ガスの中で
奥羽山脈の片隅にて。
力尽きかけ、動きも鈍いエゾハルゼミ。
マイヅルソウの花に囲まれて生涯を終えるのか。
「雨男」「晴れ男」って言葉があるけど、
きつい急登の彼方に、稜線らしき灌木の切れ間が見えるとワクワクするのはなんでだろう。
稜線はゴゼンタチバナの花盛り。
シンプルな形状のゴゼンタチバナが集まると、女の子向け雑貨屋で見かけるようなランチョンマットか何かのデザインに見える。
視界の効かない山頂でコーヒーを飲み、すぐに下山。
急登の樹林帯で、途中追い抜いた中高年パーティーとすれ違う。
道を譲って脇によけていると、「ツアーではお世話になりました」と男性の方から声をかけられる。
以前、私がガイドしたツアーでご一緒した方でした。
私はガイド仲間の中でも 「目立たない」 「人気が無い」 「存在感が無い」 ガイドなんですが、私を覚えてくださっている事に恐縮。
雰囲気からして社会人山岳会のグループのようでしたが、こうして登山を続けてくださるのは、とても嬉しい。
ツアー登山、とひとくくりにしてマスツーリズムを非難する論調は多い。
「ツアー登山は山を始めようとする人たちの受け皿になりうる」が持論の私だが、じゃあ山岳界におけるツアー登山の便益をデータで出せ、と言われても私はその数字を持たない。
しかし旅行社のツアーという形式であれガイドしたクライアントの方が、今もこうして山に登っておられる事は、私にとって嬉しいことである。
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