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「いがもち」東西考

「いがもち」、といえば、山形県人にとっては蔵王温泉の代名詞である。

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今シーズン、子供をスキーに連れて行った際に蔵王で買い求めた「いがもち(稲花餅)」

仕事や所用で蔵王を訪れた際には、地元の山形市民でもちょっとした土産として買い求める。
土産物屋用に開発された菓子とは一線を画す、山形市民になじみの菓子だ。

私が現在滞在している、広島県呉市。
ここでも「いがもち」が伝統食(菓子)として親しまれている。

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呉市・高砂屋で買い求めた「いがもち」。
呉のいがもちは、飾りの餅米が黄色だけでなく紅色、緑色の三種類あるのが特徴だ。

山形、広島・呉。
なぜこれほど離れた土地で、「いがもち」が伝統菓子として存在しているのだろう。
そもそも、山形と呉では「いがもち」のあり方が異なる。
山形では蔵王温泉の土産菓子だが、呉では秋祭り、神社参道の露店や和菓子店で売られる季節商品だった。
飾りの餅米も異なる。
山形蔵王では稲の花のシンボルであるため、色は黄色以外にありえない。
ここ呉のいがもちは、黄、紅、緑の三色。祭りなど「ハレ」の食の象徴であろう。
また山形のそれに比べて圧倒的に多い飾りの餅米は、田畑に乏しい呉では祭りの時だけでも餅米を食べたいという理由から餅米が飾りに使われた、という説もうなづけるものだ。

呼び名のルーツも異なる。
蔵王の「いがもち」は前述の斉藤孫七の子孫が蔵王の繁栄を祈願して「栄華餅」とし後に飾りの餅米粒から「稲花餅」に改めたといわれる。
呉では諸説のいわれがあり、「神社の露店で買い求めた餅を僧が食べたところ胃の病がよくなった。胃がもつ→いがもちになった」説もあれば、呉市でいがもちの老舗で知られる大原製菓のご主人の談話として「形状からして名前の由来はイガグリのいが」ともいわれている。

 いがもちに関して学術論文を発表している名古屋女子大短大部の遠山佳治氏によれば、東北から九州まで16カ所の土地でいがもちの存在が確認されている。この時の調査では中国地方は未確認とされているので、実際には20カ所ちかくにのぼる。

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山形蔵王でみられる看板。
実は「いがもち」という名称は九州の菓子店に商標登録されているため、蔵王の土産物屋の看板では「稲花餅の里」と語尾に「里」を付けている。


 呉市の位置する中国地方では他に岩国市、松江市で伝統菓子として「いがもち」が存在する。呉、岩国ともに餅の表面に着色された餅米がふんだんに飾られている。松江のいがもちは飾りが椿の花を模したもので、山形県人がイメージするいがもちとはデザインが大きく異なる。

 これら全国各地に点在する「いがもち」。いずれも知名度は局所的で、起源・由来がはっきりしないものが多い。
 先の遠山氏によれば、文献に出てくる日本最古のいがもちは1693年(元禄3年)刊行の「男重宝記」という文書。遠山氏の説では、幕末から明治にかけて、京都の菓子店あたりから全国にひろまり、現在のいがもちになったのではないか」と推測されている。(中國新聞記事より)

 一方、蔵王のいがもちは天保年間(1830~1844)に斉藤孫七なる人物が伊勢参りの帰路、伊賀国の茶店で食した笹餅に感激、店の主人に製法を教わり帰郷、これがルーツといわれる。

 私個人の推測では、いがもちという菓子の拡散は、「伊勢参り」という、江戸時代の日本を広大な範囲でカバーした宗教行事がヒントなのでは、と考えている。
 餡を包んだ餅に着色した餅米を飾る。名称、そしてこのシンプルなデザインの共通性からいって、各所で発生したわけではなく、なんらかの伝搬経路が存在していたのではないか。
 伊勢参りだけではない、各種宗教にまつわる長大なルートをたどる参拝行事に伴って、菓子も有志によって伝えられたのではないだろうか。

 ま、なんだかんだいっても単に甘いもの食いたいだけの話でした。
 呉の和菓子店、祝い事の贈答品やかつての軍関係者で賑わったんでしょうかね。紅白餅とか一升餅とか飾られてあって、好奇心をくすぐるお店がいっぱいであります。

参考文献
 タカミヤグループ創業290周年刊行会発行「蔵王よもやま話」H18年
 呉市総務部秘書広報課発行「グラフ呉 みて☆くれ」第6号 H11年
 中國新聞社発行 中國新聞2000年5月11日夕刊 山岡達記者執筆記事「名物いがもち全国に点在」

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