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女性たちのアンナプルナ

De1SUE LEATHER編著 『DESERT MOUNTAIN SEA』を読む。これはオーストラリア大陸ギブソン砂漠をラクダで横断したRobyn Davidson、1978年アンナプルナ登頂を目指すアメリカ女性隊を率いたArlene Blum、ヨットで単独世界一周を果たすNaomi Jamesの物語をまとめたもの。
 この本はOXFORD BOOKWORMS LIBRARYシリーズの一冊で、英語学習者のリーディング教材として作られているため、平易な英文で読みやすい。

 さて、この本を購入したのはもちろんアンナプルナ登山隊の記録が目的である。
 原著は隊長のアーリーン・ブラム Arlene Blumが書いた『 Annapurna: A Woman's Place 』は神田神保町の古書店でも見かけるので、読んだ日本の岳人も少なからずいるだろう。 『DESERT MOUNTAIN SEA』に収録されているのは、Arlene Blumの著書のダイジェスト版である。

 1978年、アメリカ人女性で結成された登山隊はアンナプルナ北面からの登頂を目指し、ポストモンスーンのネパールに向かう。
 成功すればアメリカ人初、そしてアンナプルナの女性初登となる。
 デナリ、そしてヒマラヤのトリスル峰で経験を積んだアーリーン・ブラムを隊長として、一般公募で集められた女性クライマー達。
 カトマンズでの登山隊準備から様々な難問がアーリーン・ブラムに降りかかる。
 ベテラン女性クライマーが購入した食料品リストを確認、そのずさんさに「今すぐ肉とフルーツ買ってこいやゴルラァ!!」とアーリーン激怒。いやいや、女性の買い物巡る口論は恐ろしい・・・
 隊で最も高所経験のあるAlison Chadwickはシェルパレス、女性だけでの登山活動を主張、安全と登頂成功を優先するアーリーンにシェルパの雇用を説得されることになる。
 若い女性隊員がネパール人コックと恋に落ちる。笑いながらもアーリーンは隊長として言う。
「登山隊のルールを忘れないで。 恋 愛 禁 止 よ !
キャラバン中の雨にポーターが不吉な前兆を感じストライキを起こす、etc・・・
 様々な障害を乗り越え、彼女たちはアンナプルナに入山、登山活動開始。
 彼女たちはアンナプルナ北面、「ダッチリブ」をルートとして選択する。

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1978年のアメリカ女性隊登頂ルート。赤い×印は第二次アタック隊の事故発生場所。

 1978年10月15日15時30分、2名のシェルパを伴いIrene Miller、Vera Karmakovaが登頂。登頂メンバーに予定されていたPiro Kramarは凍傷のため、冷静に登山活動を断念。
 入れ替わりに第二次登頂を目指したVera watsonとAlison ChadwickはC4からC5に向かったまま消息を絶つ。
 10月20日、捜索中のシェルパが二人の遺体を発見。約500m滑落したものと推定される。
 そしてアーリーンは無線でシェルパに言う。
『Come back down, There's nothing you can do. 』

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ベースでのアメリカ女性隊。後ろ右端が隊長のアーリーン・ブラム。

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登山隊撤収時、還らなかった二人の名を刻むアーリーン・ブラム。
 
 
 この『DESERT MOUNTAIN SEA』に収録されたアンナプルナ登山隊の記録は、ダイジェスト版とはいえ1970年代の8000m峰登山隊の様子がよく描かれています。
 日本の山屋な皆さん既にご承知のように、アンナプルナは雪崩が多いことで知られていますが、隊長のアーリーンもメンバーも雪崩に対してかなりナーバスになっている状況がうかがえます。

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現在のアーリーン・ブラム

 原著『 Annapurna: A Woman's Place 』はナショナルジオグラフィック選定の冒険・探検に関する文学作品100に選定されるとともに、今春はポーランドでも出版された名作です。
 多くの記録では「アメリカ女性隊」とされていますが、実情は様々な出身地の女性によって結成されたチームでした。登頂に成功したVera Karmakovaはチェコスロバキア出身、悲劇的な最期を遂げたAlison Chadwickはポーランド人のご主人を持つイギリス人でした。

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ポーランド語版『 Annapurna: A Woman's Place 』の装丁

 隊長のアーリーン・ブラムはカリフォルニア大学出身の化学者で、ニューヨークタイムスやハフィントンポスト、ネイチャー誌に寄稿している文筆家。化学者としての業績は、子供用パジャマに難燃性薬剤として用いられた化学物質の発癌性を明らかにし規制へとつなげた事が評価されています。

 この登山隊の裏話としては、登山隊の資金約8万ドルの4分の3を、登山隊のTシャツ販売で捻出したことでしょう。
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 時代は女性の地位向上運動真っ盛りの1970年代、Tシャツロゴの「a woman's place is on top」が多くの人々にウケたようです。

 登頂に成功したものの、第二次隊の2名が死亡という悲劇に終わった隊ですが、『DESERT MOUNTAIN SEA』収録のアンナプルナ隊の記録も平易な英文ながら隊長の苦労や不安が描かれ、読み応えのあるものでした。

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