 市当局が教会の避難所を閉鎖するならば、ラインケ牧師は段階的に縮小するため、1ヵ月の猶予を与えると言う。 多くの人々が仕事や家を見つけていくが、それ以上の人々が彼の教会にとどまり、日雇い労働も見つけられず、多くの男たちが何ヶ月も教会で夜を過ごしていった。そして、牧師は彼らに退去するよう頼まなければならなかった。
 数人の男性は、教会を出た後に行方不明となった。
 そして彼は、彼らが自ら命を絶つことを心配する。「ここは厳しい場所です。彼らは自分たちの人生を変え、私達の支援を必要とする人々なのです。」

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以上引用おわり

 昨年10月、日本の秋田県においてシェールオイルの試験採掘が成功した際、ちょうど私は長期出張で秋田市に滞在していた。
 日本の主要メディアの「これで石油問題が解決する」といわんばかりの大騒ぎぶりには首をかしげたものだ。地元の秋田魁新報などは冷静な見方を示していた。
 
 ここで注意されたいのは、今回The Fiscal Timesが報じた「The Dark Side of North Dakota’s Oil Boom」は、住宅の供給が追いつかないという労働(環境)問題であり、エネルギー問題ではない。
 しかし日本の経済学者やエコノミストが数字を挙げて「革命だ」「エネルギー供給の改革だ」などと論ずる、アメリカのシェールオイル生産の陰に、こうした労働者問題が潜んでいることを忘れてはならない。

 アメリカのアウトドア販売店REIからアメリカ政府の内務省長官にヘッドハンティングされたサリー・ジュエルおばちゃんは、ネイティブ居留地問題から象牙密輸対策、国立公園保全まで、全米各地を飛び回って活躍中。
 元・石油技術者のサリーおばちゃん、「一夜にして化石燃料から自然エネルギーへの変換など不可能」と断言し、環境保護論者が懸念する、シェールオイル・ガス開発に不可欠な「水圧破砕技術」を容認する姿勢を取っている。

 最新の情報では、アメリカ国内のシェールオイル・ガス開発も、価格が下落方向に進み一段落している段階である。
 しかしThe Fiscal Timesが報じたようなホームレス達は、社会格差という点では日本より遙かに深刻な問題を抱えるアメリカ社会においては、原油開発が継続される限り減少することはないだろう。
 彼らのその後については、どのメディアにも報じられてはいない。

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