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『性と柔(やわら) 女子柔道史から問う』

Ju 溝口紀子著『性と柔(やわら) 女子柔道史から問う』を読む。19世紀までさかのぼり、「柔道史」から柔道界における「性意識」を紐解く本。
 日本の女性登山史を理解する一助とするため、別ジャンルながらこの本を選び、読んだ。

 『性と柔』というややセンセーショナルなタイトルながら、第一部「正史と秘史」は「柔道史」と「技術論」がひたすら続く。
 第二部「女性と柔道」がこの本の真骨頂といえよう。

 この本で明らかにされるのは日本柔道界における「勝利」「金メダル」至上主義であり、「底辺」におかれた女子柔道の過去と現実である。
 また最近話題となった全柔連役員によるセクハラ事件・コーチによる暴力事件にも触れられている。突っ込みが足りないという書評もあるようだが、それはむしろ酷というものだろう。関係者がここまで不祥事を分析した事は評価されるべきである。

 柔道史における女性達の苦労、現在までの立場を勝ち取るまでの道程が丹念に調べられ記録されている。
 第二部第4章ではずばり「エロチシズムと大衆文化」というタイトルで、女子柔道への偏見をエロスという視点から、歴史的資料も用いて検証している。
 柔道という世界的スポーツにおいて、このような本が21世紀の今ようやく出されたことは注目に値する。
 スポーツにおける「性差」という問題を考える上で、先人(女子柔道家)たちの苦労の道程が記録された貴重な研究資料である。

 しかし、あえて言わせてもらうならば、柔道を修練する女性たちの苦労の陰に、それを理解し協力した男性柔道家の尽力も忘れてはならないだろう。

 遙か大昔、池袋駅西口にある極真会館本部道場というところで空手を教わっていた頃。
 その日、たまたま黒帯の女子部の先輩が一人稽古に参加していた。
 いつも通り長い準備体操と基礎鍛錬を終え、さあ約束組み手が始まったときのこと。

 若い女性の先輩でしたが、正拳突きの約束組み手、いつものように男の道場生だったら遠慮無く胸板に正拳突きするんですが、相手が女性だと

「え?胸・・・・・」

と、私の場合は躊躇したわけですね。
蛇足ですが、女性の拳は男性に比べ小さいので、男性の正拳突きよりもメチャ痛い。 

 もちろん女子柔道に理解を示さなかった人々を擁護するつもりはさらさら無いのですが、女子柔道の黎明期、男性の中で女性が乱取りや寝技を練習するというのは、なんだかんだいっても男性側にも戸惑いがあったのは事実のはず。
 その戸惑いや偏見を超えて、女子柔道をスポーツ種目として確立していく上で協力していった男性たちの存在も忘れられてはならないと思う。

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