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雷 鳴

7月31日。
山形県朝日少年自然の家チャレンジキャンプ2014『ビバキャンプ!!40(フォーティ)サマー』に登山講師兼サポーター(ボランティアスタッフ)として参加。
前夜にキャンプ地入り、職員や他のサポーターから子供達の様子を伺う。

翌朝。
起床時間より1時間早く起床、キャンプ地を抜け出し、空模様の観察へ。
下界は晴れている様子だが、月山、姥ヶ岳は灰色の雲に覆われている。
1週間前から集めた気象データから今日の天候をイメージする。

今年、ザックにスイカを入れ頂上で子供達に食べてもらおうと思っていた。
以前はよくやっていたのだが、登山の引率を依頼されるようになってからは子供達の安全管理を優先させるため、余計なパフォーマンスであるスイカは封印していたのだ。
昨年の月山の経験から、子供達に頂上でちょっとした食べる楽しみも経験してほしい。
そんな想いがあったのだが、起床してすぐ眺めた月山の空模様から頭を切り換える。スイカはキャンプ地の沢にデポし、安全管理に徹しよう、と自分に喝を入れる。

今年は例年の入山式とは異なり、「大滝さんへの子供代表挨拶」、「出発前の気合い入れ」など、職員の皆さんや子供達の意気込みも並々ならぬものがった。

しかし、である。

姥沢のリフト上駅でリフトを降りる。
そこは視界の効かないガスの中。
子供達のトイレ待ちをしている間に、ポツリポツリと雨が降り始めた。
ここで参加した子供2名が雨具を忘れてきていることが判明。

そして、
Sunde
平成26年7月31日午前10時 山形県内の落雷の様子

一発目の雷鳴が聞こえた。
皆でリフト上駅の売店に一時避難する。
ここで今日の行程の協議。

まず月山頂上は無理。
職員の方から牛首ルート周回を尋ねられるが、雷の危険性がある限り、それはできないと答える。
では目の前の姥ヶ岳はどうか。
職員の方々は、やはりサマーキャンプの一環としての登山に強いこだわりをお持ちのようだった。
天候の様子をみて、目前の姥ヶ岳をせめて登りたい、というのが職員の皆さんの強い希望。

たまたま、昨年10月に月山朝日ガイド協会の養成講座でご一緒したAさんと再開。姥ヶ岳から下山してきたという。上は悪天候とのこと。
私自身は、台風から吹き込む湿った空気、東北上空にある寒気が悪さしている以上、高所である月山が劇的に天候回復することはないだろう、と読む。

リフト上駅売店では職員の皆さんも決めかねている様子。
所長から話を伺い、雷が収まった様子の時に姥ヶ岳を目指すことにする。

視界の効かないガスの中、子供達を引率して姥ヶ岳に向かう。
途中、再び下方から雷鳴。
リスク意識の高い、朝日少年自然の家前職員だった彦さんから「雷聞こえます」と無線が入る。
「ベンチのところまで行きます」と答える。
「了解です」彦さんの声の様子から、私の考えは読み取ってくれたようだった。

姥ヶ岳の山腹、リフト上駅から15分ほど登ったところにあるベンチ休憩所に皆を集める。
職員の方ではなく、私は所長に直接言う。
それはボランティアスタッフとしては越権行為だとはわかっていたが、ガイドとして引率する以上、私は言わなければならない。

「所長、今日はここまでです。」

おそらく今日の天候では、月山山中では天候不順でも、下山すれば蒸し暑い晴天になっていることだろう。
それは、人によって受け取り方は様々だろう。
しかし、10年以上関わってきた朝日少年自然の家と縁が切れてもいい。
今すべきは子供達の安全優先だ、と判断する。

職員の方におまかせするべきところだったが、私から直接子供達に対して、今日は雷が鳴って危険な状態であること、ここから引き返すこと、を話す。

下山。

ガイドとして今日のコンディションでは結論は当然1つである。
そこに迷いはないのだが、月山登山に準備を重ね期待してきた職員の皆さんの心境も察するにあまりある。
でもやはり私はガイドである。
子供達の安全を守らなければならない。

こうして2014年の朝日少年自然の家 月山登山は、姥ヶ岳中腹で終わった。

Imgp1599
下山後、姥沢駐車場から月山を振り返る。
来年は太陽の下で、子供達にその姿を見せてくれ。

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コメント

 雷は避けようがなく、良い判断だったと思います。
 数年前、丹沢の大山奥社下の尾根で落雷があり、尾根に建つあずまやに避難していた数名が死傷しました。周辺の大きな杉にも落雷、雨降神社なので雷はつきものですが、建物が避難に適切とは限らないようです。その後、あずまやには避雷針がつけられました。
 危険ならば行かないのが一番の安全策でしょうか。お疲れ様でした。

投稿: かもめ | 2014.08.02 10:19

re:かもめ様

<<雷は避けようがなく、良い判断だったと思います。
かもめ様にそう言っていただけると心強い。

 私は正直、毎年の子供達の引率登山、子供達の安全を確保するという重責に「怖い」と思うことがあります。登山を終えたときの子供達の喜びが私の喜びでもあるのですが。
 あらためて山に対して謙虚でなければならないと思った次第です。

投稿: 聖母峰 | 2014.08.04 06:04

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