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春の贈り物

伯耆大山・弥山の頂上を目指す。
登るにつれ、素晴らしい雪稜となる。

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6合目から北壁側を望む。
強風。
凄い勢いで、灰色の雲が稜線に覆いかぶさる。
そして登山ルートにも強風が吹き荒れる。

耐風姿勢を繰り返し、時にはアックスをダガーポジションに持ち替えて前進。
弥山避難小屋に到着。
弥山とされるピークは、もう目の前のはずだ。

強風で地吹雪状態となり、周囲数メートルも見えない視界不良。
振り向いても、今通過したはずの避難小屋が全く見えない。
ピークは目前だが、これ以上進むのを止め、コンパスで方位を確認し、避難小屋のある「はず」の方向に進む。

立っているのがやっとの強風。
避難小屋の脇、吹きだまりのところで強風をやり過ごす。
風が弱まるのを待つ。

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一瞬の晴れ間、目前に「弥山頂上」とされているピークがみえた。
急いでそこまで往復。
話しかける相手もいない。
視界もなく眺望もない。
頂上に立てた喜びは、後でいい。
頂上稜線で天候待ちのため30分以上費やした。
いつもの私の流儀ではない。
「登頂」にとらわれすぎた自身を反省しつつ、風の弱い安全圏を目指し、急ぎ下降する。

6合目避難小屋周辺は、登ってきた登山者でいっぱいだ。
さらに高度を下げ、5合目直下の急斜面が終わるあたりで一服入れる。

大山は中国地方でも貴重なブナ林を有する。
ブナ林の中で、ようやく一息つく。

コーヒーを飲もうとザックを下ろす。
サイドポケットはじめ、ザックのあらゆる隙間に硬く雪が詰まっている。
先ほどの頂上稜線での地吹雪を、あらためて思う。

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鳥のさえずりが聞こえるブナ林の中で、コーヒーを飲む。
暴風に荒れ狂う雲が去り、少しの間だけ日が差した。

ピッケルやアイゼンを駆使してカリカリに凍った稜線を登るよりも、私にとってはブナ林の静寂の方が素晴らしい。
私がガイドとして伝えたいのは、恐ろしいだけの冬山ではなく、こんな静かな山、落ち着いた安らぎなんだ。

帰路は自然観察をしながら下山。

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枝折した中に、うまく住み着きましたねホコリタケ。

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山はまだ冬の装い。一つだけ見つけたヤナギの花序。

宿に帰り、シングルルームの部屋いっぱいに装備とウェアを広げ、乾燥させる。
テレビニュースでアナウンサーが伝える。
「本日、気象台は、中国地方に春一番が吹いたことを発表しました。」
登山用具をひろげながら、頂上での風を思う。

宿の前では、梅が咲いている。大山の春も、もうすぐか。

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