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稲虫送り

山形市 大字 長谷堂 漆房(うるしぼう)。
今もなお、「稲虫送り」行事が行われる。
6月29日、その「稲虫送り」を見学させていただいた。

稲虫送り(虫送り)とは、初夏、松明や太鼓を鳴らし水田の害虫を追い払い、五穀豊穣を願う儀礼。
かつては日本各地でみられた行事だが、農薬が普及し始めた1950年代を境に急速にすたれたものの、最近になって復活している地域もある。
この漆房地区の稲虫送りも昭和55年に地元有志の方々の尽力により、復活した行事である。

(雨の夕暮れにて、手ぶれ画像が多い点はご容赦ください)

当日はあいにくの強雨。
18時20分頃、各家々から子供達が漆房公民館に集まってきた。
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公民館からさらに集落の上手、ぶどう畑の真ん中で準備が行われる。

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ぶどう畑に集まった漆房の住民の方々。
稲虫送りの主役は子供達である。
「この雨でほんとにやるのー」と美しい若奥様たち。
「太鼓のたたき方わかんないよー」
「集まったとこでおしえてやるよ」
親御さんと子供達とのやりとり。

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子供たちは缶で作ったランタンを、大人達はペットボトルを持っている。ペットボトルの中身は灯油。
灯油をランタンの缶に注ぎ、着火準備。

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わらで作った「稲虫」はトラックの荷台から下ろされ、いよいよ稲虫送りの始まり。

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わらで作られた「稲虫」。
若い奥様方いわく、
「こんなに稲虫って小さかったっけ?私たちが大きくなったってこと?」
「最近は作るのも難しいんで、小型になってるのかも・・・」

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「稲虫」は二匹のつがい。尾が2つに分かれている方が雌。

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子供達いわく「カチカチ山だー」と言われながら、代表の子供1名は火付け用のわら束を背負う。

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わら束の背負い方、30代くらいのお父さんの結わえ方が違うらしい。
みかねた地元の老人から、教育的指導が入る。
今も昔も、こうして伝統は継承されていくのだろうか。

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「稲虫送り」行進開始。
昔は男児のみ参加の行事とのことですが、今は稲虫を引く6名は全員小学生の女の子たち。

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「いなむしおーくた、おーくた、おくーたしょー」
というかけ声、太鼓の音と共に、漆房集落の間を通っていきます。

先頭には太鼓を鳴らす男の子と共に、「御祝儀箱」を持った男の子が歩きます。
時折、民家からおばあさんが出てきて御祝儀を箱に入れます。
「ありゃめんごいなあ、あだま雨で濡れでっどれ。傘さしてげは。」

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漆房集落を通り抜け、民家から離れた水田の農道で焚きつけ用わらを盛り、「稲虫」を燃やす準備。

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「稲虫」が盛大に燃やされていきます。
あいにくの雨で濡れた稲虫、地元の方も燃えるかどうか心配されていましたが、中は乾いていたとのことで、燃えるわら束にくべられました。
「稲虫さん焼けてく~」
「稲虫さようならー」
という女の子たちの言葉もあれば、
「はっはっはっ、まるでゴミのようだ」
ムスカ大佐風に語る男の子もいる。

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燃やされていく稲虫。
地元の当番の方が雨に濡れたわらや稲虫を巧みに燃やしていく。
「○○君は火遊び巧いよな~」
と大人のセリフも飛び出す夜。

だいぶ燃えたところで、
「子供会のみなさーん、お菓子配りまーす」
ああ、どこでも同じですね(笑)
子供達にとってはお菓子が重要なようで・・・
「うまい棒入ってる!」
「金平糖だ!」
なにやら夏シーズンらしくオマケに「心霊写真入り」菓子もあり子供達は興奮の渦。

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遠くに見える山形市内の夜景。
市街地から離れ、街灯もまばらな農村・漆房にて、地元の方に守られた伝統が息づいています。

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稲虫送り(虫送り)という儀礼は、日本各地において大きく4種類に分類される。

わらでオスメス二匹の「ムカデ」を作り練り歩いた後に燃やす「ムシ型」は東北地方

杉やアジサイで虫かごを作り川に流す「虫かご型」は福島・千葉

大きな松明を作り練り歩く「松明型」は関東甲信越・中部地方

稲の切り株につまづいて討たれ、稲の害虫に化けたといわれる斉藤実盛の霊を慰めるため武将の人形を燃やしたり奉納する「実盛型」は岐阜・愛知を境とした西日本以西

 石川県松任市(現・白山市)の調査では、1996年現在で日本全国316箇所において虫送り行事が確認されているという。
 また山形県小国町の「貧乏の神送り」のように、他の行事が虫送りの代替として伝えられている地域もある。
 
 今回私が漆房の「稲虫送り」にひかれたのは、山形のいわゆる観光関係の資料には全く掲載されていない、ローカルな行事であることだった。

 静かな農村に伝えられる行事にこそ、メディアに仕立て上げられた作り物の「祭」ではない、本当の郷土の姿があるような気がする。

【参考文献】
季刊地域No.14 現代農業2013年8月増刊 農山漁村文化協会 2013年
やまがた民俗文化伝承誌 菊地和博著 東北出版企画 2009年

【参考サイト】
山形市 本沢コミュニティセンター ウェブサイト

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月山・羽黒側 八合目駐車場までの車道開通【2014年6月27日】

姥沢口に並んでポピュラーな月山・羽黒側。
登山口である「八合目駐車場」に至る車道・月山公園線は、平成26年は6月26日から開通しました。
なお公共交通機関(バス)は7月1日から運行開始です。

鶴岡~月山八合目 バス時刻表 庄内交通

なお例年7月中旬からの週末は、月山参拝者(月山講)の大型バスも多数乗り入れのため、マイカー規制が実施されます。
今年の日程未確認のため、詳細は 羽黒町観光協会 にお問い合わせください。

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月山リフト運休のお知らせ【2014年6月27日追記】

 当初、7月12日まで予定されていた姥沢登山口のリフト運休期間ですが、さらに要修理箇所が見つかったため、7月15日(火)まで運休期間が延期されます。
 7月13日(日)あたりの週末に姥沢からの月山登山を計画されている方はどうぞご留意ください。

先般お知らせしたリフト運休の延期について(7月15日まで運休延期) 月山観光開発株式会社

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韓国隊、未踏峰ガッシャブルムⅤ峰北東壁にトライ

 パキスタン・カラコルムの未踏峰としては最高峰となるガッシャブルムⅤ峰(7147m)。
 今夏、韓国隊がアルパインスタイルで北東壁に挑む予定です。

アン・チヨン隊、パキスタン未踏峰ガッシャブルムⅤ峰にアルパインスタイルで挑戦 MOUNTAIN 2014.6.24

以下引用開始
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▲アン・チヨン隊長率いる遠征隊がアルパインスタイルで挑むガッシャブルムⅤ峰(7147m)北東壁全景

[MOUNTAIN = イ・ヨンジュン記者]
 パキスタンのカラコルムに未踏峰として残るガッシャブルムⅤ峰(7147m)に挑戦するため、アン・チヨンさん(韓国山岳会)を隊長とする遠征隊が、去る13日に出国した。
 アン・チヨン隊長、チェ・ヒョンウ、ソン・ナグジョン、イ・ギグン隊員ら4名から成る遠征隊は、北東壁からアルパインスタイルで登頂を試みる計画である。

 ガッシャブルムⅤ峰は、2010年に故キム・ヒョンイル隊長、イム・イルジン、イ・イルヨン、イ・サンウ、故チャン・ジミョン隊員らが西壁から新ルートを試みたが、複雑なアイスフォール帯を突破するために時間を費やし、6550m地点に到達するにとどまっている。

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▲アルパインスタイルでガッシャブルムⅤ峰に挑戦する隊員たち。左からチェ・ヒョンウ、ソン・ナグジョン、イ・ギグン、アン・チヨン隊長。

 今回計画している北東壁は、西壁とは別のルートで、バルトロ氷河のガッシャブルム1、2峰の第1 キャンプを経由してアクセスすることになる。アプローチは長いが、アイスフォール帯を迂回して直接壁にとりつく戦略だ。
 登山は5300m地点にベースキャンプを建設し、高度差1200mの北東壁を登り7月初めに登頂を試みる予定だ。 今回の遠征はK2 コリアがバックアップする。

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▲故キム・ヒョンイル隊長のチームが2010年に挑戦したものの失敗したガッシャブルムⅤ峰南西壁。今回の遠征は、下部のアイスフォール帯通過が困難な南西面を迂回して、アプローチは長いが北東壁に取り付く計画だ。

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以上引用終わり

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月山・姥沢リフト代替道の状況 【2014年6月22日現在】

先日告知しましたが、2014年6月22日現在、リフト支柱修理のため、月山・姥沢ルートのリフトは7月12日まで運休の予定です。

6月22日、外来植物駆除作業参加のため、リフトの代替となるリフト下の登山道を歩いてみました。

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リフト乗り場左手から、リフトの真下を通る状況で登高していきます。

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はっきり言って前半は急登です。
実はリフト下は花にも恵まれてますので、花でも眺めながら登りましょう。
後半は傾斜も緩くなります。

 今回は西川町役場のSさん(登山初心者ながら体力バリバリの20代)、一般参加のTさん(登山教室の補助をする程のベテラン)、月山朝日ガイド協会事務局の横山さんに私というメンバーで、リフト下駅から上駅まで45分を要しました。(途中、リフト中間地点で小休止含む)
 私、急登弱いの~という方は1時間みておけばいいかと思います。

 なお重ねて書きますが、リフト東側の登山道は、傾斜のきつい雪渓を横切る箇所が幾箇所もあること、ガスで視界が効かない時はコースロープにたどり着くまで道迷いになる可能性がありますため、今現在おすすめできません。 

さて話題はとんで、梅雨時、山開き前の月山は花が百花繚乱でしたね。
実際の様子は、ぜひ御自分でいい汗かいてご覧ください。

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ハクサンイチゲ祭りな頂上台地

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山頂のクロユリは本日はまだ蕾み。
来週の山開きにおいでになる方をお待ちしております。【2014年6月22日撮影】

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外来植物駆除作業

6月22日、月山の外来植物駆除作業活動に参加。
環境省東北地方環境事務所、月山ビジターセンター運営協議会他の主催による活動。
活動の詳細はこちらのファイルを参照ください。
「gassan.pdf」をダウンロード

 月山朝日ガイド協会事務局の横山さん、西川町観光課のSさん、一般参加のTさん、そして私の4名は姥沢から入山、午前11時に月山山頂小屋にて、羽黒側から登ってきた本隊と合流。

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月山山頂小屋でごちそうになった月山筍汁。
小屋で昼食をとり、小屋前で簡単なレクチャーを受けてから今回の作業場所である鍛冶小屋跡に移動。

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今回の駆除対象は、セイヨウタンポポ。

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こんな器具を貸与してもらい、タンポポを除去します。

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鍛冶小屋跡で除去作業にいそしむ参加者の皆さん。
 この除去作業の日程、月山の山開き前に合わせた訳では無く、タンポポが綿毛になり種が拡散する前、開花しているうちに除去すべく本日の作業になったとか。

 特に言われたのが、タンポポは根を残すとまたまた繁殖するので、なるべく根を残さないように除去をお願いされる。
 しかし、これが難しい。
 タンポポの根は深く地中に入り込み、不器用な私が除去したタンポポは多くが「ポキッ」と抜けてしまいました(笑)

 予定の作業時間1時間はあっという間。

作業前の鍛冶小屋跡の様子↓
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作業後の鍛冶小屋跡の様子↓
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 なお環境省の配布資料にも注意書きがありますが、今回の作業は月山山頂周辺 → 国立公園の特別保護地域内での植物採取許可・土地所有者の了解を得て行われる作業です。
 というわけで、また月山に登ったときに勝手に除去(採取)という作業は認められていません。
 日帰りによる除去作業は9月21日にも予定されているそうですので、有志の方はぜひそちらにご参加ください。

 不思議なことに、月山でセイヨウタンポポが著しく繁茂しているのは鍛冶小屋跡の敷地。

 山形県自然博物園の元園長で、今回ご一緒した月山朝日ガイド協会事務局の横山さんいわく、
「タンポポが月山の環境下で、あそこまで繁殖するのはそれなりのドラマがあると思うんだがなあ」
と、ちょっと複雑な心境を伺わせていました。

 縁あって月山をフィールドに選んだガイドとして、環境保全に協力できる機会があればまた参加してみたいと思います。

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飲 ま せ ろ 

なにやら海の向こうでは、アウトドア関連メーカーとビール会社のコラボが流行ってるようです。

The Blissful Matrimony of Beer and Gear by Outside 2014.6.19

Patabeer
パタゴニアがっ!

Keenbeer
KEENがっ!

Woolrich_beer
ウールリッチがっ!

 アメリカは世界第2位のビール消費国(第一位は中国)なんですが、意外なことにビール市場は約180億ドル程度。ちなみに日本の主要ビール5社の平成25年売り上げ総額は2兆6千億円。
 ただしアメリカでは、大手ビールメーカーのシェアが8割を占め、残り2割に約1400社の小規模醸造会社がひしめく産業構造になっています。

 前述のパタゴニアと組んだ New Belgium Brewing も、品質にこだわる小規模ビールメーカーを代表する企業。
 そういった小回りのきく企業だからこそ、アウトドアメーカーとのコラボが可能なんでしょうね。

 過去に当ブログでも取り上げてますが、ヒマラヤ登山隊の資金稼ぎに日本ではよくオリジナルTシャツなんかが作られますが、フランスなんかですと登山隊オリジナルラベルのワインとかが話題になります。
 みんなアルコール好きだなあ。

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月山リフト運休のお知らせ【2014年6月現在】

夏山シーズンを控え、月山登山を計画されている方に注意いただきたい情報です。

姥沢登山口から利用できる月山リフトが、今シーズン6月20日から7月12日まで運休となります。

月山リフト運休のお知らせ 月山観光開発株式会社

毎年、冬季のスキー用リフトからトレッキング用リフト掛け替えのため2~3日運休するのですが、今シーズンはリフト施設に要修理箇所が見つかり、7月12日まで運休予定とのことです。

なお地形図ではリフトの東側に登山道がありますが、山開き前後の時期は傾斜のきつい雪渓をトラバースする危険箇所があるため、特に登山初心者の方にはおすすめできません。

月山観光開発株式会社のアナウンスにあるとおり、ガイド関係者にもリフト下のスペースを登高するよう案内がきております。詳細は現地の案内に従って入山ください。
またリフト移動の分、徒歩で登高することになりますので、時間に余裕を持って入山してください。

【2014年6月27日追記】
 姥沢のリフトにさらに要修理箇所が見つかったため、7月15日まで運休期間が延長されました。
 月山登山を計画されている方はどうぞご注意ください。

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初夏のお仕事日記

6月×日
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カミさん実家から頂き物のワラビ、ピリ辛仕立てでいただきます。

6月×日
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自宅の庭先に植えたイチゴ。
味も大きさも市販品にはかないませんが、自然の実りです。

6月×日
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ここのところの猛暑でお疲れ気味。
娘の手作り野菜炒めで元気出そう。

6月×日
本日から土方仕事で宮城県大崎市に滞在。
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愛読紙は「大崎タイムス」、デザートはトンビのイラストにひかれて「とびの子」。カステラ生地で餡をはさんだ菓子です。

6月×日
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このカステラ生地で餡を薄くはさんだ菓子、ここ大崎(古川)の名産菓子らしい。
古川銘菓「ちゃせこ」。パッケージはやなせたかし氏のイラスト。
ちゃせこ、とは小正月の夜に子供達が「「アキの方からチャセゴに来した」と唱えて近所をまわり、お菓子をもらうというハロウィンに似た行事に由来する。この行事、遠刈田でもあるらしいので宮城県全域なのだろうか。
奇をてらった和洋菓子とは異なりカステラ生地なので食べやすいです。

6月×日
 宮城出張を終え帰宅。
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夕食はオカヒジキで元気出す。

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【訃報】ミシェル・ダルベレイ(Michel Darbellay)氏 逝去

 アイガー北壁の単独初登を果たした、スイスのミシェル・ダルベレイ(ミッヘル・ダルベライ Michel Darbellay)氏が6月11日、スイスの自宅で亡くなりました。79歳でした。

L'alpiniste valaisan Michel Darbellay n'est plus by Le nouvelliste 2014.6.13

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アイガー北壁単独登攀を果たした1963年当時のミシェル・ダルベレイ氏

 氏の登攀歴で輝くのは、なんといっても1963年に成されたアイガー北壁の単独初登でしょう。
 この単独登攀は、あのワルテル・ボナッティ氏が三分の二まで登りながら悪天で敗退した翌日、ダルベレイ氏によって達成されました。
 それまでも強力なクライマーが幾人も命を落としたアイガー北壁。
 家族に心配をかけないために、アイガー北壁に出かける際は「アプリコット(あんず)が実ってるか見てくる」と母親に言って家を出た、というエピソードが語られています。

M2013
2013年、79歳のミシェル・ダルベレイ氏

 海外のメディアではアイガー北壁ソロの経歴ばかりがとりあげられますが、氏は単独登攀だけにこだわった訳ではありません。
 1967~68年の冬季シーズン、仲間2名と共にピッツ・バディレ北東壁カシンルート冬季初登をめざし入山。
 ベースキャンプ、中間キャンプ、固定ロープを設けた「包囲法」で、別に入山したイタリア隊と最終的には合同でカシンルートの冬季登攀に成功しています。
 この包囲法(極地法)を用いたクライミングについて氏は、

 『今日の冬季登山の特徴は、考え得る最大の難関を組織の力で追求するところにある。だから、最大の安全を保証する新技術を使用することは絶対に欠かせない。その新技術の1つがヒマラヤ戦術なのだ。』

 と語っています。(「ビッグ・ウォール・クライミング」ダグ・スコット著 岡本信義訳より引用)
 ガチガチのソロクライマーではなく、チームによる組織力も理解し、目的に応じて柔軟に戦術を選択するクライマーであったことがうかがえます。

 現代クライミング史における偉大な先達のご冥福を祈ります。

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ガスの中で

奥羽山脈の片隅にて。

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力尽きかけ、動きも鈍いエゾハルゼミ。
マイヅルソウの花に囲まれて生涯を終えるのか。

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本日は曇りがち、目指す山はガスの中。

「雨男」「晴れ男」って言葉があるけど、

Gas
最近の私は「ガス男」である。

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きつい急登の彼方に、稜線らしき灌木の切れ間が見えるとワクワクするのはなんでだろう。

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稜線はゴゼンタチバナの花盛り。
シンプルな形状のゴゼンタチバナが集まると、女の子向け雑貨屋で見かけるようなランチョンマットか何かのデザインに見える。

 視界の効かない山頂でコーヒーを飲み、すぐに下山。
 急登の樹林帯で、途中追い抜いた中高年パーティーとすれ違う。
 道を譲って脇によけていると、「ツアーではお世話になりました」と男性の方から声をかけられる。
 以前、私がガイドしたツアーでご一緒した方でした。

 私はガイド仲間の中でも 「目立たない」 「人気が無い」 「存在感が無い」 ガイドなんですが、私を覚えてくださっている事に恐縮。
 雰囲気からして社会人山岳会のグループのようでしたが、こうして登山を続けてくださるのは、とても嬉しい。

 ツアー登山、とひとくくりにしてマスツーリズムを非難する論調は多い。
 「ツアー登山は山を始めようとする人たちの受け皿になりうる」が持論の私だが、じゃあ山岳界におけるツアー登山の便益をデータで出せ、と言われても私はその数字を持たない。
 
 しかし旅行社のツアーという形式であれガイドしたクライアントの方が、今もこうして山に登っておられる事は、私にとって嬉しいことである。

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スペインのポウ兄弟、悪天でバギラティ峰敗退

世界のビッグウォールや高難度のクライミングでも活躍しているスペインのエネコ・ポウ、イケール・ポウ兄弟。

今春、インドのバギラティ峰西壁、84年にカタロニア隊が開拓した「Impossible Star」の再登もしくは新ルート開拓にトライという情報が流れたまま、その後消息が伝わっていませんでした。

スペインのメディアが、ようやく兄弟の下山を報じました。

Los Hermanos Pou no pudieron subir el Bhagirati III by cadenaser.com2014.6.11

Los hermanos Pou han logrado abrir 600 metros de vía en el Baghirati II by Desnivel 2014.6.11

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右のピークがバギラティ3峰 左よりLa Fée Clochetteルート上部(1)、The Seed of Madnessルート上部(2)、右端のラインが今シーズンにポウ兄弟が目指したImpossible Starルート(3) 画像はThe American Alpine Journalより

兄弟は4月に入山しましたが、悪天続きで壁の状態が悪く、当初目的のバギラティ3峰を断念、2峰に転進したものの、600m程登ったところで下降した模様です。
登山期間中のほとんどを悪天に阻まれ、彼らの経験の中でも過酷だったとのこと。ただし登山そのものには「contentos」(満足)とコメントしています。
遠征の様子は英語字幕付の動画で公開されています。
全編はラテン系の明るいノリで、アプローチ途上のインドの様子、そして降雪に悩まされた登山の様子が記録されています。

POU BROTHERS in Indian Summer Festival from Jordi Canyigueral on Vimeo.

関連リンク
ポウ兄弟のバギラッティ遠征 by 雪山大好きっ娘+ 2014.6.25

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Thalay Sagar: Prayers in the Wind

 昨年、インドの難峰テレイ・サガール(Thalay Sagar)北壁に新ルート開拓を目的にトライ、残念ながら悪天候で敗退したカナダ隊の動画が公開されています。クライマーはJason Kruk、Paul McSorley、Joshua Lavigneの3名。
 動画のタイトルは『Thalay Sagar: Prayers in the Wind』 (テレイ・サガール:風の中の祈り)。
 山麓のキャラバンから北壁登攀の様子まで、重厚な読経をBGMに描かれます。

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北朝鮮の人工壁クライミング

 北朝鮮の「労働新聞」が、北朝鮮国内の人工壁の様子を公開しました。

 朝鮮紅領巾玩攀岩打電玩歡慶少先隊節(高清組圖) by 国際在線2014.6.6

 ま、早い話が第二次大戦中に日本に対抗したとされる「抗日児童団」の「革命的精神」を受け継ぎ赤スカーフ巻いたおぼっちゃんエリート小学生集団をとりあげた新聞記事なのですが、北朝鮮の人工壁の様子はこちら↓

Northkorea
前後逆にハーネス(パッド無し)を着用、しかも意味不明なエイト環を介してロープに繋いでいます。
どっかから借りてきたような土方メット。
ホールドは色は様々ですが、形状はすべて同じ。

画像から類推するに、見よう見まねで設置・運営していることが想像されます。
その気になれば中国、ロシアから指導者を招くことが可能ではないかと思うのですが。

 今年、韓国の大韓山岳連盟が本腰を入れて北朝鮮との合同隊でエベレストを目指すため交渉開始という情報をつかんだのですが、私自身はおそらく立ち消えになるだろうと予想、あまり気にもとめませんでした。
 北朝鮮の登山・クライミングは、韓国のそれとはレベルにおいて天と地の差があるというのが現実でしょう。

 なお金剛山に代表される北朝鮮の岩場そのものは80年代・ソ連崩壊前の時代、チェコ等東側諸国のクライマーが遠征した記録がありますが、彼らの技術すらも伝わっていない証と考えられます。

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『性と柔(やわら) 女子柔道史から問う』

Ju 溝口紀子著『性と柔(やわら) 女子柔道史から問う』を読む。19世紀までさかのぼり、「柔道史」から柔道界における「性意識」を紐解く本。
 日本の女性登山史を理解する一助とするため、別ジャンルながらこの本を選び、読んだ。

 『性と柔』というややセンセーショナルなタイトルながら、第一部「正史と秘史」は「柔道史」と「技術論」がひたすら続く。
 第二部「女性と柔道」がこの本の真骨頂といえよう。

 この本で明らかにされるのは日本柔道界における「勝利」「金メダル」至上主義であり、「底辺」におかれた女子柔道の過去と現実である。
 また最近話題となった全柔連役員によるセクハラ事件・コーチによる暴力事件にも触れられている。突っ込みが足りないという書評もあるようだが、それはむしろ酷というものだろう。関係者がここまで不祥事を分析した事は評価されるべきである。

 柔道史における女性達の苦労、現在までの立場を勝ち取るまでの道程が丹念に調べられ記録されている。
 第二部第4章ではずばり「エロチシズムと大衆文化」というタイトルで、女子柔道への偏見をエロスという視点から、歴史的資料も用いて検証している。
 柔道という世界的スポーツにおいて、このような本が21世紀の今ようやく出されたことは注目に値する。
 スポーツにおける「性差」という問題を考える上で、先人(女子柔道家)たちの苦労の道程が記録された貴重な研究資料である。

 しかし、あえて言わせてもらうならば、柔道を修練する女性たちの苦労の陰に、それを理解し協力した男性柔道家の尽力も忘れてはならないだろう。

 遙か大昔、池袋駅西口にある極真会館本部道場というところで空手を教わっていた頃。
 その日、たまたま黒帯の女子部の先輩が一人稽古に参加していた。
 いつも通り長い準備体操と基礎鍛錬を終え、さあ約束組み手が始まったときのこと。

 若い女性の先輩でしたが、正拳突きの約束組み手、いつものように男の道場生だったら遠慮無く胸板に正拳突きするんですが、相手が女性だと

「え?胸・・・・・」

と、私の場合は躊躇したわけですね。
蛇足ですが、女性の拳は男性に比べ小さいので、男性の正拳突きよりもメチャ痛い。 

 もちろん女子柔道に理解を示さなかった人々を擁護するつもりはさらさら無いのですが、女子柔道の黎明期、男性の中で女性が乱取りや寝技を練習するというのは、なんだかんだいっても男性側にも戸惑いがあったのは事実のはず。
 その戸惑いや偏見を超えて、女子柔道をスポーツ種目として確立していく上で協力していった男性たちの存在も忘れられてはならないと思う。

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ブナの森へ

山形県朝日少年自然の家『ブナの森探検隊』にサポーターとして参加。
一泊二日の日程ながら、都合により二日目のみ参加、ブナ林を子供達と歩く。

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あいにくの雨で野外キャンプの予定は変更、参加者の皆さんは体育館内にて幕営したとのこと。
自然の家から山形県自然博物園に移動。
本日は運良く、私のブナ林ガイド時代の師匠、工藤さんの引率。

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ブナの若芽、「ブナもやし」がたくさん。
発芽したばかりの芽を子供達と口にしてみる。
キャベツの芯のような味。

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アカゲラの羽かな?

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園内はまだまだ残雪がいっぱい。

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みんなでタムシバの枝の香りを嗅いでみる。

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ヤマナメクジ、これは小さい方です。

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ホオノキの花の香りを嗅いでみる。
五感を活用して春の月山を子供達に感じてもらいます。

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ブナ林広場にて。
ブナ樹幹のコケ(チャボスズゴケ)の位置から、積雪量を実感してもらいます。

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子供達もおなかを空かせた頃、博物園に帰着。
下りてくると、エゾハルゼミの声が賑やかです。

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6月の月山中腹、盛りを過ぎましたがミネザクラが迎えてくれました。

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上高地へ

6月4日~5日、日本山岳ガイド協会の講習受講のため、上高地に滞在。

前日までいつものように現場作業し、帰宅、それから自宅を車で出発し、一睡もせず上高地到着。
現場作業員と山岳ガイド、2つの時間軸を生きるためには睡眠時間も削る。

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新緑の上高地が迎えてくれた。

今回は「自然解説技術」講習。
花や木の名前を覚えるのではなく、クライアントとの接し方、話し方、コミュニケーションの取り方を、

Tr1
↑『ロッキー4』ぐらいの勢いで徹底的に鍛えられる。
上高地~明神池の遊歩道を通じて、参加者は各自ガイド役を割り当てられ、引率、様々な自然を「解説」しながら歩かされるのだ。
 
 もともと口ベタ・話下手な私。
Tr2
映画『俺たちに明日はない』ラストシーンなみに講師からダメだし喰らいながらガイディング(泣)

 私にとって上高地は、初めて「自分は山が好きだ」ということを自覚した場所だ。
 学生時代の合宿、奥又白の岩場へのアプローチの途上。
 秋の冷え込んだ、寒い朝。
 道沿いの梓川の水面から、湯気のように川霧が立ち上っていたのだ。
 その川霧が朝日を受けている光景。
 「ああ山に来て良かった。俺ってほんとに山が好きなんだ」
 そう思いつつクライミングや岩山の穂高は好きになれなかったけど、あの梓川の光景は数十万年経過した今も明瞭に記憶に残っている。

 自然解説ネタが無いのでそんな思い出話を披露すると、
「ん~、綺麗にまとめたけど、東日本ではそれでいいけど西日本の人にはオチが絶対必要な。」
とバッサリ斬られる。_| ̄|○il|li

 今回の講習の参加者の皆さんは個性的な方々がそろい、大変刺激になりました。
 受講の成果は今シーズンのガイドに生かします。

 2日間の講習を終え、また高速道路経由で山形の自宅へ。
 短い睡眠をとり、翌朝から某被災地にて土方仕事です。

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Speaking words of wisdom,

先週はもろもろの事情につき、


ドラマ『Glee』の劇中歌「LET IT BE」に心救われる日々でございました。

毎日、数多くの方々にアクセスいただき、ありがとうございます。
今週も週末からの更新になります。
猛暑につき、皆様健康にはご注意を。

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あの日見た山の名前を僕達はまだ知らない。

山屋な皆様は既にご承知のとおり、ネパール政府が104座の未解禁峰を開放と発表しました。

100超のヒマラヤ未踏峰を開放 ネパール by CNN

おそらく少し山知ってる方ならひっかかるのが、次の箇所。

『今回、開放が決まった峰々のなかには、エベレストに初登頂したエドモンド・ヒラリー氏とテンジン・ノルゲイ氏から名前を採った標高7681メートルのヒラリー峰と、同7916メートルのテンジン峰も含まれる。』

え?
今さら7900mクラスの未踏峰ってあったっけ?

というわけで、世界各国の登山サイトやヒマラヤ愛好家が「ヒラリー峰」、「テンジン峰」ってどこだ!?と探した結果、ここらしいです↓

従来よくみかけるネパール側からのチョーオユー峰の写真ですが、
Newpeak1
テンジン峰(7916m)、赤い円のあたり、チョーオユーとギャチュンカンの間のピークとされています。

従来よくみかけるローツェ南壁の写真ですが、
Newpeak2
ヒラリー峰(7681m)、赤い円のあたりのピークとされています。

各国登山サイトが参照しているのはこちらの方のサイト↓
Where on earth are Tenzing Peak and Hillary Peak anyway?  by www.markhorrell.com

 どちらのピークも「このあたり」とか「可能性がある」とかいう表現になっていますが、ネパールのあのアバウトな地図・山名事情を考えればやむを得ないでしょう(笑)

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進化する「足」

 今はかなり安価なモデルも発売されていますが、「3Dプリンタ」は製造業において革新的な役割を果たしているようです。
 それは義足のクライマーにとっても大きな役割を果たしていました。

Medical: If the Climbing Shoe Doesn’t Fit, Design a New Foot by EOS

 Foot1

 アメリカ・カリフォルニア州のクライマー、C・J・ハワードは骨肉腫で片脚を切断した後、チタン合金の義足でクライミングを楽しむようになりました。(画像はレイク・タホにてクライミング中のハワード)

Foot3
 このチタン合金製の義足はクライミング用にカスタマイズされたもので、ハワードの意見を取り入れてバナナ状のカーブ型になっています。
 このチタン合金成形には、パソコンのCADソフトのデジタルデータを入力すると、そのままチタンの粉末をレーザー光線で焼結・溶着する加工機械が用いられています。
 デジタルデータからそのまま加工するところは3Dプリンタと同じ原理ですね。
 この制作法ですとボルト・ナットを用いることなく、また短時間で試作品が完成する利点があります。

 これが2012年の話題。

 さて今度は、新たなタイプの「クライミング用」義足が開発されました。

 A Mountain Goat-Inspired Prosthetic Leg for Rock Climbing by slate.com2014.5.30

 Foot4
KLIPPA

 何かに似ていると感じた方は鋭いです。
 岩壁を登るマウンテンシープとか山羊などの画像をご記憶の方もいるかと思いますが、ずばりカモシカ(原文ではmountain goat)のひづめをモチーフに設計された義足。

Foot5
 このKLIPPAはブルックリンのデザイナー、Kai Linによるデザインで、まだ試作段階とのこと。

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