香港 マクリホーストレイルを歩く
研修3日めは丸一日、待望のフリータイム。
単独行動をとらせてもらい、香港4大トレイルの1つ、マクリホーストレイルを目指す。
香港で山登りといえば、「香港に山があるのか?」と思われる方が大部分かもしれない。
東京都の半分といわれる大きさの香港、総面積約1100km2の6割は山岳地で占められている。
植民地時代に香港警備に当たったのは、ネパールのグルカ兵たち。彼らはチャリティ目的のトレイルラン大会を開催、香港には独自のトレイルラン文化が根付いている。
何より、イギリス統治時代の総督がハイキング好きだったことが香港の山が整備される大きな契機となる。
今回めざしたマクリホーストレイルも、ハイキング好きな第25代総督(1963-1965)マレー・マクリホースの指導により開拓されたものだ。
赤いラインがマクリホーストレイル。全長100km、10のセクションに分かれている。
今回の計画は、魅力的な漁師町・西貢(サイコン)をベースに、マクリホーストレイルの中でも豪快な稜線歩きのコース・セクション4を歩き、途中から別の自然歩道『馬鞍山郊遊徑』を経由して西貢に下山する周回コースをたどる。
ホテルの朝食はキャンセル、早朝出発し、近所のコンビニで買いだし。
小巴(ミニバス)と呼ばれるマイクロバスを拾い、九龍から西貢に移動。西貢でタクシーに乗り換え、マクリホーストレイル・セクション4の登山口「水浪窩(Shui Long Wo)」へ。
タクシーを降り、水浪窩に到着。さあここから山歩きだっ!と意気込んで振り向くと、
鼻輪も刻印も何も無い、立派な角の野良牛が。
あーここ日本じゃないよな、と気を引き締めて出発。
天気はあいにくの霧雨から小雨。
キャンプ場のゲートをくぐり、マクリホーストレイル・セクション4は始まる。
コースに設けられている道標。500m毎に設置されており、万一遭難した場合はこのナンバーを連絡すればそこに救助隊が駆けつけるという仕組み。関東の丹沢でも採用されているシステムですね。
始めはひたすら林道歩き。
日本のエゾハルゼミのような、セミの鳴き声がにぎやか。
霧雨から小雨へ。展望はなし。湿度は100%近い。ファイントラックのアンダーウェアのおかげで不快さは無いが、じっとり汗ばむ天気。
道は三叉路や脇道が多いが、要所要所にトレイルの看板が立っている。
山道に入る。
両脇は亜熱帯らしい密集した植生で昼なお暗い感じ。ガスのおかげで幻想的な雰囲気。
進むにつれ本格的な山道に。木の根が張り出し、粘土質の道。まるで朝日連峰・古寺鉱泉からの登山道そっくりだ。高湿な天気は夏山の朝日・飯豊を思わせる。日本の夏山にいるかのような感覚。
濃いガスで周囲の風景もわからぬまま、森林限界へ。
道は階段が続く。後述するが、香港人は階段好きなのか?ルートには階段が多い。
本来であればこんな豪快な景色が楽しめるはずだったのですが・・・画像左のピークが大金鐘(536m)
(金子晴彦・森Q三代子著『香港アルプス』より引用)
稜線にたどり着いてもガスガス。
視界は効かないながらも、幸い雨は止んでくれた。
歩いていると、「ホー」とウグイスらしい鳴き声。
ただし日本みたいに「ホー、ホケキョ」ではなく、「ホー、ホクイック」と聞こえる。
ウグイスも広東語か?
稜線では様々な花を楽しめました。
特に注目いただきたいのがツツジ。霧雨に濡れて終わりかけでしたが、山肌のあちこちを朱色に染めていました。香港駐在の日本人登山愛好者のグループでも、なかなかツツジの盛りの機会は巡り会えないとのこと。今回の訪問はラッキーでした。
またまた階段を下りていきます。
マクリホーストレイルは自然歩道ということで、山頂は巻いたコース取りになっているのですが、そこは自分も山屋、やはり山頂は踏んでおきたい。
途中マクリホーストレイルを外れ、大金鐘というピークをめざします。
結構な勾配の道を登り、
誰もいない大金鐘(標高536m)に登頂。
山頂には測量基準の柱が立っています。
温度計で測ると気温は20度、長袖の山シャツでちょうどいいほどです。
反対方向に下山すると、6名ほどのグループが息を切らせて登ってきました。人気のお手頃ピークのようです。
大金鐘から下り、再びマクリホーストレイルに合流。
さらに進み、 昂平(ンゴンピン)と呼ばれる平地に到着。
昂平(ンゴンピン)で出会った道標。ハイカーのマークがいいですね。
ここ昂平から少し進んだところで西貢半島を横断する自然歩道「馬鞍山郊遊徑」と交差します。
この交差点からマクリホーストレイルに別れを告げ、「馬鞍山郊遊徑」をたどって大水井という村に下山。
分岐点は目立つ看板があり、気をつけていれば迷うことはないでしょう。
緑豊かな登山道。
あっという間に下山するのが、あまりにももったいない。
前を進む家族連れは年配のおばあさんもいてペースがゆっくりでしたので、アカシアの木の下でランチ。
サンドイッチとペットボトルのコーヒーでのんびり過ごします。
大水井へのコースは資料では「エスケープルート」と紹介されていますが、お手軽なハイキングコースなんでしょう、地元のハイカーが結構往来していました。
日本国内の山行と同様、帰路はゆっくり自然観察しながら。
標高が低くなると、またまたセミの声がにぎやかになります。
途中で見つけたセミの抜け殻。鉛筆の太さほどの、小さいセミの抜け殻でした。
視界が効かない行程で、ようやく西貢の街、そして海が見えてきます。
ずっとガスの中を歩いてきたためでしょうか、とても新鮮な光景に思えてしばらく眺めていました。
まず絶対に車など入れない登山道なのですが。。。なぜか現れた自転車・バイク・車両通行禁止の標識。
香港は不思議だ。
最後もやっぱり階段、階段、階段・・・
こうして山麓の村、大水井に下山。
車道にペンキの手書き文字に誘導され、西貢路へ。
ここで村人たちと共に小巴に乗り込み、西貢に戻ります。
あいにく視界の効かない山行でしたが、私の香港に対するイメージを覆すに値する山行となりました。
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コメント
面白い旅をなさったようですね。
私も偶然、この間、香港を訪れました。
残念ながら私はあまり個人時間が取れなかったので山歩きは断念、書店とスーパー巡りだけやりましたけど。
大型書店らに書物の分野が傾いていたことと英語の本が割に少なかったことが印象的でした。
さらに驚いたのは、スーパーに全世界の物産が普通に並んでいることでしたね。
JAレッテルの野菜もたっぷり。
韓国の物も結構あるのを見て、再三一歩下がってみると諸国の一つだと思ったりしました。
それと、Ngong PingはもしかしてMau Pingの誤解ではありませんでしょうか。
投稿: jik | 2014.04.29 11:28
re: jik様
<<面白い旅をなさったようですね。
恐縮です。なにぶん勤務先の会社行事を利用しての山行ですので、あらためて自分の休暇で訪れて思い切り歩きたいと感じました。香港の自然はなかなかに魅力的でした。
<<書店とスーパー巡りだけやりましたけど。
大変うらやましいです。こちらも時間の制約があり、書店とスーパーを訪れることができずにいました。貴重な情報ありがとうございます。
以前訪れた時に比べ、大陸本土からの観光客・買い物客の圧倒的なまでの多さに驚かされました。
大陸本土から訪れる人々の需要を思えば、まだまだ経済発展の余地があるように思えました。
<
各種資料や香港公的機関のウェブサイト等確認してみましたが、やはり昂平(ンゴンピン Ngong Ping)のようです。語源が同じなのか不明ですが、同じ地名がランタオ島にあるようです。
またお気づきの点ございましたら、お気軽にコメントお寄せ下さい。
投稿: 聖母峰 | 2014.05.01 00:32
申し訳ございません。
おっしゃる通り、私の間違いでした。
よく見たら発音は同じのようですが、
馬鞍山のは昂平、大嶼山(Lantau)のは昂坪で字が違いました。
両方とも高原であることは似てますが。
投稿: jik | 2014.05.02 12:14